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無期限緩和策 危ない橋を渡るより雇用に焦点を

 安倍首相の意気は上がる一方のようだが、アベノミクスは早くもほころびを見せ始めたのではないか。通貨供給量を2年で2倍にする「次元の違う金融緩和」を決め、企業のプレゼンよろしくメディア登場や国会で宣伝に余念がない黒田日銀総裁だが、この間の発言には揺らぎも見られる。

 長期国債保有額を倍増させる「常識を超える規模の買い入れ」による「市場への影響は不可避」と認め、保有額を制限する「銀行券ルール」は「いずれ復活してくる」と言う。追加緩和策を「次々に打つことは考えていない」としつつ、「必要な場合は必要な調整を行なう」とする。また、財政は「おそらく持続できない」とし、政府に赤字縮小を求める。かつてのグリーンスパン米FRB議長のような「市場との対話」を模範としているのだろうが、これで首尾よく行くのか。

 多分直接的な背景は、通貨安競争(近隣窮乏化政策)に対する米国などの懸念だろう。しかし最大の問題は、金融緩和・機動的財政政策・成長戦略の「三本の矢」がかみ合わないまま、足を引っ張り合うおそれがあることだ。海外の機関投資家の日本国債への不安を解消するためには増税を実行しなければならないが、需要不足解消前の増税に将来のインフレと社会保障削減の予測が重なれば、個人消費の低迷は続き、景気は失速する。円安インフレが起こっても、金利反転(国債値下がり)を恐れて緩和策はすぐにやめられないため、景気回復が腰折れしたままだと、不況下のインフレが待っている。金融政策は打ち出の小づちではないのだ。

 結局問題は、貨幣量の増加は実体経済上の需要増と同じではないという問題に帰ってくる。経済全体を左右する消費支出は緩和策への期待感だけでは増えないのだ。「三本の矢」がさらに悪循環を生む予測も成り立つ。金融緩和で資産インフレが起こる一方、労働の規制緩和で雇用劣化と賃下げが進み、福祉も削られるとなれば、格差は一層広がる。内需が落ち込むため企業は輸出ドライブとマネーゲームに依存し、経営は資産運用と変わらなくなり、「成熟社会」に対応した需要創出も、そのための制度改革もおろそかになる。

 これらは全て、小泉構造改革時代に起きたことだ(ただし、今はもう米国市場には頼れない)。米国の経験に照らしても「雇用なき景気回復」の歴史的限界は明らかであり、アベノミクスは実は「古い」のだ。


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