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賃上げ促進税制 大衆増税が前提のあり得ない政策

 安倍首相は、(法人税率を上乗せする)復興法人税の廃止の1年前倒しは「成長を賃金上昇につなげることが前提」と大見えを切った。政府は減税分の使途公表を企業に要請するとともに、減税の効果を検証するとしているが、「所得拡大促進税制」は本当に生活向上をもたらすのだろうか。

 政府は、現在の賃上げによる法人税減税の要件である、年間給与支給総額の前年度比5%以上増を、2〜3%以上増に引き下げ、制度の使い勝手を良くするのだという。だが、定昇制度のある大企業なら、ベースアップをしなくても減税の恩恵を受けられるということになろう。他方、中小企業に多い赤字企業はもともと法人税を納めていないので、減税の対象にならない。毎月決まって支給され業績とは大きく連動しない所定内賃金の低下は止まっていないのに、賃金を上げたといって大企業は減税されるという、奇妙な光景が展開されることになりそうだ。

 そもそも、この政策は消費増税に伴うものであり、大きな枠組みで言えば、仮に法人税の減税分が賃上げに回るとしても、法人税収が減った穴を埋めるのは消費増税による増収という構図になる。社会保障費確保だけでなく賃上げも消費増税が前提で、本の本をただせば消費税収という政策が、果たしてまともな税財政政策として成り立ち得るのか。言葉は悪いが「タコの共食い政策」が完成すると言っても過言ではないだろう。

 前の民主党政権時代、なぜ社会保障財源確保が法人税や所得税ではなく消費税なのかと問われると、政府は決まって「世代間の公平」と答えたものだった。しかし、消費増税こそ働き盛りの子育て世代に厳しいものであることが、この間示されたさまざまな試算でも明らかになっている。問題なのは、「公平」の物差しの当て方が大企業と富裕層には減税を、庶民には増税をしたい側に都合の良いものになっていることなのだ。

 国境を越えて活動する大企業はさらなる租税負担軽減と規制緩和による行動の自由を求め、さもなくばもっと税金が安いところに移ると政府を脅し、社会的インフラと制度を使い倒す。これを維持・運用する財源は、税負担を理由に国外に移るわけにはいかない一般の労働者が負担する以外ない。この不平等な構図は国内では「国家戦略特区」として再現され、働く者はひたすら税金を納めつつ使いつぶされる。これでは踏んだり蹴ったりではないか。


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