HOME広報社会新報・主張・一覧>限定正社員 「クビにしやすい正社員」こそ本音

広報

社会新報・主張

社会新報

限定正社員 「クビにしやすい正社員」こそ本音

 政府が検討中の労働規制緩和の考え方には、美辞麗句の裏に危険なものが隠されている。規制改革会議雇用ワーキング・グループの報告書を例に見てみよう。

 金看板である「失業なき円滑な労働移動」について報告書は、成長力強化と同時に「正規雇用への転換」「ワークライフバランス」が促進され、「努力が報われる賃金上昇」も可能と、いいことずくめだ。だが、「生産性の低い部門から高い部門への労働移動」の促進のため「雇用の柔軟性を高める」とは、現実にはどういう事態を意味するか。労働市場にむき出しの市場原理が貫徹するということであり、労使の力の差(非対等性)が一層広がるということだ。実際、ビルド部門の求めるスキルを持つ労働者は比較的少数であり、非熟練の若年層やスクラップ部門から吐き出された中高年層にとって、市場は圧倒的に買い手優位となる。過剰な中間管理職や陳腐化した技術職扱いされた人の「追い出し部屋」は社会問題になっているし、研究機関の調べでは、1000人以上の大企業でこの5年間で退職勧奨した企業、普通解雇や整理解雇をした企業は共に3割を超えている。

 報告書は、職務や勤務地、労働時間が限定される「限定(ジョブ型)正社員」について、対極に位置付ける「無限定正社員」を働き方が無限定な代わりに雇用は保障されている(だから労働時間規制は撤廃すべき!?)と描き出した上で、「就業規則の解雇事由に『就業の場所および従事すべき業務が消失したこと』を追加することが想定される」と明確に認めている。解雇については労働契約法改正で法定化された解雇濫用(らんよう)法理が適用されるとしつつ、実際にはそれをすり抜け、「無限定正社員とは異なる判断」がされるように、すなわち解雇しやすくしよういうわけだ。同様に、有期と無期の不合理な差別を禁じた同法20条にあえて言及し、その不合理性の判断に当たっては「職務の内容および配置の変更その他の事情」が考慮されると注釈を付けていることにも、差別禁止の趣旨が骨抜きとなる制度にしたいという意図が見え隠れする。結局、同法改正で可能となった有期から無期への転換申し出権行使を有名無実化するための、受け皿としての新たな「雇用身分」づくりが狙いとも考えられる。

 働くことは人生設計の軸だったはず。限定正社員がそうした意味での「雇用」なのかどうか大変疑わしい。


HOME広報社会新報・主張・一覧>限定正社員 「クビにしやすい正社員」こそ本音