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首相憲法答弁 結論ありきで「事例」妄想の奇妙さ

 集団的自衛権行使などに関連する安倍首相のこの間の国会答弁は、首相がいかに私的諮問機関「安保法制懇」に全てを丸投げし、依存しているかを裏書きするような内容となっている。

 米国を攻撃した国に武器を供給しようとしている国の船舶の臨検を「やらなくていいのか」などは、安保法制懇が憲法解釈を変更して対応すべきだとして、従来の「4類型」とは別に示した事例を、そのままなぞったもの。安保法制懇は他にも、国際海峡で(国際法上は武力行使にあたるとされる)機雷除去などを可能とすべきだとしている。

 首相はまた、外国武装勢力の島占拠に対処できる法整備が必要だと述べた。これも、「外部からの組織的、計画的な武力の行使」である武力攻撃の切迫(急迫不正の侵害)という自衛権発動(防衛出動)要件を緩めるよう、安保法制懇が提言しようとしている中身だ。

 国連集団安全保障参加を含め、首相とその周辺が、「海外での武力行使」を可能とする「法的基盤」の整備に躍起になっているのがひしひしと感じられる事態だ。だが、集団的自衛権を行使したい(でも「地球の裏側」にまで行く気は実はない)と言うのなら、なぜ安保条約5条(日本の施政下における日米いずれか一方に対する武力攻撃への共同対処)の改定を提起しないのかという疑問の声も、立場の違いを超えて発せられている。ところがこれに触れると、「米国が日本を守ってくれるので日本は基地を提供する」という「安保の双務性」の建前が崩れ、占領の延長としての基地使用という実質が露呈してしまうことを、「安保ムラ」の住人は恐れていると思われる。初めからある結論に合わせてそれらしい「事例」をひねり出すことの無理は、あちこちで表れている。

 憲法をめぐっては、国民投票法の改正問題も、与党内が投票権年齢と成人・選挙権年齢の整合性問題でもめているものの、看過できない状況だ。いまだに一部報道では「国民投票法の3つの宿題」の1つとして、公務員の運動規制の「緩和」なる表現も散見されるが、これはもともと公選法および国公法・人事院規則、地公法の政治的行為制限規定との調整という問題であり、規制強化以外の意図はあり得ない。地位利用運動禁止について、国民投票法には明記されていなかった罰則を設ける方向では自民内に異論はない。改憲派に有利な状況づくりが優先されていることは明らかだ。


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