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成長戦略 経済はおろか社会そのものを壊す

 安倍政権は5日から6日にかけ、成長戦略、規制改革、骨太方針の各案を矢継ぎ早に示した。だが株の乱高下が収まらないため、安倍首相は、秋に企業減税を柱とする成長戦略第2弾を打ち出すことを表明した。年金資金による株の買い支えも取り沙汰された。人々の期待を日銀が操作できるというのがアベノミクスの前提であるとするならば、それは初めから崩れているのは明らかだ。経済は今、どんな局面にあるのか。

 バブル崩壊後、国債の発行額も国債への依存度も約4倍に達したが、それを買ったのが民間金融機関であったことは言うまでもない。民間が資金を国債で運用することで政府の赤字が穴埋めされ、民間の資産価値は政府の信用が裏打ちする。全ては国債が値下がりしないことが前提となっていた。しかし、その相互依存のバランスは崩れ出している。日銀が国債を買い支え、財政赤字をファイナンスするという事態は、市場が正常に機能している状況とは言えない。長期金利上昇・国債価格下落をきっかけに、この依存関係は道連れの転落劇へと転化する。南欧型の政府債務危機は人ごとではなくなってきたのだ。

 だから政府は、一層の規制緩和と減税で企業の収益機会を確保する(それは国民生活の維持向上と同じではない)と同時に、大衆増税と社会保障抑制で財政破綻を防ぐとアナウンスすることに必死になるのであり、これは文字どおり「止まったら死ぬ」状態なのだ。

 では企業は今後、何でもうけようというのか。ずばり、身体と生命の領域だろう。成長戦略の中身を見れば、(TPP参加をテコとした)農業と医療の市場化および雇用の一層の市場化(労働力の商品性の強化)に焦点が絞られていることは一目瞭然ではないか。

 この意味するものは重大だ。環境と食の安全、健康と病や老い、働き方と子育て、家族共同体など、人々の再生産、人間の生存に関わる基本的なあり方が利潤獲得の観点からのみ問題にされているという点で、これは構造改革という市場化路線の行き着く最果ての地ではないのか。この事態は早晩、社会の根っこにあるモラルの問題を提起すると見るのも決してうがち過ぎとは言えないだろう。

 人々の生活そのものを賭け金とするような、こんな危ない綱渡り経済(まるで原発のようだ!)はやめさせなければならない。これは人間の自衛のための闘いと言っても過言ではない。


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