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武器輸出拡大 「平和国家」の内実は空洞化の一途

 イラク戦争開戦から10周年を迎えた3月、平和国家の基本に関わる重大な動きがあった。菅官房長官は3月1日、日米などが共同生産するF35戦闘機の部品の日本からの輸出について、武器輸出三原則の例外扱いとする談話を発表した。

 米国などと共同開発・生産した武器の輸出解禁は、前野田政権が11年にすでに容認済み。しかし今回は、日本が輸出した部品を使ったF35を米国が誰の目にも紛争当事国にほかならないイスラエルに輸出することが具体的に想定されるため、「国際紛争の助長回避」という従来掲げてきた理念との整合性が現実の問題として問われることになった。

 ところが安倍政権が出した答えは、「国際紛争を助長することを回避するという武器輸出三原則等のよって立つ平和国家としての基本理念」の文言自体の削除だった。基本理念は「国連憲章を遵守(じゅんしゅ)する」ことに変わった。そして、米国から第三国への移転は「米国政府の一元的な管理の下で」「国連憲章の目的と原則に従うF35ユーザー国に対するもののみに限定される」のだという。前政権の方針にはあった事前同意は消え、判断は米国に丸投げされてしまった。

 では、国連憲章を守るというのは何らかの歯止めになるのか。対テロ戦争の問題と絡んでくるのはこの点だ。対イラク先制攻撃が国連憲章と国際法に違反することは定説の部類だが、安保理常任理事国を構成する当の米英がそれを認めることはありえない。同様に、米国の軍事支援を受けるイスラエルの武力行使に対し、国連憲章が実質的歯止めとなる可能性もないだろう。

 ここで気になるのは、官房長官が談話発表時の会見で「テロとの戦いをはじめ、紛争の平和的解決へ国連憲章を遵守することこそ平和国家としての基本理念」と述べていることだ。イスラエルを代弁しているとでも解さない限りおよそ意味をなさない言葉の羅列のようでもある。だが、政府が法的根拠を説明できないオスプレイの低空訓練を「安保条約の目的に基づくもの」として擁護してきたこと、さらに、安保は国連憲章の目的と原則に基づくものだとしてきたことを考えると、テロとの戦いを全てを包括し正当化する、憲章よりさらに上位の概念的枠組みとして用いようとしていると思うのはうがちすぎだろうか。国際紛争の武力解決を禁じた9条の明瞭な理念から離れようとするとき、言葉は必ずごまかしとなる。

(社会新報2013年4月3日号・主張)


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