2010年8月27日

内閣総理大臣
菅 直人 様

2011年度概算要求に関する申し入れ

社会民主党
党首 福島みずほ

<はじめに>

 2011年度予算の概算要求は、菅政権が定めた概算要求組み替え基準である歳出基準を71兆円とした上で、各省庁の政策的経費(人件費を含む)を一律一割削減し、真に必要なものを元気な日本復活特別枠で要望し獲得するというルールで行われる。

 社会保障費は自然増1兆2400億円も含めて削減対象とせず、地方交付税も昨年通り17.5兆円が認められている点は小泉構造改革で崩壊の危機にさらされた社会保障や地方を再生させようとする政権の意思と受け止め評価する。しかし、今後もその機能や活力を取り戻すまでには、さらなる予算の拡充が必要と考える。加えて非正規労働者の増加による空洞化や少子高齢社会に見合う制度の再設計、地方にあっては分権改革への取り組みが不可避である。今後とも財政的充実と制度・税制改革が続けられることをまず要望しておきたい。

 全体で言えば重点枠での復活はあるものの、大きな政策理念が見えづらく例えば「コンクリートから人へ」と言われたような大胆な改革とはなり得ていない。私ども社民党は政権発足時に取り交わした三党連立合意に基づいて今年度の予算が政権交代後初めての本格的予算となることを踏まえて、(1)低炭素社会の実現、(2)仕事と雇用の充実、人から元気にする経済、(3)地域と地方の活性化に資する(4)拡大する貧困に対し明確な対策を打つ−ものとなるよう以下の要望をとりまとめた。

 こうした要望が貴政権においてきちんと受け止められ、政権交代によってどんな社会や時代が作り出されるのかが、国民に対してより明確になるよう望むものである。

税財政・金融

 グローバル化による経済社会の構造変化が進む中で、日本社会は、少子高齢化、デフレの長期化と所得の低下、格差・貧困の拡大、エネルギーなど資源制約、きびしい財政状況などの問題を抱えている。21世紀の税制改正の基本は、「公平・透明・納得・連帯」の原則に立って、社会的費用を分かち合うこと、社会保障制度との役割分担、地球温暖化対策などグローバルな課題への対応、地方分権を支えることである。

 失われてきた所得再分配機能の強化と税収調達機能の回復を急ぎ、不公平税制の是正をはかることを要望する。

◎子ども手当との見合いで廃止された住民税の扶養控除廃止の2012年度実施の凍結および控除縮小に伴う影響把握と説明、緩和対策の実施

◎租税特別措置の抜本的な見直しの推進

◎法人税については、租税特別措置の縮小など課税ベースを拡大

◎相続税や贈与税などの資産課税を強化

◎国際連帯税の創設

◎環境税の創設

◎地方消費税の税率拡大

◎NPO法人への寄付金の税額控除の導入など寄付金税制を拡充

◎聖域なき特別会計改革の断行

◎基礎控除の引き上げ

◎老年者控除の復活など公的年金等控除の見直し。

◎中小企業の法人税率は11%に引き下げ。

◎納税者権利憲章の制定

◎金融市場への規制・監督の強化。生・損保の不払いを厳しく監視。

◎中小企業、農林水産業、多重債務者、失業者や低所得者層へのセーフティネットとなる公的金融制度の再構築

◎社会に貢献する金融NPOの育成・支援

◎小規模・自主共済事業の継続・救済(保険業法の改正)

<各省庁への要望、重要項目の提案>

総務省

 今や地方の疲弊、産業の空洞化、若年人口の急速な減少は著しく、一方での首都圏への人口流入、都市における貧困の拡大は深刻な状況となっている。まず、地方、地域が自立的に存立していけるような基盤づくり、人、仕事、医療、そして緑の分権型エネルギーの確立が不可欠である。また、地方公共サービスを支える人材は安易に制限するのではなく、情報弱者をも含めたきめ細やかな行政サービスのあり方も含めて再構築する必要がある。

◎地方交付税の総額確保と再分配機能の充実による地域格差の是正

◎「スマートシティ」構想や農業の第6次産業化と連動する再生可能エネルギーの普及

◎「生命のトリデ」としての医療提供体制の整備、充実

◎安心と安全の住民生活のための自治体サービスの充実と質の向上、消防、防災体制の充実

◎地方財政計画の充実、地域雇用創出推進費の継続、少子化対策・子育て支援対策の特別枠の設置

◎憲法改正国民投票関連予算の計上見送り

防衛省

 国際安全保障環境の変化、国内外ともに多発する自然災害、PKO要請など自衛隊を取り巻く環境は変貌を遂げている。自衛隊を専守防衛の実力を持った組織として位置づけた上で、その隊員の一人一人がしっかりとした歴史認識・人権感覚を持つことは教育の上でも日々の活動の上でも極めて重要である。

 また在日米軍基地のあり方は戦後65年経過し、過大な沖縄の基地負担が大きな社会的政治的問題となる中、日米地位協定の見直しとともに在日米軍駐留経費(いわゆる思いやり予算も含めて)の見直しは必須である。

◎自衛隊員の人権擁護などのためドイツ等で実績のある軍事オンブズマン組織の導入に向けた調査・研究

◎思いやり予算の削減

◎隊員の日頃の健康管理体制の充実、とりわけ海外勤務による負担増への対策

外務省

 世界における情報収集と情報発信の重要性は近年高まっており、とりわけ軍事によらない紛争の解決、あるいは紛争の予防を第1とする我が国では外交官にかけられた期待と果たすべき役割は大きい。

◎日本が出資する国際機関での収支の透明化

◎アフガニスタン支援の見直し
教育人材や母子保健への大胆な支援

◎外交官の増員(とりわけアジア、アフリカ地域)と待遇の改善(とりわけ赴任地での出産や女性外交官の処遇)

財務省

 国際的に人、モノ、カネの移動が大幅に増加する中、税関(海も空も)での仕事量は質、量ともに増大しており、その充実は急務。また、納税環境を整備し、脱税などを減少させるためにも国税職員の増員を図る必要がある。

◎税関職員、国税職員の増員

文部科学省

 新政権においては、とりわけ教育並びに人材育成こそ我が国最重要課題と位置づけられている中で、初等中等教育から高等教育、あるいは大学や研究機関における若手研究者の育成、支援、待遇改善が急務である。

 また、科学技術関連予算の削減は国力の低下ともなりかねず、世界的な視野で広く充実を図るべきである。合わせて急速に拡大する「子どもの貧困」に対する対策としても学力サポート、就学援助、奨学金充実、返済猶予などの措置を図る。

◎学校耐震化、脱アスベスト、太陽光パネル設置

◎国立大学の運営交付金の増額

◎少人数教育

◎奨学金拡充、返済猶予

◎就学援助制度の高校までの拡大

◎高校無償化の確実実施

国土交通省

 国土の健全な発展と安全の保持は常に重要な課題であり、南北に長く豊かな自然と温暖な気候に恵まれた我が国の美しさは、広く内外の人々の心をとらえ続けてきた。今般、地球温暖化などの全世界的な進行によって、低炭素社会を目指すべく我が国の社会的インフラ整備をどう計画していくのか、従来の施設、設備、道路、橋、港などの老朽化と相まって問われている。加えて急速な国際化にも十分対応しうるビジョンを持つことも必要とされている。

 また少子高齢化は人口の都市集中や地方の過疎化を一層進展させ、その中で人間にとって基本的な人権のひとつをなす移動の権利は十分に保障、機能しなくなっている。まずは山紫水明の日本の国土を守り、新たに世界に開かれた日本として持続可能な公共インフラ整備に光を当て、加えて安心・安全の追求が求められている。

◎交通基本法の制定、総合交通政策の確立

◎地方バスや地方鉄道、離島航空路など、地域住民に不可欠な生活交通への支援強化

◎超低床車両を使用した新しい路面電車(LRT)への支援の充実

◎整備新幹線の推進、並行在来線に対する支援体制の確立

◎通勤ラッシュを緩和するため、都市鉄道・地下鉄整備等への公的助成の拡充、「開かずの踏切」の解消

◎「人にやさしい」視点で歩行者安全策を追求し、楽しく歩ける歩道整備の推進。自転車道の整備、自転車通行帯の設置の推進

◎マイカーに依存せず公共交通を活用した、エコ通勤を導入する企業への支援策

◎社会実験による地域経済への効果や他の交通機関への影響、環境への負荷などの結果を検証し、高速道路料金無料化政策の抜本的な見直し

◎シルバーパスの充実、障がい者割引に対する公費負担制度の創設

◎安全で快適な公共交通機関のバリアフリー化の推進

◎住宅困窮者への住宅支援策の強化、多様な家賃補助制度

◎新築や増改築に際し、省エネや環境配慮型建築資材を使用した場合の助成制度の充実、適用基準の緩和

◎耐震基準を満たす住宅の割合を拡充するため、耐震改修費用への定額補助の創設

◎介護や安否確認が受けられる高齢者向け住宅の整備

◎徒歩や自転車で暮らせるコンパクトなまちづくりの支援強化

◎ゲリラ豪雨などに備えた予防的な治水対策強化

◎しきしま級巡視船の整備の着実な継続、老朽船舶、ヘリ等の代替建造の推進

◎大規模公共事業について、情報公開及び住民参加の徹底を図りつつ、必要性・緊急性・優先度・費用対効果を精査し、大胆に見直し

◎身近な環境・生活関連型公共事業の推進、老朽化した危険な橋や道路・上下水道管等の社会インフラの点検・維持修繕・更新など安心・安全や防災のための公共事業の推進

◎地域を支える建設産業の活力回復

法務省

 現在の我が国では、社会の価値規範の崩壊が著しいスピードで進み、家族、地域、職場などあらゆる分野で人間関係が断絶させられている。その結果、容易にはその理由を推し量ることのできないような犯罪、虐待、放置、尊属殺人などの事件が多発し、また孤独死、自死や薬物中毒、精神的疾患も著しく増加している。加えて国際社会化に伴う犯罪の増加も放置できない状況がある。

◎司法人材の育成支援、法テラスの拡充

◎司法修習生の有給措置の継続

◎取り調べの可視化を進め、被疑者の人権や犯罪の社会的背景にも十分配慮、考察がなされること

◎裁判員制度に参加した市民の十分なフォローアップとサポート

◎国際化にふさわしい在日外国人に対する人権配慮と入管行政の充実

◎刑務所等矯正保護施設の改善、老朽化対策と社会復帰対策の充実

◎受刑者への医療、介護保険適用の検討

警察庁

◎犯罪被害者への支援の充実

◎死因究明制度の根本的充実

内閣府

 内閣府の役割は多岐に及び、とりわけ国のヘッドクォーターとして各種先進的施策の立案、調整、進捗状況の点検など重要な役割を担っている。

 新しい公共、男女共生、少子化社会への対応、環境未来都市、また特区構想などは新しい経済や社会の仕組み作りとして、まさに持続可能なゆとりや幸福を実感できる時代への課題である。

 加えてこの間、敗戦後多年にわたり在日米軍基地の負担を多大に負ってきた沖縄や、自然環境も厳しくまた失業率や経済指標において本土との格差の著しい北海道など本州以外の地域をどう発展させるかも地方分権・住民主権の観点から重要な課題である。

 まず内閣府として目指す地域活性化と観光立国というビジョンの中にしっかりと環境にやさしい、そして環境立国としてのこれからの日本の国の姿を重ね合わせることを要望する。

 合わせてかつて福島少子化担当大臣が担っていた男女共生型社会の実現も、女性の就労のM字カーブや男性の家事・育児参加のあまりにも低い我が国を根本的に変えて、男性も女性も人間らしい暮らしの中で次世代の育成に取り組めるようにするべく極めて重要である。加えて暮らしの安全・安心を国民にメッセージする役割も大きい。

◎消費者行政−窓口業務に携わる職員の待遇改善。

◎自殺予防のための各種政策の立案・コーディネート。

沖縄対策

 そもそも沖縄関連経費を一割カットの対象とすべきでない。沖縄はこれまで在日米軍基地を受け入れることの見返りに種々の補助金や公共事業がもたらされてきたという側面があるが、しかし、その結果は必ずしも沖縄の自立的発展や経済が真の沖縄の個性ある発展を妨げ、逆に本土からは「基地による経済的恩恵」が沖縄を支えると言うような誤った見方が沖縄に向けられて、これが沖縄の在日米軍基地問題を本土側の国民もともに我がこととして考えるきっかけを失わせている。そこで今後の沖縄の人々暮らしの豊かさのためにも「一国二制度」のような、沖縄が独自に取り込める諸政策を可能とするような発想がまず必要と考える。

◎本土に先駆けて島全体に再生可能エネルギーの普及をはかり、全量買取制度を実施

◎消費税非課税措置
これにより観光も活性化

◎関税の軽減あるいは撤廃等の特別措置

◎沖縄振興特別事業費等の計画の審査基準の緩和、迅速化

◎鉄軌道、路面電車の積極推進

◎沖縄北部環境保全事業、赤土対策

◎港湾、空港整備と道路網の補修、整備

◎農家の戸別所得補償の対象の先行拡大

◎保育所の整備のさらなる促進(認可外→認可へ)

◎ガソリントリガー税制の先行実施

農水省

 食料・農業・農村地域の再生と食料自給率の向上を国家戦略として推進し、森林整備の促進、木材産業の活性化、水産資源の保全と漁業再生にむけ、全力で取り組むこと。

◎戸別所得補償制度は、畑作、野菜・果樹、畜産・酪農、森林、漁業に拡大すること。

◎米の個別所得補償制度の定額部分を2万円に引上げること。

◎水田利活用自給率向上事業を継続すること。

◎環境支払を導入し有機農業などを推進、中山間地域直接支払を増額すること。

◎6次産業化を推進し、それを支える太陽光など再生可能エネルギーの導入を支援すること。

◎青年農業者助成金制度の創設、農業大学校など研修施設の充実

◎農山漁村地域整備交付金を継続し、農業農村整備事業を増額すること。

◎学校給食における地場農産物の利用に対する助成措置

◎家畜伝染病予防対策を強化し、国の責任を強化、被害農家への補償を厚くすること。

◎すべての食品に対するトレーサビリティ制度の導入、原料原産地表示の義務化

◎間伐や路網整備を促進し、技術をもった林業者を育成・増員すること。

◎水産資源の維持・強化と漁業者の生活支援をはかること。

環境省

 脱化石燃料・地球温暖化防止と生物多様性の保全は国際社会の大きな課題である。

 2011年のCOP17にむけ、国際枠組みに縛られない日本独自の気候変動対策を構築し、国民的合意を形成、低炭素社会経済の確固たる方針を示し、内閣一体で取り組み、企業投資をリードしていくことが政権の役割である。

◎世界に公約した90年比25%削減など地球温暖化対策の推進、ロードマップの作成

◎環境税・炭素税の導入、キャップ&トレード型の国内排出量取引制度の創設

◎COP10・MOP5にむけた生物多様性保全の強化と遺伝子組換作物・生物の規制強化

◎化学物質対策・規制強化

◎国を中心とした不知火海沿岸の健康・環境調査の実施

経済産業省・中小企業

 大企業・輸出優先の産業振興から小規模・中小企業の育成支援への転換をはかり、原発中心のエネルギー政策から地域自給型の再生可能エネルギーへの転換を急ぐこと。

◎中小企業対策予算を倍増、中小企業への金融支援を拡充すること。

◎太陽光発電など再生可能エネルギー発電の全量買取制度を早期に導入すること。

◎スマートグリッド・スマートコミュニティの構築にむけた予算を増額すること。

◎知的クラスター形成の推進

◎地場産業・伝統産業の支援拡充

◎中小企業向け雇用調整助成金や地域雇用開発助成金の拡充

厚生労働省

 厚生労働省予算は、今や一般歳出の半分以上を占め、社会保障費の自然増だけでも1兆2400億円にのぼっており、菅政権が「強い経済、強い財政、強い社会保障」を掲げる大きな背景ともなっている。加えて働き方の多様化、非正規労働者の増大、世界に類を見ないスピードで進む少子高齢化によって、従来の年金、医療、介護などの社会保険方式の持続可能性が問われ、根本的な制度改正の必要性が指摘されている。また、厚生労働行政は、国民の安心、安全の根幹をなすものであるからこそ、十分にメッセージ性と信頼感のある施策展開が求められている。

 新政権としてはじめての全体像を組む2011年度予算では、第1に安心のメッセージ、第2に時代に見合った働き方の実現、第3にマニフェスト項目の柱でもある子どもへの社会的支援、第4に貧困大国日本からの脱却を目指すものでなければならない。介護労働者の待遇改善

◎不足する介護保険施設と人材の充実、40万人以上の待機者に対し、この3年間で解消すべく特養の増設。

◎不足する都市部での保育園の増設と保育料の負担軽減措置(文科省からも幼稚園児への補助を)、給食費の無料化。

◎子ども手当は1万3000円(2010年)として現物給付をはかる
なお所得税扶養控除廃止により、高所得者には給付減となることから所得制限は不要

◎障害者自立支援法の廃止と障がい者基本法の制定、障がい者の権利条約の批准に向けて自己決定権の尊重と教育就労支援に全力をあげる。

◎国民皆保険の根幹である国民健康保険の空洞化、負担増に対して国庫補助の引き上げ。

◎生活保護における医療扶助、介護扶助を見直し、医療保険、介護保険に組み込む。

◎貧困対策としてパーソナルサポート体制の充実。福祉による早期のサービス情報伝達と支援。

◎子どもの貧困解消への数値目標の設定

◎虐待防止に係わる人材の増員と質の向上



HOME政策>2011年度概算要求に関する申し入れ