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グレーゾーン 「切れ目のない」米軍との一体化へ

 安倍首相は「グレーゾーンから集団的自衛権に関わるものまで、幅広い法整備を一括して行なっていきたい」とし、7・1閣議決定関連法案を来年の通常国会に一括提出する意向を示すとともに、集中審議ではグレーゾーン対処を急ぐ必要性を強調した。これには、まず「武装集団の離島占拠」を例に挙げれば国民の抵抗感は少なく、多くの野党を議論の土俵に乗せることもできるとの思惑があろう。政府は、自衛隊の治安出動や海上警備行動発令手続きを迅速化する、すなわち運用で対応可能としている。

 だが閣議決定が挙げたグレーゾーン事例はこれだけではない。「わが国の防衛に資する活動に現に従事する米軍部隊に対して」「武力攻撃に至らない侵害が発生した場合」に、自衛隊が米軍を守るために武器を使用できるよう法整備を行なうと明記してある。集団的自衛権行使の要件を満たす前から武器を使うというのだ。こっちが本命だろう。

 また、警察権行使の枠組みならまだ安心というわけでもない。首相が答弁で触れた事例だが、海上保安庁は01年12月、国籍不明船に対し、威嚇射撃、次いで正当防衛の名目で機関砲攻撃を加え、船を沈め、乗員を殺傷した。それに先立つ99年3月には、自衛隊に海上警備行動が発令され、実弾射撃と爆弾投下が行なわれた。いずれも「不審船」事件として知られるものだが、02年9月の日朝平壌宣言合意以降、同様の武器使用事案は起きていない。ここで注意すべきは、海上警備行動発令要件には、直接の脅威や海上交通の著しい阻害、国民の生命・財産への危険、警察力での対応困難が並んでいるはずだが、これらが満たされていたのか、検証されていないことだ。来年から海自幹部が多国籍部隊司令官を担うソマリア沖の海賊対処も、国際的な警察活動協力と位置付けられており、形式上、集団的自衛権とは関係ない。しかし、公海上で事実上の武力行使に踏み込むことがかくも軽く扱われているのには、危惧を抱かざるを得ない。

 さらに、来通常国会ということは、日米ガイドライン(防衛協力指針)改定が先行するということだ。ガイドラインで中身を固めてから法整備を行なうのには、周辺事態法の前例がある。80年以来参加しているリムパック(環太平洋合同演習)のあり方は実態面で集団的自衛権行使を先取りしており、関連法制定はいわば総仕上げとなる。情勢は一休みを許してはくれない。

(社会新報2014年8月6日号・主張)


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