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生活保護削減 根拠なき「1割カット」公約の暴走

 政府は、生活保護の生活扶助費を3年間で総額670億円削減しようとしている。この流れをつくったのは、1月の厚労省社会保障審議会生活保護基準部会が示した、子どものいる世帯や20〜50代の単身世帯などで最も低所得の10%の層の消費実態が生活保護基準を下回るという検証結果だ。だが、同部会報告は単純に基準引き下げを求めているわけではなく、むしろ見直しが保護受給世帯や一般低所得世帯に及ぼす影響について「慎重に配慮されたい」としている。下位10%層には「生活保護基準以下の所得水準で生活している者も含まれることが想定される」と、いわゆる捕捉率(制度の利用資格がある者のうちの実際の利用率)の低さに言及するとともに、「貧困の世代間連鎖を防止する観点から子どものいる世帯への影響にも配慮する必要がある」とクギを刺してもいるのだ。しかし、政府の答えは、子どもの数が多いほど受給額の減少幅が大きいという「適正化」だった。

 そもそも部会の検証によれば高齢世帯では下位10%層の消費水準より生活保護基準の方が低いため、基準を引き上げなければならないはずなのだが、政府はその点を無視する。その上で持ち出すのがデフレであり、580億円は物価動向を勘案して削るのだという。

 けれども、これも大変苦しい。これまでの民間最終消費支出動向に基づく決定方式(水準均衡方式)によれば13年度は実質増の見通しなので引き下げにはならないはず、なぜ前回0・2%引き下げ時の04年の消費者物価指数ではなくガソリンなどの高騰で記憶される08年と比較しているのか、同年と比べた場合でも大きく下がったのはパソコンやテレビなどであって、困窮層の生活を直撃する光熱水費や食費、被服費などは逆に上がっている、などの疑問がすぐ浮かぶ。部会報告も、全所得階層の収入総額に占める下位10%層の割合の減少をわざわざ指摘しているのであり、賃金低下を含め、低所得者層の生活水準の相対的低下が進んでいるのに、デフレだからと最低基準まで下げるのは、まさに社会の底を抜く政策であり、デフレ脱却で好循環を、というアベノミクスの掛け声とも整合しない。生活保護との整合性への配慮を明記した改正最低賃金法も、これでは底上げどころか逆に機能してしまう。

 自民党の1割カット公約にもともと根拠などなかったことが、負の連鎖を招き寄せようとしているのだ。


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