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裁判員制度を問う・施行の前に国会で問題点洗い出せ

裁判員制度を問い直す議員連盟発足 5月21日の裁判員制度実施を前に、制度設計上の無理があるのではないかとの懸念が広がっている。

 そうした中、4月1日午後4時、衆議院第1議員会館にて超党派の「裁判員制度を問い直す勉強会」が開催された。亀井久興衆議院議員(国民新党幹事長)を代表世話人に選出し、保坂展人衆議院議員(社民党副幹事長)が事務局長となった。与野党の議員17人が参加し意見を述べ、「裁判員制度の実施が近づいてきた中で、立法府にいる者として責任ある対応をしよう」と確認した。

 また当勉強会では、弁護士で名城大学教授の郷原信郎さんが「裁判員制度の現状と問題点」と題して講演。郷原さんはまず、殺人など死刑・無期懲役を法定刑に含む事件を対象とする同制度について「市民に身近なところに司法を持ってくるのではなく、重罪な刑事事件という市民から最もかけ離れた司法領域に無理やり、(裁判員を)巻き込むもの」と批判し、被告人の権利尊重の意味合いの強い米国の陪審制や死刑を廃止した欧州諸国の参審制とも異なる「国際的に極めて特異な制度」と強調した。その上で、国民の司法参加を実現するのであれば、公職選挙法や政治資金規正法など「民主主義の基盤となる法律」が対象の事件や経済分野の事件から始めるべきと訴えた。

 既成事実を前に思考停止するのでなく、予想される、あるいは現実に起きている問題点を洗い出し、見直すべきはちゅうちょすることなく見直しに着手する。この先頭に立つことが立法府の役割のはずではないか。

郷原信郎・保坂展人トークライブ

裁判員制度
関連リンク

裁判員制度の実施に対する社民党の見解(08.8.7UP)

▼保坂展人のどこどこ日記>裁判員制度を問う(別ウィンドウが開きます)

裁判員制度に異議あり!

保坂展人衆院議員は4月30日、郷原信郎さんをゲストに迎え、阿佐ヶ谷ロフトA(杉並区)にて「西松建設事件」の概括と「裁判員制度」について語り合いました。当日の模様は下記の動画をご覧ください。(つづきの動画は後日、アップいたします。)

郷原信郎×保坂展人(社民党)-裁判員制度に異議あり!No.1-

郷原信郎×保坂展人(社民党)-裁判員制度に異議あり!No.2-

郷原信郎×保坂展人(社民党)-裁判員制度に異議あり!No.3-

郷原信郎×保坂展人(社民党)-裁判員制度に異議あり!No.4-

■「裁判員制度を問い直す議員連盟緊急総会」では、事務局で作成した『「裁判員制度」の凍結・見直しにむけた「12の論点」』(下記に掲載)の案文が了承され、かつ衆議院法制局に作成を依頼した『裁判員制度の凍結・延期法案』(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の施行延期等に関する法律案)が了承された。今後は、各党の党内での議論を活性化し、賛同者を増やす努力をすることが確認された。施行日まで時間はないが、議論は白熱している。連休明けの国会で、相当に大きな議論になることを予感される。(保坂展人のどこどこ日記より)

「裁判員制度」凍結、見直しにむけた「12の論点」

裁判員制度を問い直す議員連盟

裁判員制度の実施が5月21日と刻々と近づいています。

4月1日より超党派の国会議員30名で「裁判員制度を問い直す議員連盟」(代表世話人亀井久興衆議院議員)が発足して、活発な活動を始めました。すでに、郷原信郎氏(元東京地検検事・弁護士)、伊藤真氏(伊藤塾塾長・弁護士)、大久保太郎氏(元東京高裁判事・弁護士)などの各氏を招いて勉強会も連続して開催し、「裁判員制度の問題点と見直し」について熱心な議論と指摘が続けてきました。

たしかに、裁判員法は5年前の衆参両院で、全会一致で成立しています。しかし、ここではまだ「制度の骨格」が示されたのみであり、具体的な運用に向けていくつかの重要な付帯決議もつけられています。制度実施を直前にして立ちあがった議員連盟では、憲法上の疑義もあり、国民にあまりに重い負担をかける現行の「裁判員制度の凍結」をめざして、裁判員法施行延期法案(裁判員制度凍結法)を以下の理由で提案するものです。

[裁判員――国民の権利・義務をめぐって]

@思想・信条による「辞退」や面接時の「陳述拒否」が認められない

「私は人を裁くことはできない」という強い信念を持つ国民が、裁判所からの呼び出しを拒んだ時、「正当な理由なく出頭を拒否した」として10万円の過料の制裁を受けるのは憲法上の問題があります。また、裁判員候補面接時に「死刑も含む法定刑を選択出来るか」と問われた国民が、「『憲法19条の思想・良心の自由』に照らして、私はこの質問にお答えできません」と応答した時に「正当な理由なく陳述を拒んだ」として制裁を受ける危険があるのも問題です。憲法の上に、裁判員法が位置しているかのような倒錯があります。

A守秘義務・虚偽陳述の罰則が重すぎる

さらに、「裁判員の守秘義務」の範囲が不明確だとして、「裁判員等の守秘義務の範囲の明確化と国民への説明」が付帯決議で指摘された点は、いまだに判然としていません。裁判員として途中経過に関しては一定の守秘義務が必要であっても、判決を終えた元裁判員について、評議の中で自らが述べた意見及び経過の要点については、他の裁判官・裁判員の評議・評決の態度に言及しない限り、可罰対象にするべきではありません。「評議の秘密は墓場まで」「守秘義務違反を行えば、逮捕覚悟だぞ」という威迫は、不要で過剰な重圧を国民に与えるだけです。
また、これらの守秘義務によって、裁判長や裁判官が一方的な評議の進め方をした時や、裁判員の声を無視して評議と異なる判決をした時等の「異議申し立て」も封じられてしまいます。

B「無罪」の判断をしても強制的に「量刑評議」に参加を強いられる

主権者である国民は、日本国憲法第19条によって「思想・良心の自由」が保障されています。多数決で決められた有罪判断の後に、「無罪」の意見を述べた裁判員が、被告人の量刑に関する評議に加わるように裁判所から強制されるいわれはありません。(現在の裁判員法はこの場合の裁判員辞任を認めていない)よって、評決において「無罪」の意見を述べた裁判員は、量刑に関する評議への関与を強制されないこととするべきです。

C死刑判決を全員一致ではなく「多数決」で行うこと

 現状のままに裁判員制度が実施されれば、多数決で有罪が決まり、死刑判決が下される場合が想定されます。無罪と判断して死刑判決に反対した裁判員も、「有罪・死刑判決」に加担したことに、多大なる苦しみと自責の念を抱え続けるおそれがあります。ましてや、判決後に冤罪の疑いが強まり、救援運動が起きた時などの苦悩は想像がつきません。
4月26日放送の『NHK日曜討論』では、但木敬一元検事総長が「模擬裁判でまずかったのは、時間の関係で全部を多数決の評決で進んだこと。せめて、死刑判決だけは全員一致するまでていねいに評議を尽くしてやる必要がある」と発言しました。そうであれば、「死刑判決の全員一致制」を評決ルールの中にきちんと位置づけておくべきではないでしょうか。

[被告人の防御権]

D裁判員裁判を受けるか否かの「選択権」が被告人にないこと

日本国憲法第32条には、「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」とあり、被告人の権利を幾重にも規定している日本国憲法の趣旨に鑑みれば、「裁判員裁判」しか選択できない制度は憲法に反します。よって、被告人に、裁判員裁判を受けるか否かの「選択権」を保障するべきです。

E取調べの可視化が実現していないこと

警察官、検察官が作成した調書の任意性・信用性をめぐる深刻な争いが起こることを防止し、裁判員が適切な事実認定を行えるようにするためには、取調べの可視化(全過程の録音・録画)の実現が不可欠です。現在、警察庁、検察庁において、取調べの「一部」について録音・録画の「試行」が行われてはいるものの、取調べの可視化の「実現」には至っていません。また、国連などから長年にわたって人権上の問題を指摘されている「代用監獄」も存置されています。

F公平な裁判のための条件は整っているか

 被告人のための十分な弁護活動を保証するためには、公判前整理手続で、検察官の手持ち証拠リストが開示される必要があります。また、「公判前整理手続きを担当する裁判官」と「裁判員裁判の裁判官」が同一人物では、法廷に臨む裁判員と裁判官の情報落差は決定的なものとなり、裁判官のイメージ通りに評議・評決が誘導されるおそれがあります。また、被告人が捜査段階の自白を強要されたものと訴えた場合には、検察官面前調書(2号調書)の採用は禁じることが必要です。

[裁判員制度の基本構造]

G放火・殺人等の「重大事件」が対象となっていること

放火・殺人等の「重大事件」を裁判員制度の対象とすることを改めるべきです。裁判員となった国民に、短期間で「死刑」か「無期」かの究極の選択を迫るべきでない。よって、裁判員制度の対象事件から、少なくとも「死刑」に当たる罪に係る事件を除外し、軽微な犯罪から審理するべきです。

H裁判員への説示を公開の法廷で行うことが義務付けられていない

裁判員となった国民に対しては、刑事裁判の基本原則について、全国どこの法廷においても共通の内容のものが語られることが必要です。刑事裁判とは、検察官によって「合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証」がなされなければ有罪の認定はできないのであり、「疑わしきは被告人の利益に」という「無罪推定の原則」が裁判員にきちんと伝えられなくてはなりません。ところが、「素人の素朴な常識で判断するのが裁判員」という最高裁の説明は大きな誤解を招きます。全国いずれの裁判所でも刑事裁判の原則が説明(=説示)される必要があります。このような刑事裁判の基本すら説明をしない裁判官が出てこないとも限らないので、裁判員への説示を公開の法廷で行うことを義務付けるべきです。

I部分判決制度は裁判員裁判の対象外にすべき

また、部分判決制度は廃止するべきです。ABCのABの裁判体に参加する裁判員は自らが担当する事件のみの有罪・無罪の評決を行い、最後のC裁判員だけが「総合的に量刑判断をする」という制度は全てに参加している裁判官の判断を追認するだけになる危険が大きいのです。そもそも、こうした複雑な大型事件は裁判員制度になじむものではありません。

J「拙速審理」に対する懸念が払拭されていないこと

スピード審理・特急裁判は冤罪の温床となります。国民負担の軽減を旗印にし、公判前整理手続きを金科玉条として、3〜5日という連日開廷で行うとされています。これで、公平で公正な裁判ができるのかは大いに疑問の残るところです。現実の裁判では公判の過程で新たな証拠と真実が浮かびあがり、事実の解明に至ることも少なくないのです。裁判員の日程を優先させれば、追加の主張や立証もほとんど受け付けない、異議も受け付けないという形式的な裁判となり、真実の解明が疎かにされる危険が高いと危惧されています。

K国民への一方的な宣伝ばかりで説明をしていない

これまでの最高裁判所・法務省による巨額の予算を費消した広報宣伝活動は、国民に制度を理解させるという一方通行のものであり、国民からの要望や批判を受けとめるという場ではありませんでした。「国民の司法参加」と言いながら、国民の呼び出し=召喚という姿勢は高圧的ではないでしょうか。まして、裁判員として特別な法律知識はいりません。「素人の素朴な感覚」で判断すれば、それでいいのですといった宣伝は、重大事件の判決に関わる裁判員の役割を実際より軽く、気楽に見せるだけでした。

結論 裁判員制度の実施の凍結

このまま何も改善策を施すことなく、裁判員制度が予定通りに実施される場合には、上記の問題点が噴出することが予想される。私たちは冷静に問題点を整理し、制度の骨格を改めて組み直すべきだと考えています。よって、当分の間は裁判員制度の実施を凍結し、すみやかに立法府の責任で改革改善の努力を行うべきと考えています。

[以上]

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