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社民党の政策

消費税大増税は本当に必要か

2008年1月1日・社会新報

政府・与党の消費税大幅アップに向けたシナリオが動き出した。昨年末の税制改正大綱では当面の引き上げは見送ったものの、事実上、基礎年金の国庫負担割合を3分の1から2分の1に引き上げる2009年度からの増税を示唆している。内閣府の試算では「最大17%」と過激な数値を示し、国民に「大幅アップやむなし」を印象付ける世論誘導まで画策している。本当に消費税の増税は必要なのか検証した。

大企業・金持ち優遇変わらず 庶民の暮らし直撃する負担増

17%の増税試算も 経済の二極化進む

 内閣府が昨年10月17日の経済財政諮問会議(議長・福田康夫首相)に示した社会保障給付と負担に関する試算では、現在の医療、介護など社会保障給付の水準を維持するなら、2025年度には消費税を最大17%まで引き上げる必要があるとし、「社会保障水準引き下げか、消費税増税か」との選択を国民に迫るとんでもない内容だ。

 「消費税17%」は家計や日本経済にどのような影響をもたらすのか。第一生命経済研究所主任エコノミストの永濱利廣さんの試算(図1参照)によると、年収300万円の低所得世帯でも現在(5%)より20万円以上負担が重くなるという。

図1:世帯当たりの消費税負担額

永濱さんは「家計負担の増加を通じて実質GDPは3%も押し下げられる」と日本経済全体への影響を指摘。さらに「消費税の逆進性の問題から低所得者層の負担増が増し、経済の二極化に拍車がかかる」と大幅増税の問題点を強調した。

 日本総研調査部主任研究員の小方尚子さんも「1%の引き上げで消費者物価を0・9%押し上げ、実質個人消費は0・6%下押しされる。原油価格の影響で食料品などの値上げラッシュが予想され、しかも賃金が実質的に下がっている状況では最悪のタイミングだ」と1、2年後ともささやかれる2〜3%引き上げにも厳しい見方をした。

 政府・与党は予想される総選挙を意識して08年度の税率引き上げは見送ったものの、日本経団連の意向などもあり、将来の「消費税増税」は既定路線とされている。このため内閣府の試算でも、これまで大幅に軽減してきた法人税の引き上げはまったく考慮されていない。国税庁のまとめでは、昨年6月までの1年間の法人申告所得の総額は好調な企業業績を反映してバブル期をも上回る過去最高の57兆828億円(前年比13・3%増)に達している。しかし申告税額はバブル期に及ばず約14兆5000億円にとどまった。これは法人税の基本税率がバブル期は約40%だったのに対し、現在は30%で10%も軽減されているためだ。しかも軽減された税金分はその多くが株主配当や役員報酬に代わり、従業員の賃金引き上げには回っていない。

法人税率の軽減策 見直しこそ検討を

 財務省の資料「所得・消費・資産等の税収構成比の推移」(図2参照)によると、消費税導入前の1988年度、法人課税は全体の34・3%あったものが、今年度は27・7%まで約7ポイントも落ち込んでいる。

図2:所得・消費・資産等の税収構成比の推移

消費課税がその落ち込み分をカバーしていることが分かる。昨年11月20日の政府税調の答申では、社会保険料などを含めた企業負担率は国際的には高い水準ではないと認めていながら、「国際的動向に照らして(法人税の実効税率引き下げは)必要との意見が多かった」と、わざわざ明記し、さらなる法人税の引き下げを示唆した。

 大企業や高額所得者を優遇し、庶民には負担増押しつけを狙う福田内閣には退場してもらうしかない。

税率引上げは経済の失速招く

経済アナリスト 森永 卓郎さん

森永卓郎

 自民・公明の与党が昨年末にまとめた2008年度税制改正大綱では、当面の消費税率引き上げは見送ったものの、社会保障費の「主要な財源」と位置付け、将来の大幅アップには含みを残した。政府・与党の狙いや日本経済、国民生活への影響などについて、経済アナリスト(獨協大学教授)の森永卓郎さんに聞いた。

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 与党の2008年度税制改正大綱は、09年度からの基礎年金国庫負担割合の引き上げに合わせて、安定した社会保障財源の確保が不可欠だとして、間接的ながら09年度からの消費税率引き上げを打ち出した。先進国の中で群を抜く債務残高を抱え、財政も破たん状態に近い中では、国民負担の増加は不可避だというのだ。

 しかし、そこには重大な欺まんがある。例えば07年9月末の国の債務残高は同6月末と比べて2・8兆円も減少している。債務の規模が大きいという点に関しても、政府は約800兆円の債務残高に対して、500兆円程度の金融資産を持っており、ネットの債務は300兆円ほどだ。ネットで見れば、日本の債務は欧州とさほど違わない。

 それでは、なぜ消費税を上げようとするのかといえば、企業負担を下げるためだ。政府税調の答申は、法人課税に加えて社会保険料負担を含めた日本の企業負担が、国際比較で必ずしも高くないことを認めながら、なお企業負担の引き下げが必要だとしている。現在、物価が上昇に転ずる一方で、賞与が減少に転じている。日本経済は戦後初めて、物価上昇の下で賃金が減少する「スタグフレーション」に突入しつつある。その中で消費税率を引き上げたら、経済は失速してしまうだろう。

公平に負担 公正に分配

社民党政審会長 阿部 知子 衆議院議員

あべともこ政審会長  少子高齢社会の中で、人口構成や多様な働き方などに対応する税制として、消費税が着目されること自体は間違ってはいないと思う。しかし消費税にはいくつかのひずみがある。1つは、税制全体で見たときに、所得税の累進度を下げ、法人税率の課税ベースを狭め、それを代替するものとして消費税を置いたというスタート時点からの大きなゆがみを持ってしまった。

 2つ目は、消費税のかけ方に問題がある。飲食料品は消費というより「生活保障」だという意味をきちんと込め、生活必需品にはかけるべきでない。社民党は当初から飲食料品への非課税(戻し金制度)を主張してきた。

 3つ目は「社会福祉目的」だが、お金に色が付いているわけではなく、本当に福祉に使われているかどうか、有権者・国民に実感できる構造になっていない。その上、防衛装備費水増し請求の山田洋行だったり、米軍への思いやり予算やインド洋の給油などに使われていたら正直、国民も納めるのがいやになるだろう。

 政府は借金、国債がこんなにあって大変なんだ、財政再建しなければならないと主張しているが、思い起こせば、この10年、逆に所得税の累進度を低め、法人税の課税ベースを狭め、財政赤字が拡大するように仕組んできたのは間違いなく政府だ。だから払うべき人にはきちんと払ってもらい健全な社会にしないと、若い人は悲鳴を上げ、次世代を生み出すこともできずに日本は沈没してしまう。今こそ税は、公平に負担し公正に分配していくという基本を再確認すべきだ。これがなくなった社会はアメリカ型の自由競争、自己責任でセーフティーネットもない社会になるしかない。日本はそういう社会に成り下がろうとしている。

(社会新報 2008年1月1日号より)

 

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