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県民健康調査 被害と補償切り捨てさせぬ監視を

 福島県の「県民健康管理調査」の一環として行なわれている福島原発事故当時18歳以下の子どもの甲状腺検査で、県は2月7日、これまで調査対象となった25・4万人中、75人が甲状腺がんやがんの疑い(良性腫瘍判明の1人を含むものの、「疑い」とは実際は悪性とほぼ同義)と診断されたと発表した。がんと診断されたのは計33人に上る。ひところ盛んに流布された「小児甲状腺がんは100万人に1人」と比べると、実に100倍以上の値となる。

 同調査をめぐっては、実施主体である県および県立医大の幹部や事務方がそのまま評価機関である「検討委員会」に横滑りしているという問題に始まり、本会議の前に「秘密会」が開かれ「進行表」が作られていることが明るみに出、昨年5月には「100_シーベルトまで大丈夫」発言が物議を醸した山下俊一座長ら4人が辞任するという事態となった(一連の経過は秘密会などをスクープした毎日新聞の日野行介記者の著した岩波新書『県民健康管理調査の闇』に詳しい)。

 ほかにも調査手法について、内部被ばくに対するホールボディーカウンターによる測定や尿検査の格下げや棚上げ、検査画像提供を渋るなどの問題が明らかになってきた。だが最大の疑問は、そもそもなぜ内部被ばくに関して基本的に子どもの甲状腺しか検査対象になっていないのかという点だ。この背景には、IAEA(国際原子力機関)などがチェルノブイリ原発事故による低線量被ばくの健康影響として、小児甲状腺がんしか認めていないことがある。

 しかも、これはようやく96年のことであり、WHO(世界保健機関)の認定はさらに10年遅れている。なぜ遅くなったのかと言えば、事故の86年、あるいは症例増で国際的な注目が高まった91年以前には統計学上有意な大量データが存在しないため、被ばくとの因果関係の科学的証明は不可能とされ、これが放射線に起因しないこと、因果関係がないことと同じだと理解されてきたからだ。検討委などが従来言ってきた「事故からまだ5年たっていないから被ばくの影響ではない」との見解は、こうした文脈の下にあるものとして批判的に吟味されるべきだ。

 今後に関わるリアルな問題は、低線量被ばくと病気との因果関係が否定されれば、事故責任者の補償責任はないという結論になること。広島・長崎や水俣病の闘いとの共通点は明らかであり注目と支援が必要だ。

(社会新報2014年3月19日号・主張)


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