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首相会見(下) ハードル低めようとあの手この手

 (承前)前回のおさらいとなるが、安保法制懇報告では、憲法が禁ずるのはわが国が当事国である国際紛争を解決するための武力行使と武力による威嚇だけであり、個別的か集団的かを問わず自衛目的や、国連集団安保の名の下での武力行使に制約はない。だが「自衛」の大義名分のつかない、しかも「わが国が当事国である国際紛争」とは一体何なのか。こう考えると、安保懇報告によればできないことはほとんどない。憲法と法律に制約されない「限定的」とか「総合的判断」は何ら歯止めたり得ない。

 そこでまずグレーゾーン対処だが、政府が与党協議用に示した「15事例」には「弾道ミサイル発射警戒時の米艦防護」が入っている。政府も認めているようにこれには「武力攻撃が何ら発生していない状況下」での対応も含まれており、いわば「集団的自衛権行使予測事態」だ。現行法でも周辺事態あるいは武力攻撃予測事態からの米軍支援が可能となっており、「シームレス対応」の名の下に武器使用を含め米軍の「武力行使との一体化」へのハードルを低めることが一貫して追求されてきたという経過に注意を払わなければならない。グレーゾーンをつくってきたのは政府自身なのだ。

 国連集団安保協力関連とされている事例も問題だらけだ。ここで示唆に富むのは、いまやしゃべる安保懇報告書と化している自民・石破幹事長が、ロシアのウクライナ介入が取り沙汰され始めたころ、自国民保護のための自衛隊派遣は「武力行使にならない」と発言した事実だ。15事例の1つには「領域国の同意に基づく邦人救出」が含まれ、報告書では、その場合の武器使用は「武力行使」に当たらず「領域国の治安活動を補完・代替するものにすぎない」と言い切っている(アフガン多国籍軍も「治安活動を代替」と政府は説明していた)。言うに加えて報告書は、領域国同意がない場合でも「自衛権の行使として許される場合がある」などとして、国際法上の議論があることを自ら暴露している。警戒すべきは、対テロ戦争支援立法の過程で、武力行使を「国家の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」(テロ集団相手は話が別)とする限定的な解釈がすでに定着していることだ。後方支援の「一体化」違憲論からの解放を含め、ここでも武力行使への制約を緩めようとする力学が働いている。政府の狙いを暴く取り組みを強めよう。

(社会新報2014年6月4日号・主張)


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