HOME広報社会新報・主張・一覧>綱渡り経済 その場しのぎの企業減税は危ない

広報

社会新報・主張

社会新報

綱渡り経済 その場しのぎの企業減税は危ない

 憲法問題同様、安倍政権を政治的に支えている経済政策も、異様な展開を見せている。甘利経財相は、安倍首相の「国際公約」を受け、法人実効税率を来年度から5年かけて20%台まで下げるとアドバルーンを上げた。年末の恒例行事である税制改正を実質前倒しして、6月の「骨太方針」に盛り込もうという構えだ。

 ここでもう一度、この「失われた20年」の教訓とは何だったのか、立ち止まって考えてみるべきときなのではないか。少子高齢化が急速に進む中、成長率が低かったから税収も増えず、財政赤字が拡大した、だから成長政策なのだというアベノミクス信者の分析と方針は果たして妥当なのか。

 まず税制で見ると、バブル崩壊直後と比べ、所得税の累進性緩和と最高税率引き下げ、それと法人減税という(景気ではなく)制度面の影響により、所得税、法人税ともそれぞれ年間約10兆円程度税収が減ったことは事実だ(消費税収の何%分だろうか?)。さらに社会保険料収入は、雇用の非正規化と貧困層増大で保険料を払えない人々が増え、収入増どころの話ではなくなっていた。そして賃金。名目賃金上昇率が消費者物価上昇率を下回る状況が続いてきた。他国の賃金・物価動向との比較で考えても、これがデフレ継続の真の原因であることは何度強調しても足りないくらいだ。

 だが、金融緩和継続に前のめりのいまの黒田日銀の姿勢は、デフレを日銀のせいにできた「良き時代」の終わりを逆に予感させる。合理化を輸出競争力強化のみに直結させ、それでも満足せずに賃金水準そのものも下げることで推進してきた輸出主導景気回復モデルは、貿易赤字額の連続更新とともに過去のものとなった。

 片や大企業は、貯め込んだ巨額の内部留保を銀行に預け、銀行はその預金で国債を買い支えている。補正予算の5・5兆円経済対策は3月末で6割が契約済み、当初予算のうちの公共事業中心の12兆円は6月末までに4割以上使うのが目標なのだという。政府の赤字は消費税で埋めればいいという本音をここまで露骨にのぞかせておいて、安倍政権はもはや何ら恥じるところがない。国債市場が変調(価格低下)に見舞われたら全ての歯車が逆回転を始めることは分かっていても、後戻りできなくなっている。

 「成長神話」に依拠した企業負担軽減と大衆負担増のセット政策は、税と社会保障の制度を文字どおり「一体」的に壊しかねない。

(社会新報2014年5月21日号・主張)


HOME広報社会新報・主張・一覧>綱渡り経済 その場しのぎの企業減税は危ない