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TPP交渉 弱者を犠牲にすることが「国益」か

 安倍首相の正式表明を待たず、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加は既定路線となった。自民党内「慎重派」は首相に対応を一任しておいて「公約を守る」と強弁し、問題を農業における関税撤廃の例外品目の範囲に切り縮めた上で、条件闘争に力点を明確に移した。他方、先行9ヵ国に遅れて11年11月に参加を表明したカナダとメキシコが、9ヵ国で合意した条文を原則として受け入れ、「再交渉は要求できない」との条件を水面下でのまされていたとの報道に対し、首相はテレビ番組で「後から入ってきた人たちに議論を覆されたら困るというのは、そうだと思う」と述べ、秘密条件の存在を暗に認めた。

 この状況を導いたのは、2月22日の日米共同声明だ。首相は「一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではない」との文言が盛り込まれたことをもって「『聖域なき関税撤廃』が前提ではないことが明確になった」としているが、この前段には「全ての物品が交渉の対象とされること」および「(11年11月の)TPPの輪郭(アウトライン)において示された包括的で高い水準の協定を達成していく」ことを確認すると明記されている。そして、このアウトラインでは「関税並びに物品・サービスの貿易および投資に対するその他の障壁を撤廃する」ことが確認されているのだ。重要品目を関税撤廃対象から除外できる担保などどこにも存在していない。実際、交渉参加国の中で現状、除外を求めている国はない。

 総選挙で自民が掲げた政権公約は「『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、交渉参加に反対する」だけではない。あと5つ、自動車等の輸入数値目標反対、国民皆保険や食の安全・安心の基準を守る、(投資家を保護する)ISD条項には合意しないなどの判断基準が示されていたはずなのだが、これらについては見事に口をつぐんでいる。

 彼らが、輸入自由化を受け入れた1次産品がどうなったか、知らぬはずはないのだが、「攻めの農業」なるビジネス宗教の呪文まがいの言葉で、現実をごまかすばかりだ。輸出大企業の利益や日米同盟の緊密化こそが「国益」であり、その多くが経済的社会的弱者である普通の人々が安心して安全に生存する権利よりも優先されて当然だと信じているのだ。強者の論理に他ならない「TPP的なるもの」の内面化こそが、最大の問題なのかもしれない。


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