HOME広報社会新報・主張・一覧>解釈改憲危機 憲法体制そのものが揺らぎ始めた

広報

社会新報・主張

社会新報

解釈改憲危機 憲法体制そのものが揺らぎ始めた

 安倍政権が、連休後に安保法制懇の報告書を受け取った後、政府の「基本方針」を取りまとめ、与党内調整を経て集団的自衛権行使容認の閣議決定を行なうとの段取りを描く中、政権側から発信される憲法論は劣化の度合いを強めている。

 自民党の岩屋毅安保調査会長は、4月13日のテレビ討論で、憲法解釈変更の理由について、自衛権を明記した自民改憲案の実現を前提に「あらかじめわが国に許される自衛権の範囲を解釈を補充補強することによって明らかにすることが必要」だからだとした。

 新解釈は改憲の先取りであり、仮想憲法の解釈だというのだ。安倍政権においては現憲法はもはや存在しないも同然、いや、そもそも憲法による拘束自体がないのと同じということになりはしないか。安倍政権の政治は憲法に基づく統治ではないと自認してはばからないのだ。独ナチス政権は1933年、全権委任法を制定し違憲立法もできるようにすることで、ワイマール憲法を空文化した。安倍政権のやろうとしていることはこれと本質的に変わるものではない。まさに「ナチスの手口に学べ」だ。

 無原則化はご都合主義を助長する。「限定容認論」の伝導師と化した高村自民副総裁は、砂川判決を持ち出したのは皆が立憲主義を叫ぶからだと言い、最高裁は「統治行為論」を示しているのだから安保に関する判断は政治の管轄だとし、自衛権を認めた部分は傍論だからといって無視してはならぬとしつつ、イラク派兵違憲訴訟名古屋高裁判決の武装米兵輸送の9条違反認定は傍論だから関係ないとする。全部切り抜きと切り貼り、コピペの理屈だ。

 この間保守政権の手によって、立法府の弱体化が系統的に追求されてきた。現政権はこれに加え、執行権(行政権)の暴走を抑えるために、市民社会との接合領域を含め広い意味での行政府の中に組み込まれてきた種々の歯止め装置を「占領」しようとしている。法解釈部門、公共放送、報道機関、中央銀行、教育機関などが当面のターゲットであり、各種中間団体への圧迫も強まってくるだろう。

 「安保」と「市場」の「必要」が、その際の殺し文句だ。最高規範の空洞化と権力装置の相互チェック機能喪失、さらに市民社会総体の無力化は、ひと連なりの問題なのだ。この政権は極めて危険だ。今年の「憲法月間」は、従来とは決定的に異なる局面下にあることを肝に銘じよう。

(社会新報2014年5月7日号・主張)


HOME広報社会新報・主張・一覧>解釈改憲危機 憲法体制そのものが揺らぎ始めた