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首相会見(上) 情緒に訴え戦争参加の現実を隠蔽

 「お父さんやお母さんやおじいさんやおばあさん、子どもたち」「彼らが乗っている米国の船を今、私たちは守ることができない」。戦りつが走ったという言い方も大げさではないだろう。種々の前提条件を捨象し極めて単純化されたケースを押し出し、人々の感情に訴えることを狙った安倍首相自身、情念に突き動かされもはや自己を制御できなくなっているのではないか。

 邦人輸送中の米艦防護。韓国にいる日本人は3万人超、ソウルだけでも約1万人。一体何人が軍艦で運ばれるのか。ファンタジーのベールを取り払えば、そこにあるのは朝鮮半島有事だ。日本が攻撃されていないのに、他国を攻撃する。その先に何が起こるのか。それでも戦争に加わる意味は何なのか。安保法制懇は実に正直にも「同盟国相互の信頼関係の維持・強化のために不可欠」なのだと言う。米国の要請に応えてベトナムに派兵した政権と言えば、韓国の朴政権やフィリピンのマルコス政権が代表格。その戦争参加の帰結と政権の末路について首相は冷静になって考えた方がいい。

 首相会見で違和感を覚えたのは、何の説明もなく飛び出す「芦田修正論は政府として採用しない」とのくだりだ。作文を読んでいるだけだからなのは明らかだが、唐突すぎる。9条2項に「前項の目的を達するため」を挿入した芦田修正の目的は、本人が真意を明かさなかったこともあり、自衛のための必要最小限度の実力は「戦力」に当たらずその保持は合憲との政府憲法解釈に道を開いたもの、あるいは国連軍参加を視野に入れたものなどの説があり、政府見解はなかった。

 安保懇はこれを、憲法が禁じているのは「わが国が当事国である」国際紛争を解決するための武力による威嚇や武力の行使と、そのための戦力の保持だけであり、それ以外は全部合憲なのだと解釈する。その上で首相は、イラク戦争のような事例での戦闘への直接参加はないし、自衛のためなら何でも許されるわけではなく集団的自衛権行使は限定的なのだから、安心してくださいと大見えを切る(安保懇によると「日米同盟の信頼が著しく傷つきその抑止力が大きく損なわれ得る」場合も必要最小限の範囲に入るのであるが)。何のことはない。シナリオどおりのお芝居なのだ。

 首相会見ではPKO「駆けつけ警護」や「グレーゾーン」対処も提起された。これらの問題点の指摘は次回に譲る(この項続く)。

(社会新報2014年5月28日号・主張)


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