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社民党の政策

2011年5月25日

国家公務員の労働基本権に関する公務員制度改革について

社会民主党公務員問題対策特別委員会

1.6月13日の期限迫る

  2008年6月、社民党も共同修正の提案者となり、公務員制度改革の理念・方向性を指し示す国家公務員制度改革基本法が成立した。基本法は、公務労働者の労働基本権について、「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする」(第12条)としていた。そして、改革の実施及び目標時期について、「必要となる法制上の措置については、この法律の施行後三年以内を目途として講ずるもの」(第4条)としている。

2.労使関係制度検討委員会

  基本法に基づき、2008年7月、国家公務員制度改革推進本部が設置され、10月には労使関係制度検討委員会が設けられた。09年3月、検討委員会の下に設置されたワーキンググループは、26回にわたり検討を行い、検討委員会の提示した「自律的労使関係の確立・協約締結権に関する主要な論点」の論点ごとに、「制度骨格に係る論点等に関する選択肢の整理」、「協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用について」の二つの報告を行い、検討委員会は09年12月、論点ごとの選択肢を整理した上で、選択肢の組合せの複数のモデルケースを提示した、「自律的労使関係制度の措置に向けて」をまとめた。

3.「改革の『全体像』」をベースに進む法制化

  2010年11月に発足した「国家公務員の労働基本権(争議権)に関する懇談会」の「報告」(12月)は、「協約締結権にとどまらず争議権の付与を検討することも、立法政策として許容される」としながらも、「広く国民の意見を聴く取組が不可欠」であるなどとして、「まずは協約締結を前提とした自律的な労使関係の樹立に全力を注ぎ、労使交渉の実態や課題をみた上で、争議権を付与する時期を決断することも一つの選択肢」として、スト権を先送りした。そして、政府は、「自律的労使関係制度の措置に向けての意見募集」を行い、本年4月5日の国家公務員制度改革推進本部で「国家公務員制度改革基本法等に基づく改革の『全体像』について」を決定した。現在、6月3日の閣議決定を目指して、@国家公務員法等の一部を改正する法律案、A国家公務員の労働関係に関する法律案、B公務員庁設置法案、C国家公務員法等の一部を改正する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(いずれも仮称)の法制化作業を進めている。

4.労働協約締結権の「付与」

  「改革の『全体像』」は、幹部職員人事の一元管理、国家公務員の退職管理の適正化、官民人材交流の推進など多岐にわたるが、いわゆる自律的労使関係制度の措置に関連しては、非現業国家公務員に労働協約締結権を「付与」することとしている。戦後まもなく一方的に奪われた公務員の労働基本権の一部である協約締結権を認めることは、一歩前進には違いないものの、本来、労働三権は一体で回復されるべきである。

5.「改革の『全体像』」の問題点

  しかし、他方、「改革の『全体像』」による自律的労使関係制度には、いくつかの問題も残されており、特に以下のような問題点については引き続き是正・補強していく必要がある。

@協約締結前の内閣による事前承認などは、交渉を尽くす前から結論ありきになる恐れがあり、自律的な労使関係を阻害しかねない。労使間で協議を尽くし、合意を見出すやり方を考えるべきである。

A協約締結権が認められる労働組合には、中央労働委員会の認証が必要だが、「団結権を有する職員が全ての構成員の過半数であること」を要件としていることは、団結権、団体交渉権を侵害する恐れがある。

B「団体交渉できない事項」として「国の事務の管理及び運営に関する事項」(管理運営事項)をあげているが、「管理運営事項」の概念は抽象的にすぎる。従来、当局が「管理運営事項」を恣意的に拡大し,団交拒否の口実として利用してきた経過もある。1994年のILO条約勧告適用専門家委員会報告は、雇用条件に関するものなど一定の問題を団体交渉から除外することは98号条約の諸原則に反すると指摘していることから、「管理運営事項」に関する規定は設けるべきではないし、仮に「管理運営事項」についての規定を設けるとしても、雇用条件・勤務条件とくに人事評価制度に関する事項を交渉事項に含めるべきであり、公務員労働者の経済的地位の維持・向上に関連する事項である限り、広く団体交渉の対象とするよう明記すべきである。

C団体交渉の議事の概要及び労働協約の公表について、その公表の時期や公表の仕方によっては、労働組合の団体交渉権に対する事実上の制約として機能するおそれがある。

D正当な組合活動の刑事免責について、正当な活動は当然に保護され、免責されるようにすべきである。

E使用者機関として位置づけられている公務員庁は、人事行政に関する事務の遂行に当たって、従来の人事院と同程度の中立性・公正性が保障されるのかが定かではない。また、協約締結権の付与及び使用者機関の設置に伴う第三者機関として人事公正委員会(仮称)を設置し、職員の勤務条件に関する行政措置要求、不利益処分に関する不服申し立てその他の職員の苦情の処理、職員の職務に係る倫理の保持、官民交流の基準の設定、政治的行為の制限等に関する事務を所掌させるとしているが、人事院と同程度の中立性・独立性が保障されることになるのかについてもはっきりしない。

F主な不当労働行為を法律上明記することや、不当労働行為が行われた場合の救済規定が設けられることは評価できるが、他方、救済機関となる中央労働委員会においては、公務労働の特殊性を十分に踏まえた委員による審査がなされなければ、不当労働行為からの実質的な救済は図れないおそれがある。

G「在籍専従の許可」および「短期従事の許可」を制度化するが、期間や更新のあり方など、詳細については、労使交渉の上合意によって取り決めるべきである。

H争議権の保障については、2010年12月に公表された「国家公務員の労働基本権(争議権)に関する懇談会」報告を踏まえ、「新たに措置する自律的労使関係制度の下での団体交渉の実情や、制度の運用に関する国民の理解の状況を勘案して検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」として、今後の検討事項にとどめている。しかし、憲法28条で保障された労働三権は一体的に措置すべきであり、真に自律的な労使関係を構築するため、協約締結権と同時に争議権の回復を決断するべきである。国家公務員の争議行為を全面的・一律に制限・禁止する現行国家公務員法の見直しが併せて行われることを求める。

I警察職員、海上保安庁職員及び刑事施設職員に対する団結権の制約は引き続き維持するものとしているが、憲法第28条は全くの留保なくすべての「勤労者」に団結権・団体交渉権を保障していることに照らして対応すべきである。

6.地方公務員等の労働基本権問題

  地方公務員の労働基本権問題については、別途、「地方公務員の労働基本権の在り方に係る関係者からの意見を伺う場」が設けられているが、国家公務員の労使関係制度改革を踏まえてそれと整合性を持つよう検討するというのでは遅すぎる。また、ILOやユネスコ「教員の地位に関する勧告」では、教職員の給与・勤務条件は労使交渉により決定されるものとされており、教育公務員に対する労働基本権の回復は国際的にもスタンダードであり、わが国においても労働基本権の回復が必要である。

7.消防職員の団結権問題

  消防職員の団結権問題については、1973年、ILO条約勧告適用専門家委員会から「団結権が認められるよう適当な措置をとることを希望する」旨の意見が出され、その後も同様の意見が繰り返されてきた。村山政権下の1995年6月、自治大臣と自治労委員長との合意に基づき、衆議院・参議院ともに全会一致で消防組織法が改正され、96年10月、消防職員委員会制度が創設され、2005年には意見取りまとめ者制度の創設などの改善が図られてきた。社会党・社民党は、「当面、当事者間の合意を踏まえて消防職員委員会の組織化及びその機能の発揮に努め、円滑な制度運用を通じて今後の問題完全解決に向けた足がかりにする」としてきたが、公務員制度改革に関連して、2001年6月、ILO基準適用委員会が「団結権を保障するための措置をとるよう希望」との報告書を採択し、2002年11月には、ILO結社の自由委員会において、消防職員への団結権の「付与」等の論点について、「公務員制度改革の理念及び内容について、この課題についてのより広範な合意を得るため、また、法令を改正し、結社の自由の原則と調和させる見地から、全ての関係者と十分、率直かつ有意義な協議が速やかに行われるよう強く勧告」する旨の報告が行われ、それ以降、同様の報告が繰り返し行われている。ILOの報告・勧告を放置できないとの問題意識の下で、鳩山政権になり、「消防職員の団結権のあり方に関する検討会」が設けられた。昨年12月の報告書では、団結権「付与」を明記しなかったものの、団結権を回復する場合の制度設計を示し、「消防職員の団結権に係る制度を具体化する場合には、一般行政職員の労働基本権に関する制度改正の内容を十分に踏まえた上で、併せて検討することが適当である」としている。消防職員の団結権・団体交渉権が回復することにより、対等な立場での労使の意思疎通がはかられ、目的意識の共有や公務能率の向上、消防職員の安全の確保、住民からの信頼の醸成につながると考える。今回の公務員制度改革を機に、「消防職員に団結権を保障すべき」との長年にわたるILO勧告を踏まえた対応を行うべきである。

8.憲法とILO勧告に沿った労働基本権の回復、民主的な公務員制度の確立を

  縦割り行政や独善性・閉鎖性及び政官業の癒着を是正するとともに、国民全体の奉仕者として良質の公共サービスを提供できるようにすることこそ、公務員制度改革の大きな目的である。片山総務大臣も「労働基本権は労働者のためのものであり、使用者の人件費削減のためにあるわけではない」と発言している。2001年12月に労働基本権制約を維持することを明記した「公務員制度改革大綱」が発表されて以降、2010年まで6度にわたるILO勧告が出されており、ILO勧告を踏まえ、公務労働者の労働基本権を回復し、国民のための民主的で透明な公務員制度への改革を進めるには、この機を逸してはならない。社民党は、憲法とILO勧告に沿った労働基本権の回復、民主的な公務員制度の確立にむけて奮闘する決意を新たにするものである。

以上

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