HOME広報社会新報・主張・一覧>集団的自衛権 憲法上で解禁すれば限定できない

広報

社会新報・主張

社会新報

集団的自衛権 憲法上で解禁すれば限定できない

 自民党は3月25日、集団的自衛権行使容認に関する安倍総裁(首相)直属の協議機関を設置し、党内対策に乗り出した。とはいうものの安倍首相は、国会では閣議決定前は「検討中」としか言えないとしている。首相の私的諮問機関にすぎない「安保法制懇」の報告書が出るまでは正式な与党内議論はできない、閣議決定しなければ国会での議論はできないなどと言いながら、唯一改憲発議権を持つ国会の口を封じ手を縛った形で実質改憲を既成事実化しようとしているのだ。

 今国会前半戦のポイントは明らかに首相答弁だった。首相は「自衛権の行使も憲法9条の制約がかかっている。集団的自衛権もこの自衛権の一部」と述べ、「必要最小限度の自衛権行使」の範囲内なら集団的自衛権行使も容認されるとの考えを示唆した。安保法制懇は、「放置すれば日本の安全に重要な影響を与える場合」に限定するという要件を打ち出す方向だとされる。

 だが待ってもらいたい。「放置すれば…」という考え方は周辺事態の定義として登場し、同様の発想は武力攻撃予測事態対処にも反映している。つまり、有事(自衛権発動)を地理的に拡大し時間的にも前倒しするための方便だ。だが、集団的自衛権行使を違憲とし、当然にも、海外での他国軍の武力行使との一体化は許されないという憲法解釈が、なおも越えられない壁として立ちはだかってきた。

 これに対し首相がやろうとしているのは、集団的自衛権行使そのものの法理的な全面解禁だ。首相は「地理的な概念で『地球の裏側』という考え方はしない」、すなわち理屈上は地理的限定はないことを認めており、「放置すれば…」は実際には限定にならないのだ。

 「公海上でミサイル発射警戒中の米艦が攻撃されても何もしなくていいのか」。何回も聞かされたせりふだ(防大卒業式でも言っている)。「並走中」との説明をやめたのは、近くにいるのは軍事的にあり得ない、近くだったら日本艦攻撃への個別的自衛権発動で対処できるなどの突っ込みを回避すると同時に、返す刀で日米イージス艦がデータリンクされているというミサイル防衛態勢の実態を押し出す狙いがあるのだろう。その上で、首相が最後に繰り出す脅し文句は決まって「日米同盟が毀損(きそん)されてもいいのか」。日本の安全をうんぬんするものの、実は、これしかすがるものがないというお寒い現実があらわになっている。

(社会新報2014年4月2日号・主張)


HOME広報社会新報・主張・一覧>集団的自衛権 憲法上で解禁すれば限定できない