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汚染水漏えい 再稼働の準備より優先して対策を

 東電は7月22日、福島第1原発の汚染水の海への流出を認めた。そもそも同19日には海に漏れたと判断していたが、発表が遅れたのは「資料作りをしていた」からで、参院選が終わるのを待っていたわけではないのだという。社長は発表の遅れを陳謝、経産相も遺憾の意を表明したが、白々しいとの思いを禁じ得ない。

 遅くとも7月初めには、海中の放射性物質の濃度が低下しない原因を探るために掘った観測井戸で濃度が急上昇し、原子力規制委も海に漏出した可能性を指摘していた。しかし、東電は事故当時の高濃度汚染水がしみ出たものとの、いわば願望を漏らすだけだった。

 もともとタービン建屋からトレンチ(坑道)などに流れ込んだ汚染水が土壌に漏れ出ていることは明らかであり、しかも、トレンチ周辺の土台は砕石を敷き詰めただけの構造である以上、海中への流出は避けるべくもないことだった。汚染水流出の可能性は事故直後から指摘されていたのに、東電はこの2年以上ほとんど何もやらずに、希望的観測という夢の中に逃げ込んでいたと言ってよい状態だ。

 東電は海洋流出を認めた当日、わざわざ護岸遮水壁の造成工事を公開し、体面を取り繕ったものの、本気度が疑われる。トレンチの汚染水対策を講じよとの規制委の指示に対し、東電は、浄化してからでないと来年4月までは抜き取れないと回答したというではないか。そうこうしている間にトレンチにたまった水からは超高濃度のセシウムと(今ある浄化設備では除去できない)トリチウムが検出された。事態は冗談でなく戦慄的なレベルに達している。田中規制委員長は浄化した汚染水の海への放出は避けられないとの見解にこだわっているが、とても説得できる状況ではないだろう。

 アベノミクスについて安倍政権は、野党には対案がないなどと批判するが、「この道しかない」、すなわち代替案はない、土俵は変えられないと認め、自ら退路を断っているのは政権の方だ。原発政策も同じ罠(わな)にはまっている。

 廃炉にできないのは一にかかって電力会社の経営問題であり、電力需給の問題などではないことは、この間公知の事実となった。だが政府は、相変わらず会計処理方法の手直しなどの小手先の対応に終始している。政府と東電は、再稼働の準備に資源と労力を投入するのではなく、福島原発の汚染水危機などの収束にこそ全力を挙げるべきなのだ。


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