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待機児童解消 「働き方」という根本問題見失うな

 横浜市は、株式会社の保育参入促進などの対策により待機児童数が「ゼロ」になったと発表した。遊休公有地活用など注目すべき点はあるものの、この数には認可外保育所の入所者、親が育児休業を延長したときや自宅で求職活動中の場合の「潜在待機児童」は含まれないという問題がある。

 これに飛びついたのが安倍首相。「横浜方式を全国に」とブチ上げた。首相は、企業参入を柱とする対策で、5年後には「待機児童ゼロ」を目指すと息巻いているが、本当なのか。介護市場の開放のメリットが宣伝されていたころの光景と、どこか似ているのが気になる。

 そもそも保育は2年後に「新システム」に移行する。その仕組みは介護保険と基本的に同じであり、利用者(保護者)と市町村との契約から保護者と施設との直接契約に、すなわち、市町村が施設に運営費を支払う施設補助方式から利用者個人を補助する方式(実際には施設が報酬として給付金を受け取る)に転換する。この場合、施設は独立採算の事業体となるのに加え、かつての補助金のような使途の縛りがなくなる、保育サービスに報酬単価がつくなどの変化が生じるため、自己負担する保育料の負担能力による保育格差、(事業撤退の経営判断を含む)株主利益重視経営と人件費圧縮(保育士の非正規化)などが危惧されてきた。

 これらの心配は消えていない。なぜなら、待機児童解消を含む「女性の活躍促進」はあくまで成長戦略の一環だからだ。3年間育休で「3年間抱っこし放題での職場復帰」が物議を醸している。3年育休は将来不安からかえって退職を促し性別分業を再強化すると同時に、女性の階層分化を進めるのではないかとの懸念がある。待機児の8割強を占める0〜2歳児対策は新制度論議でも鬼門だったが、「3歳児神話」が復活すればサボる口実になるし(「女性手帳」で少子化は女性の責任との刷り込みもできる)、企業が戦力視する、市場からサービスを購入し子育てを外部化できるエリート女性にはもともと「3年浦島」になる心配はない。他方、雇用継続見込みが立たない有期労働者はそもそも育休が使えず、しかも低賃金かつ長時間労働だ。

 全ての女性が妊娠・出産しても安心して働き続けられるようにするためには男性を含めた働き方の見直しが不可欠であり、「仕事と生活の両立」のつまみ食いで点数を稼ごうという下心があるなら捨てるべきだ。


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