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再稼働シフト 全体像見えぬ小手先の議論や対策

 先月下旬から福島原発をめぐり、大きな動きが続いている。5月21日、敷地内山側井戸でくみ上げた地下水が海に初放出された。これは何と、鳴り物入りで導入された多核種除去設備ALPSが初めて全3系統で停止するというトラブルの翌日だった。しかし同27日の2回目の放出に際しては、くみ上げ用井戸の1つから、そのALPSでも除去できないトリチウムが基準値を超えて検出され、この井戸からのくみ上げを止めるという事態となっている。そもそも濃度規制は敷かれているものの、放出総量の見込みについて、明確な説明は行なわれていない。

 6月2日には「凍土壁」設置工事が始まった。凍土壁の効果に疑問を呈していたはずの原子力規制委は、なぜかおとなしくなってしまった。その規制委が以前正しく指摘していたように、そして、地下水放出問題とも絡むことなのだが、汚染水問題の根本は、原子炉を冷やし続けなければならないが、炉建屋内部からの漏水を止めるめどが立たないことにある。にもかかわらず、国費で面倒を見てもらえるのだからとりあえず凍土壁でも造ろうというのは、アベノミクス公共事業に便乗しつつ、何かやっている格好をつくるというものでしかないのではないか。

 川内原発再稼働問題もどんどんおかしな方向に行っている。福井地裁の大飯原発3、4号機差し止め判決が「基準地震動を超える地震が大飯原発に到来しないというのは根拠のない楽観的な見通しにしかすぎない」と断じたことを知ってか知らずか、九電は、九州南部火山地帯で巨大噴火の予兆があれば運転を止め核燃料を運び出すから大丈夫だと言う。だが、観測された予兆が巨大噴火に発展するかどうか、その時点で明確に判断できるのか(破局的噴火が起きてからでは遅いのだが)。まるで、この参戦は「必要最小限度の集団的自衛権行使」の枠内に収まると私が判断したから心配ないと安倍首相が約束するようなものではないか。

 漫画『美味しんぼ』の「鼻血シーン」問題で、首相や環境相、消費者相らが一斉に「放射能に直接起因する健康被害は確認されていない」などと批判のコメントを発したことは、鮮烈な印象を残した。山下俊一福島県立医大副学長が事故直後、「100ミリシーベルトまでは大丈夫」と発言したときは、こんなことにならなかった。これも再稼働シフトだと考えれば、ある意味理解できることだが。

(社会新報2014年6月11日号・主張)


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