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第3の矢 成長ならぬ格差拡大のための戦略

 安倍政権は6月24日、改訂成長戦略(日本再興戦略)などを閣議決定した。その内容を一言で言えば、外国人投資家の期待感をあおり、株価をつり上げるためのメニューを特に脈絡なく並べたものであり、企業の「稼ぐ力(収益力)の強化」をうたい、日本は成長できる、成長こそが種々の問題を解決するという命題を掲げ続けることを、自己目的化していると言うべきものだ。

 だから安倍首相が、やれ岩盤規制を打ち破るドリルの刃、などとブチ上げているのは、気の利いたプレゼンをしているつもりで舞い上がっているだけなのであり、経済政策としての意味らしい意味を読み取ることができないのは当然のことだ。問題とすべきは、そこに透徹した時代認識のかけらも見いだせないことだ。

 金融資本主義にとって収益を上げるとは、バブルの創出と同義だ。第1、第2の矢、すなわち異次元金融緩和と財政出動は、資産バブルを準備しつつ、財政赤字と過剰実物資本を積み上げていく。それは今までもそうだったように、いずれ確実に賃金と雇用の犠牲の上に清算されるほかない。第3の矢、成長戦略には、その清算をしやすくするための条件整備という側面がある。賃金と社会保険料負担の抑制、柔軟な解雇、そして大衆増税がその柱だ。

 注意すべきは、まさにグローバル化時代の、成長著しい「新興国」を含めた問題の同時性だ。投資先を求めて世界を徘徊する過剰マネーは旧途上国の資本不足問題を一定解消したものの、今度は食糧と資源の価格高騰をもたらし、新興国内の階層分化を引き起こしている。もちろん先進国でも、戦後の内包的成長はとっくに過去のものとなり、ご存じのとおり二極化が進んでいる。と言うより、二極化こそが儲けの源泉になっているという状況であり、先進国でも新興国でも、他国の市場を当てにした輸出による成長を期待しずらくなった。結局、後が怖いのを承知でバブルにすがるという悪循環が止まっていない。

 また国境の壁を越えた格差拡大が、そこかしこで政治の劣化と市民社会の分裂、つまりは民主主義の基盤の危機を招いていることはもはや明白であり、現象面での違いを超えた事態の同質性に着目すべきだろう。

 「企業が世界で一番活動しやすい国」をつくるということの今日的意味は、実に古典的な労働者からの搾取と収奪であり、民主主義のピンチなのであって、これは決して昔話ではない。

(社会新報2014年7月16日号・主張)


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