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首相靖国参拝 アジアとの将来壊す無意味な愚行

 昨年12月26日の安倍首相の靖国神社参拝が世界中に引き起こした強い憤激や懸念は、首相の歴史観の破綻をも世界に告げ知らせた。

 再確認しよう。靖国問題の本質とは、過去の日本の戦争を「聖戦」とし、日本の兵士の戦死を、この戦争目的遂行のために倒れた「皇軍兵士」は「英霊」になったのだと意味づけ、戦死者を顕彰するという同神社の特異な歴史観そのものにあるのであり、あえて言えばA級戦犯合祀(ごうし)問題は政治的応用問題でしかない。首相の行為はこのことを国際社会に向けてはっきりさせる役割を果たしている。

 首相は以前から、(南軍兵士の墓もある)米アーリントン墓地に参ったからといって奴隷制を認めることにはならないという言い方を好むが、そもそも同墓地は奴隷制を肯定していないので、ピント外れだ。また首相は今回、全世界の戦争犠牲者の霊を祀(まつ)ったとされる「鎮霊社」も参ったと胸を張り、墓穴を掘った。靖国批判を暗黙裏に認めたことを意味する行動にほかならないわけだが、それにしても、加害も被害もない全ての犠牲者に頭を垂れることで、首相はどんな歴史的教訓を得たのだろうか。極め付きは自民党の運動方針案。靖国参拝に関し首相が言い訳で使う「不戦の誓い」も「平和国家の理念」も消してしまった。見事な援護射撃ぶりだ。

 尖閣諸島問題で日中対立が激化している。日本の国有化という「現状変更」に対し、中国は防空識別圏設定という「現状変更」で応え、米国を巻き込んだ。防空圏設定は領空とは関係ないので、中国の領空のように振る舞っているという首相の論難は、これまた的外れだ。しかし、中国公船の領海接近・航行の常態化は、かつて日本の実効支配と領有権を事実上認めていたとの評価が定説である72、78年の「棚上げ合意」の基盤を覆す動きであり、事態は重大だ。日本が曖昧な表現で領土問題の存在を認めた上で、日本の領有権放棄も中国の領有権も認めないという形で「新たな棚上げ合意」を結ぶことが必要との指摘は前からあったのに、安倍政権は以前の合意の存在を否定し、首相は靖国に参拝し、領土領海領空を守ると空語する。この政権は一体何をやりたいのか。全くの外交無策ではないか。

 日本の将来構想はアジアとの関係強化抜きには描けない。立場を超えたこの了解事項を共有できない政権に、日本のかじ取りを委ね続けていいはずはない。

(社会新報2014年1月22日号・主張)


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