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社民党の政策

「格差社会是正に向けたアクションプラン」

2007年
社会民主党

 

貧弱な社会保障でありながら、日本的な「平等」のセーフティーネットを維持してきた、会社の福利厚生や業界保護、地方の公共事業は、経済成長にかげりが見えるとともに、機能不全に陥ってきました。またこれらのシステムは高コストであり、腐敗や癒着、既得権益の保護、利益誘導の温床になりやすいという一面もありました。こうした中、日本型平等や日本型システムを「ぶっ壊し」新しい仕組みを作り上げるかのように「構造改革」が断行されたのです。しかしそのことによって、自己責任・自助努力が奨励され、病気や失業、貧困といったリスクを個人で背負い込まざるをえなくなったのです。同時に、ワーキング・プアの人が社会保険料負担に耐えられないというように、旧来のシステムも生活の桎梏になっているのも事実です。

 今、必要なのは、バラバラに分断されたり、競争で相手を追い落とそうとしたりすることではなく、リスクをみんなで普遍化し、お互いに協力して公正で安心して暮らせる社会を築いていくことではないでしょうか。

 連帯・共同こそが人間が人間らしくある本来の姿、関係です。この関係は、しかしこの間のアメリカや財界要求に応える「改革」という名の利潤・競争原理優先の政治によってどんどん切り捨てられ、日本社会自体の荒廃が進んでいます。国政が切り捨てる連帯・共同の関係を、住民自身が街づくりの主体となる住民自治と、住民自治によって担われる分権・自治社会の創造のうちに復権させ、広げていかなければ日本社会のより良い明日は来ないといっても過言ではありません。人間社会の持続可能性が問われているともいえます。

 私たちは、社会保障も、就労支援に限定されない、教育、介護・育児、インフラ整備に至る真に自立支援型でニーズ志向の公共サービスを実現します。「何でも政府が」でもなく、「何でも市場が」でもない、各セクターの強みを引き出し、弱みをコントロールする政府、市場、家族・コミュニティ、非営利のベストミックスを追求します。一人一人をやさしく包み込む社会、誰にも開かれたユニバーサルな社会、制度ではなく生活のサスティナビリティ(持続可能性)あふれた社会を地域から皆さんと創り出していきたいと考えています。そしてそのことを通じて、教育にしても、医療や家族、介護、育児、訓練にしても、従来の恩恵的な「施しの福祉」ではない、新しいデザインとしての参加保障型福祉を培っていくことになると思います。今後、公正社会の新しいデザインである参加保障の制度体系の検討を進めます。

 連帯・共同を地域から育むために全力を尽くすのは、いま現実に社会民主主義を発展させる党であろうとする「分権・自治の党」である社民党しかありません

 小泉政権がヒートアップさせ、安倍政権・福田政権・麻生政権が受け継いだ「構造改革」の帰結である格差の問題を是正するため、当面の方策として、私たちは以下のアクションプランを提案します。

(1)労働

 90年代、多くの企業は、コスト削減に向けてリストラなどで正社員を減らし、パートや派遣、有期契約、請負労働といった非正規労働者を増やすことで総額人件費を削減するという手段をとり、しわ寄せが非正規労働者に集中し、所得格差が拡大してきました。それを支え推進したのが労働分野の様々な規制緩和政策であり、産業再生の名によるリストラ支援策です。成果主義賃金の導入 公正な処遇と人材育成という視点を欠いたまま雇用形態の多様化だけを先行させていることが、格差拡大の大きな要因になっています。いまや格差拡大が少子化や年金の空洞化の要因にもなり、一方、限りなく「正社員」年収を「非正社員」年収にあわせるという「逆均等待遇」も進行しています。

 しかし、ヨーロッパ諸国では、均等待遇原則が確立されており、労働時間の違い以外の賃金格差を認めていません。均等待遇が実現すれば、パートからフルタイムへ、フルタイムからパートへの転換が容易になり男女双方とも個々人のライフスタイルやその都度の介護や育児などの事情でパートかフルタイムかを選択することができるようになり、男女とも多様にいきいきと働き続けることができるようになります。また、将来の社会の担い手にとっても、社会の持続性の障害となっている諸課題の解決にも重要なカギとなります。

 社民党は、小泉構造改革によって拡大した格差・不平等を是正し、ILOの提起する「ディーセントワーク」(人間らしい尊厳をもった働き方)の理念に基づき、公正で人間的な働き方、豊かで文化的な暮らしを保障するため、全力で取り組みます。安易なリストラが職を奪わないよう、リストラ規制法や残業規制による雇用創出が必要です。パートなど低賃金労働の存在が低所得層を形成し貧困比率の高さを生み出しており、同じ内容の仕事にも関わらず、雇用形態や企業規模で大きな賃金格差が生ずれば、労働者は常に底辺へ向けた競争にさらされることから、同一価値労働・同一賃金原則に基づく均等待遇の確保が必要です。1967年に批准したILO100号条約(同一労働・同一賃金)の考え方を踏まえるとともに、ILO175号条約(均等待遇原則)を早期に批准し、「同一価値労働・同一賃金原則」を含む均等待遇原則を織り込んだ「パート・有期契約労働法」を制定し、違反には罰則を加えるようにします。 非正規雇用労働者の賃金は地域最低賃金の影響を大きく受けていますが、フルタイムで働いたとしても最低賃金で生活できないのは問題であり、憲法25条の考え方に沿って、最低賃金を生活保護基準を下限として大幅に引き上げます。また、ナショナルミニマムの基軸として全国一律最低賃金制度を確立します。

 低入札価格競争によって、業務委託で働く労働者の賃金・労働条件が大きくしわ寄せを受けています。不当な賃金ダンピング合戦に陥らないよう、地域雇用の安定と急増している請負労働者の均等待遇の実現のため、1949年に採択されたILO94号条約を批准するとともに、自治体や自治体関連団体が業務委託や民間委託、指定管理者の指定等を行う際、少なくとも公的な機関の中で仕事する以上は、そこで働く人が生活ができる賃金をきちんと保障していくべきだというリビング・ウェッジ(生活保障賃金)の考え方、男女平等、障がい者雇用の促進、環境への配慮などの社会的価値の実現を責務とする公契約条例を制定します。親企業や下請け企業の間で、不当な圧力などを排するため、下請法などの改正で公正取引を確保します。

 すべての労働者、とりわけ現実に重い家族的責任を担いつつ、仕事との両立に努力している女性労働者の権利保障をさらに手厚くするために、休業期間の延長と有期雇用への適用拡大など育児・介護休業法を改正します。企業の遵守すべきガイドラインを策定し、深夜業の免除請求権、時間外労働の免除請求権の実効性を担保します。家族の看護休暇制度や「つわり休暇」制度の確立を目指します。

 研修・教育訓練の成果である資格取得や提案制度による点数、自己啓発した成果をポイントとして積み立て、たとえ企業を移動しても「キャリア」として持って歩けるようにする「能力開発マイレージ制度」の普及など、非正規雇用労働者としての就業経験を、次のステップに活かせるようなキャリア評価システムを確立します。

 育児や介護などの家族的責任が果たせるような労働環境を実現するため、ワークシェアリングの推進と長時間労働の規制を行います。

 そのほか、日本版TUPE(雇用・労働契約継承法)の制定、若者の就職支援と職業訓練の充実、団塊の世代との交流・技術継承等を進めます。

(2)社会保障

 何よりも住宅の保障と健康不安の解消が必要です。年金収入で、何でもまかなおうとすると大変ですが、最低限の住宅が保障され、病気になっても心配ないとなったら、年金もそれなりに「暮らせる年金」が保障されれば十分となります。住宅を福祉の基盤として位置づけ充実させます。

 サービス切り捨て、負担増、不安増のマイナスの循環ではなく、福祉サービスの充実と雇用創出、地域経済振興のプラスの循環を創り出すべきです。 

 生活保護についても、いざというときのセーフティネットとして生活保護制度の改善を図ります。誰もが安心して暮らせるように、医療・年金・介護保険制度の抜本的な改革、福祉サービスの充実と雇用創出、地域経済振興のプラスの循環、子どもを安心して産み、育てられる環境作りを進めます。

(3)格差の固定化を生まない教育

  「教育改革」の名の下で、一部のエリート層と低賃金の労働者層への選別が進んでいます。しかも教育を受ける機会自体が平等ではなく、親の所得や資産によって大きく左右されるようになっています、格差が世代を超え固定化され、希望の見えない階級社会にならないよう、教育政策は重要です。

 「三位一体の改革」で義務教育費の国庫負担率が引き下げられましたが、質の高い教育を保障するため、教育予算の対GDP比5%達成はじめ、20人学級と教職員の30万人増、奨学金・育英制度の拡充、私学助成充実をすべきです。

 あわせて、子どもたちを格差社会から救う公共サービスを充実させます。北欧型統合教育・就学前教育の検討、将来の能力形成の場としての保育サービス、公教育の空洞化防止と「学びの共同体」づくり、若者を周辺化させない公共サービス、学び直しの機会の拡大、イギリスの児童信託基金制度の検討等を行います。

(4)所得再分配に注目した公平な税制改正

 「小さな政府」の名のもとに、一方的な負担増、給付削減の財政改革を進め、「官から民へ」という公共サービスの切り捨てと民間企業へのビジネスチャンスの提供が行われるとともに、市場原理に基づく自己責任原則のもとで個人へリスクを転嫁しようとする方向に政策のかじ取りが行われてきました。すでに「頑張る」20%の利益が下層の80%に垂れ落ちることで全体が底上げするという小泉流の政策は、二極化を推進するばかりで、効果がなくなっています。

 国立社会保障・人口問題研究所の報告は、「税や社会保険料の徴収は同世代内の所得格差を縮小させる効果をほとんどもたないか、あるいは格差拡大的な効果を持つに至っている」と指摘しています。財務省の「我が国の経済格差の実態とその政策対応に関する研究会」も、現行の所得再分配政策について、所得税の最高税率を低くしたり、税率の刻みを少なくして、累進機能を低下させたりするなどの税制改正が行われた結果、税による所得再分配機能が弱まった点を指摘し、格差社会の是正は、税制や社会保障制度の改正で対応すべきだとする報告書をまとめています。

 再分配後の所得も格差拡大を続けているということは、税の再分配効果が落ちていることを示すものです。所得・資産の二極化、バブル期を超える企業利潤の状況を踏まえ、この間軽くなってきた高額所得者の所得税の最高税率引き上げ、累進制強化、法人税の最高税率の引き上げを行います。当面、98・99年度の改正水準前に戻します。

 また、各種租税特別措置の見直し、消費税の逆進性緩和策としての飲食料品に係る消費税額戻し金制度を導入します。

 老年者控除や公的年金等控除の上乗せ措置の一方的な廃止は、所得の低い高齢者に大きな痛みを強いている現状から、まず老年者控除(65歳以上所得1000万円以下、所得税50万、住民税48万を控除)を復活させるなど、公的年金税制を見直します。また、最低生活を保障する観点からも、諸外国に比べて低い水準の基礎控除(現行38万円)をイギリスやドイツなみの2倍に引き上げます。貧困者やワーキングプア(就労貧困者)、若年層に対する税額控除または還付を検討します。

 「若い人は相続次第」であるとか、社会階層が後々まで相続による連鎖を断ち切る必要があり、金融資産課税の強化、相続税・贈与税の強化等を行います。

(5)そのほか

 自民党総裁候補がみな二世・三世であったことにも、「再チャレンジ」が口だけであることが明らかです。だれもが政治の主人公となりうるよう、小選挙区中心の選挙制度を見直し、公職休暇復職制度の導入、供託金の引き下げ、クオータ制導入も欠かせません。合併を強要し「三位一体の改革」で地方財政を絞り上げ、自治体間の競争と格差をあおり、破綻法制まで用意する新自由主義分権論ではなく、小泉改革でずたずたにされたセーフティネットを地域で張り直し、「新たな公共」を創出すべく、税財源の移譲を伴い地域の自己決定権を保障する分権・自治や、NPO、多様な市民の手による新たな社会連帯づくりを進めていく必要があります。

 

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