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社民党の政策

湯浅誠(派遣村村長・反貧困ネットワーク事務局長)福島みずほ(参議院議員・社民党党首) 

【福島みずほ対談】 湯浅誠さん

『月刊社民』(2007年11月号)より

割高で選択肢のない貧困状態の悪循環
そこを断ち切るのは社会の責任の取り方

■プロフィール
湯浅誠(ゆあさ・まこと)
1969年、東京都小平市生まれ。95年、東京大学法学部卒業。同年より野宿者運動に携わる。現NPO法人自立生活サポートセンター「もやい」事務局長。著書に『本当に困った人のための生活保護申請マニュアル』(同文館出版、2005年)『貧困襲来』(山吹書店、2007年)。近年は生活困窮フリーターなど国内の貧困問題に関する論文・発言に力を入れている。
反貧困と派遣切り 〜派遣村がめざすもの〜湯浅誠(派遣村村長・反貧困ネットワーク事務局長)
福島みずほ(参議院議員・社民党党首) 
出版社:七つ森書館 定価:1,400円+税

今年のお正月に日比谷公園で行われた派遣村、派遣切りにあった皆さんを支援しようという輪が大きく広がったことはご存じと思います。その村長をつとめた湯浅さんとの対談、そして「反貧困から社会連帯へ」(福島みずほ)、「中収入・中支出型の社会」(湯浅誠)という原稿も掲載されています。佐高信さんの推薦文「派遣切りという人間切りを許さない社会への道すじを示す」という言葉にあるように、派遣切りが労働者を人としてではなく、モノ扱いする派遣法の問題点も含めて、今何が起きていて、どうしなければいけないかを提起しています。是非、お読みください。

  ―福島みずほ:湯浅さんの『貧困襲来』(山吹書店)という本も読ませて頂きました。NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」の設立発起人で、事務局長として活躍されていらっしゃいますね。いつから始められたのですか。

●保証人問題を軸にした貧困問題への取り組み

湯浅誠さん 01年5月です。最初は任意団体で私と稲葉(剛理事長)の2人で始めました。

私はずっと野宿者の問題に取り組んでいたのですが、なかなか他分野との交流がありませんでした。しかし90年代、路上生活する人が増えてきて、その背後に、今で言う貧困層がたくさん出てきていると思っていたのですが、社会的には近い立場にあるはずのDV(ドメスティックバイオレンス)被害者の人たちと交流があるわけではなく、それをつなげる結び目をつくらなきゃと思っていたのです。活動の中で、そうした人たちの多くが保証人問題で困っていることが分かってきた。だったら保証人問題を軸に立てれば、必然的にそれぞれの活動の中で横につながるきっかけが生まれるだろうということでやり始めたのです。

東京で始まった自立支援事業や生活保護を利用して、就労自立という形でアパートに入ろうとする人が集団で出てきた時にも、多くの人がアパートの保証人問題にぶつかってしまうのです。そういう保証人がいない人間関係の貧困も、貧困問題だということで取り組んできました。

稲葉のほうは、主に新宿で生活保護を受けた人の寄り合いをやっていたのですが、孤立しているとどうしてもアパートから路上に戻ってしまうケースや、あるいはアパートの中で孤独死してしまう人が出る。そのため路上のつながりをメインにして90年代は活動してきましたが、アパートに入った人ともその後のつながりを維持するような関係をつくろうとしてきました。

  ―福島:もともと生活保護やホームレスなどの問題に関心をお持ちだったのですか。

湯浅 今でもそうですが、野宿者やホームレス問題が世の中で一番大事な問題と思っているわけではないのです。ほかにもいっぱい同じように重要な問題がありますが、それなりに長くやってきて、自分の力を発揮できるのはこの分野だと思っているのです。

●規制緩和がもたらした貧困の拡大を告発する

  ―福島:例えば、スポット派遣的な労働と住居提供がセットになった、一種の貧困ビジネスが発生している問題やシングルマザーの状況、ホームレスの状況など、現在出ている日本社会の問題点をどう見ていらしっゃいますか。

湯浅 いろいろ出てきた問題を一言で言えば、「貧困」というとらえ方をしています。これまではなかなか、そうした形でのとらえ方はされてこなかったと思います。それは70年代に新しい社会運動ということが言われて、それを引っ張ってきたのが女性と障がい者だと思いますが、それぞれのアイデンティティにこだわる運動が出てきて、それなりの必然性があった。だけど何十年かやっているうちに、みんなの背後に等しく貧困の問題が迫ってきていた。今、ちょうどそれに気づいて、みんなが驚いている状態だと思います。

貧困ビジネスについても、人材派遣会社の問題とか、あるいはサラ金の問題とか、個別の事柄は社会問題として認識されてきたけれども、それを貧困ビジネスとしてとらえる視点はあまりなかった。なぜかと言えば、いろいろな問題の背後に共通して貧困があるのだという視点でものを見ないと、貧困ビジネスの問題も出てこないからです。

しかも貧困ビジネスが出てきたのは、この間の規制緩和で、公的部門が責任を取らずに撤退していった隙間に貧困層が取り残されたという側面がありますから、そういう問題が連環して見えてきます。私としては、そこから見える社会を告発しているのです。

  ―福島:格差拡大の話を国会で何度も質問しました。特に小泉(純一郎元)首相に対しては(所得分配格差を示す指標である)ジニ係数について聞いたり、格差は拡大しているのか、していないのかとただしても「格差は悪いことではない」と。あるいは「格差は拡大していない」、「成功した人間を妬んだりうらやんだりする風潮はいかがなものか」と言われて、これは全然違うと思いました。この問題をどうにかしたいと思って駒村康平(慶応大学教授)さんに相談をしたら、格差は富裕層のライフスタイルが問題ではなく、貧困にターゲットを絞って質問をすべきだということを何年か前に言われました。その通りでカネ持ちは年金であれ医療であれ個人的に問題を解決できるのですが、問題なのは貧困のほうですから。

湯浅 自民党や政財界は意図的なのか、素朴にそう思っているのか分からないですが、格差問題と言うと上のほうの問題として、引きずり下ろす意見だととらえるわけです。

だけど本当に問題にしたいのは、おっしゃったように格差の下のほう、貧困まで至っている人のことだから、それをはっきりそういう言葉で話したらいいと思います。なかなか話しづらい雰囲気があったのも確かです。貧困という言葉は言われる人たちの中で、ある種の差別語のイメージがあって使われてこなかったところがあったのだと思います。だけどそれは思い切ってそういうふうに言わないと、いつまでも問題の焦点がごまかされ続けてしまうので、私はもっとはっきりと言うべきだという立場ですね。

●貧困の再生産は今、すでに始まっている

  ―福島:働く人の5人に1人が年収200万円以下で、貯蓄がない人たちも4人に1人いるという状況は、まさに貧困だと思います。湯浅さん自身が具体的にこんなことにショックを受けているとか、これは問題だと感じていることを話して頂けますか。

湯浅 問題だらけですね。去年、ホームレス第2世代という人に会いました。お父さんがホームレスで自分は養護施設で育ったのですが、施設を出た後、自分もホームレスになってしまったという21歳の男性でした。このまま放置していると貧困の再生産が始まってしまうと言われますが、私はすでに始まっていると思っています。

やはり家族関係がうまくいっていないとか、経済的に逼迫しているという家庭で育った人たちが、またさらに貧困になってしまう。きちんとした教育を受ける機会が得られず、非正規雇用になってネットカフェで暮らすようになる事態は、現実にかなり起こっています。

ついこの間も生活保護の申請をしたのは19歳の男の子で、彼は小学生の時に両親が離婚していて、中学2年生から不登校です。ほとんど社会生活をしたことがない。父親と一緒に住んでいるのですが、父親は彼との生活を支えるために、日給、月給の警備の仕事で月28万円を稼ぐような、めちゃくちゃな働き方をしていた。それでうつ病になって、2人とも生活できなくなったということで相談に来たのです。

そういう人たちがとても増えています。私が野宿者やホームレスの問題をやっていて考えていた、感じていたことが当てはまる人たちがどんどん増えてきた感じがします。

社会全体が地盤沈下してきた印象を受けますし、非常に危機的状況だと思います。貧困を生み出しているいくつかの問題、すなわち日雇いや派遣の問題、生活保障の問題にきちんと取り組まなければ社会全体の活力が決定的に失われていくと思っています。

  ―福島:例えば大学生でも、かつては社会勉強としてちょっとアルバイトするという感じだったのが、今は生計のためでしょう。

湯浅誠湯浅 大学に行けない人たちもかなり生まれていて、先日発表されたネットカフェに関する調査では、そこで生活する人の学歴は中卒と高校中退で4割、高卒まで含めると8割に達します。大学全入時代がくると言われていますが、実際には底辺のほうは大学に行くどころではない中で社会に出ざるを得なくて、しかも社会の側も今までのように、そうした人でもある程度生活していけるような多面性が失われてきている。今は小さな商店など、家族的経営のところは多くがつぶれて、(経営が成り立つのは)大きなスーパーとかパチンコ屋くらいです。そういうところで働いても使える間は雇ってくれるけれども、使えなくなったらクビを切られ、生活の心配など誰もしてくれないという状態が生まれている。全入時代で大学がどう生き残るかという話が一方にありますが、そこまで到達できない人たちが増えているという問題を、ちゃんと見ないといけないだろうと思います。

●全く実効性のない「再チャレンジ政策」

  ―福島:先ほどの19歳で生活保護を受けるという話ですが、例えば19歳だったら働けばいいじゃないかと言う人もいます。これは生活保護を受給する人にはすべて言われることでもありますが、それについてはどうですか。

湯浅 働けばいいと思います。ただ実際に働くまでのプロセスをどうつくっていくかというのは、とても重要なのです。例えば19歳の男の子は、電車の乗り方が分からなかったのです。

  ―福島:それは養護学校で全くおカネをもらわず、外出もしなかったのでしょうか。

湯浅 不登校で引きこもっていましたし、ほとんど社会生活をしていないのです。

自立と言うと、どうしても就労による経済的自立がイコール自立だと思われがちですが、生活保護のあり方検討会でも言われていたように、日常生活自立と社会生活自立の両方がその前段階としてあって、それまでにそういうステップを踏んでいかないと、現実には就労に手が届かないのです。しかし実際にはこのステップを飛び越して就労しろと言って押しつけていくのが、今の「再チャレンジ」に代表される政策なのです。何が問題かと言えば、とにかく良い・悪いという倫理的な問題以前に実効性がないのです。そんなことを言っても働けない。

  ―福島:確かに再チャレンジ政策は本当にふざけていると思いますね。

湯浅 そういうふうに就労すればできるはずだからと、はしごを外していくように生活保障を外してきたのがこの間の流れですね。女性の問題でも生活保護の母子加算が削られる中で就労自立するということは、つまりパートを2つも3つも掛け持ちして、命を削るように働くことになる。それによってその人のゆとりが大きくなったのかどうかを見なくてはいけないのに、むしろさらに追い詰められているのです。これでは生活保護を受給しなくなったからといっても、めでたくも何ともないわけです。

だけど生活保護から抜け出ることにポイントが置かれ、そうでなければそこで点数が稼げないような雰囲気が福祉事務所を含め、社会全体に生まれている。問題の大事なところから非常に外れたところで議論が始まっていると思います。

  ―福島:母子家庭の問題は国会でも幾度も取り上げていますが、おっしゃる通り、政府は09年春までに生活保護の母子加算を全廃するとしています。児童扶養手当も最後はどんどん削減していく。政府は、キーワードは就労支援と言っているのですが、他方、さまざまな形で労働法制を規制緩和して、働く現場を削ってきました。普通でもなかなか難しいのに、困難な状況で就労支援と言っても、現実とのギャップがあるからできないのです。泳げない人に足かせをつけて「泳げ」と言って海にぶち込み、溺れそうになっているのに「根性が足りない」とか、「練習が足りない」と言っているようなものです。それは社会の中にもう少しゆとりと言うのか、重構造でいろいろな仕組みが整っていなければ難しいのです。

湯浅 貧困であることでより厳しい状態に追い込む一方、はい上がってくることが本人の責任という雰囲気が出ていることが問題なのです。以前、おそらく若い男性だと思いますがブログへの書き込みに「自分は再チャレンジ以前で行き止まりです。職業訓練に行くおカネなんてない。生きているのも死んでいるのも同じだ」とありました。

たぶんそれが本当に人びとの置かれた状態なのだと思います。先ほどのネットカフェ調査でも日雇いの仕事が多くて転職したくても、実際に求職活動をしている人は4分の1しかいない。その理由を見ると、やはり日払いでなければ生活が続かないからと書いてあるのです。そういう中で「職業訓練に行く費用は3割助成しますので、行ってスキルを身につけて下さい」と言っても誰も行けない。そういう意味で生活保障を抜きにした再チャレンジは、とにかく予算の無駄遣いだということです。

  ―福島:日雇いでなければ生きていけないという点について、もう少し詳しく話して頂けますか。

湯浅 貧困状態は何よりも選択肢がなくなっていくのです。例えば、今日・明日、食べるためのおカネが必要な人にとって、常雇用を選ぶか日雇いの仕事を選ぶかという選択肢は現実には存在していないのです。常用の仕事を選んでしまったら最初の給料が入るのは1カ月先、あるいは2カ月先です。そこまでの生活がもたなければ常用の仕事を探すという選択肢自体が存在しない。ネットカフェで暮らしている人は、そういう状態に置かれているわけです。

ネットカフェに泊まるのは、安いアパートで暮らすことに比べれば割高です。でも割高と分かっていても、そこに泊まらざるを得ない。アパートに入る一時金が貯められないからというふうに、貧困というのはおカネがかかるのです。おカネを持っていないから使わないと思ったら大間違いで、貧困状態であればあるほど選択の余地がありませんから、割高と思ってもそれを買わざるを得ないという意味で、貧困は人より余計におカネがかかるので貯められない。だから(現在の)生活を打ち切れないという悪循環に入ってしまう。

それを誰が断ち切るかと言えば、そこは社会の責任の取り方です。今までは企業や家族が断ち切ってくれたから、国や行政は何もしなくても良かったのかもしれないけれども、今後はそうはいかない。企業も家族も支えられなくなってきていますから、そこで国が出て行かなくてどうするのだというのがわれわれの主張です。

  ―福島:政治というのは人びとが幸せになるための仕組みをつくることですが、どういう観点からそれをつくっていくのかが問われる。日本は国民皆保険と言われますが、約5000万人が保険未加入のアメリカに近づいていっている。私は利権まみれの政治もおカネの分配もばらまきも良くないと思うけれども、それにも増してみんなで支え合う社会が壊れていることに恐ろしさを感じます。

●貧困の問題も社会的に共有されていくことが大事

湯浅 怖いですね。単純に、このままいったらどうなるのかという不安はみんなが持っているのだと思います。先日、厚生労働省の人と話をしていたら、お役人も「このままいったら日本はどうなっちゃうのだろう」と。あんたが言うかと思ったけれども。その人たちですら、そういうふうに言う状況なのです。

その不安はかなり広く蔓延しているけれども、それをどうやって形にするのかというところに壁がある。では集会やデモに行くかと言うと、それはそれで飛び越えられない溝があって、飲んでいる時や家庭の中では愚痴を言ったりするけれども、そこから一歩踏み出せない。そのストレスが社会にどんどんたまって膨らんでいっている気がします。

それはやはり運動をやっているわれわれの側の責任を感じます。そこを脱却できるような今までとは違った、もっと参加しやすい運動を生存権という分野でも構築していかないと、このストレスはたまっていくばかりで、社会に対してどうするのだという異議申し立ての力になかなかなっていかない。最近、(多重債務や労働、福祉問題に取り組む人びとでつくる)「反貧困ネットワーク」の運動をやり始めましたが、そういうところが一番追求していきたい課題です。

  ―福島:社民党も非正規雇用フォーラムをつくって、全国ユニオンなど労組の人たちといろいろ取り組んできました。韓国の非正規雇用センターの視察もしました。日本の労働運動も、例えば私鉄総連なども非正規雇用の問題は重要だと取り組んでいる。正規雇用の道を切り開くことと、非正規のままでも労働条件をいかに良くするかの両方が必要だけれども、今ある組合が自分たちの春闘の中にこれらをきちんと位置づけて、とても重要な課題として闘ってくれることは意味があるのではないでしょうか。万全ではないけれども、日本の労働運動にも変えていこうと思っている人たちがいることも事実だと思います。

湯浅 それは分かります。7月に労働者福祉中央協議会(中央労福協)の役員会で話をしたら、それ以降、各地の労福協で話をしてくれと呼ばれるようになりました。それは彼らもこれからつくっていく地域単位の相談センターで、貧困の問題も織り込んでいかなければいけないと思っているからでしょう。

そういう意味では、問題を肌身で感じているのだと思います。そこは例えば、派遣ユニオンや首都圏の非正規の労働組合が元気になる中で、組織全体でもそういう問題がもっとやりやすくなるように組み換えて、今までとは違った柔軟性を持っていくことが、だんだん期待できるようになってきているのではないかと思います。

何だかんだと言っても連合は700万のとても大きなグループだし、そこが動くか動かないかは、かなり決定的ですからね。その意味で、そうした組織への働きかけはあきらめずに続けていかなければならないと思います。

福島みずほ  ―福島:雨宮処凛さんとの対談本『ワーキングプアからの反撃』の出版記念パーティーやったのですが、ホームページに告知を載せたら当事者の人たちから問い合わせがあり、来てくれて「福島さん、こういうことをやって下さい」とものすごく激励を受けました。私はあらゆることを、むりやり政治的な動きばかりにしていくと、現場の自由さが損なわれる気がしますが、ただ、政治の仕組みを変え、政策の変換を求めていかないと、1人や10人で頑張るというのもなかなか難しいわけです。
だけどその時に、必ず当事者からの多くの異議申し立ての声がちゃんとないとおかしいと思うのです。それをこれからどうしていくか。端的に言うと特に社民党は非正規雇用問題に取り組んできたけれども、だからと言って若い人たち、中でもワーキングプアとその予備軍が社民党に(政治を)託してくれるかと言うと、なかなかつながっていかないのです。フランスのような異議申し立てにはなかなかならない。アメリカでも最もプア・ホワイトと呼ばれる人たちが共和党、ブッシュ政権を支持するという構図がありますが。

湯浅 それはある意味で、政治への期待が持ちづらくなってきているのだと思います。特に雨宮さんに代表されるような就職氷河期世代は、変な希望は持っていないですね。

このまま社会でやっていけば、おカネ持ちになるとか、結婚できて家が持てて自家用車が持ててという希望を持たされていないことがむしろ希望で、そんなものはウソっぱちであると。それでも自分たちが生きていくために、どうやっていけばいいんだということです。彼らが直接、政治に結びつくかどうかはともかく、いろいろなところで異議申し立てを広めて、それが社会的に共有されていくことが大事で、政治はそのことを無視できなくなるはずですからね。

ネットカフェの問題もそうでしたが、あれだけマスメディアが騒いで社会的な問題になってしまえば、大臣だって「あの問題は大したことはない」と言えない。どんな対策が出るのかについてはかなり不安をもって見ていますが、何もやらないわけにもいかない。そういう形でプレッシャーをかけていくことが、われわれのような在野のNGOなりNPOの役割だと思います。

●労働者の生存権守るには政治が介入すること必要

  ―福島:グッドウィルとフルキャストの問題も今まで3回、厚労省交渉をやりました。4回目もやろうと思うのですが、そういう積み重ねも重要だと思っています。

湯浅 重要ですね。

  ―福島:それから偽装請負が問題となった日野自動車とキヤノン宇都宮工場に社民党は視察団を送りました。ご存知のようにこの2社は、一部の非正規労働者を期間の定めをつけて直接雇用すると発表しました。期間の定めのない正社員にしてほしいと思うけれども、一歩前進です。彼らが声を上げたことで、100%の解決にはならなくても、少しずつ前進しているのです。

湯浅 例えばグットウィルも、そんなに大きな組合ではなく、特に始めた時は小さかったのですが、あれだけの大会社を相手に転換をさせてきた。フルキャストも同様です。彼らは今、やればそれなりにできるという手応えを持っていると思います。

結局、現場でやられていることはメチャクチャなのです。法律以前の、さんざん違法なことをやっているので、まだ法律をタテにすれば勝てる。

その意味では労働基準法をはじめ基本的な法律や憲法が改悪されようとしているのが危機的ですが、少なくとも今は法律をタテにすれば勝てるという状況があって、そういう中でそれなりの成果を得てきている。今度はそこで日雇い派遣そのものをどうするのか、あるいは日雇い派遣で暮らしている人たちが生きていけるために政治は何をやるのか。例えば厚労省は、日雇い雇用保険の問題を真剣にやってくれないと生きていけない。

  ―福島:雇用保険の確立がないままフルキャストを業務停止にしたので、みんな困ったわけです。ようやく厚労省は1日単位のスポット派遣の労働者にも日雇い雇用保険を適用すると打ち出しましたね。

湯浅 今回の問題は、フルキャストが悪いと言って済ませられない側面がある。もちろん財界がやり放題やっているところに大きな問題があるけれども、それにきちんと介入できない政治の弱さが問題です。そこも合わせて焦点化していかないといけないのではないかと思います。

  ―福島:宇都宮労働局がキヤノンに偽装請負の是正指導を行ないましたよね。大野(秀之・キヤノン非正規労働者組合宇都宮支部長)さんたちが労働局に書面を持って行く時は足が震えたと聞きますが、それはやはり大キヤノンにタテつくという感じなのですね。御手洗(冨士夫キヤノン・日本経団連)会長は『朝日新聞』が偽装請負のキャンペーンを張ったら広告を全部引き上げたと聞きます。御手洗会長に会うと、「福島さん現場に来て下さったそうですが、誤解があるようなので現実を見て下さい」と言われました。でもそれでも変わらざるを得ないですね。

湯浅 彼らは自分のやっていることと法律が合わなければ法律を変えてしまえという発想なのです。

  ―福島:宇都宮工場でつくづく思ったけれども、請負をやっていて、問題があるとなったら派遣にして、また請負に戻しているのです。そして今度は請負でも指示が出せるようにしたらどうかと言い始めている。彼らが言っていることは、まさに自分の足元の工場のことではないですか。自分たちがいかに人を自由自在に安く使えるかという視点で、法律を書き換えているということを実感しましたね。

湯浅 そうですね。彼らは二言目には「そういう状態で働いているのは自己責任だ」と言うけれども、本当は自分たちこそ自己責任を適用されるべきで、こういう社会にしない選択ができたはずです。ところがあえて非正規を増やして使いやすいようにしてきて、その結果、やむを得ずそういう仕事に就いた人に対して自己責任を振りかざす。そうではない社会も実現可能だったはずなのに、そうしてきた自己責任は経営の側にこそ問うべきだと思います。完全に使われ方が逆転しているのです。

  ―福島:個別資本としてカネ儲けしたいのは分かるけれども、総資本の立場からしても、こんな社会をつくったら子どもは産めず少子化になるし、生活保護受給者は必然的に増えるし、社会が別の形でコストを払わなくてはいけないわけです。考えればみんなに税金や保険料を払ってもらい、安定した暮らしをしてもらって、もう少し幅が広くなるほうがいいわけです。格差があって縦に貧困層が増える社会は不安定ですし、個人もアンハッピーです。個人の尊厳と他人を排除しない社会、すなわち社会民主主義的な共に生きる社会のほうが強い社会だと思っています。

湯浅 私もそう思います。

  ―福島:参議院が与野党逆転しているので、社民党としては時給1000円以上を実現したいと思います。もちろんこれは中小企業経営者の人たちから若干不満が出るとも思いますが、経過規定を設けてもいいし、時給1000円以上で年収200万円以下をなくすことを、1つのキャッチフレーズにしてやっていきます。あるいは全国ユニオンの人たちから言われているのは、登録型派遣をやめてくれ、と。これをやれば日雇い派遣がなくなるから。労働者派遣法は今まで規制緩和をされてきたけれども、初めて規制を強化する。現場の元気と異議申し立てを政治的な課題として解決するようにと思っているのです。

湯浅 そうですね。完全に民間に任せておいたら1円でも安く働いてくれる人がいいに決まっているので、それは政治が介入しなければ労働者の生存権は守られないですね。そこでどういう介入をしていくのか、おそらく国会でのせめぎ合いになるのだと思いますが。

そういう意味では流れが少し変わりつつあると思います。まずは日雇い派遣労働者への雇用保険適用から始まって、日雇い派遣そのものの規制、またそれでかえって食べられない人が出てくると思いますので、そこも追いかけてほしい。

  ―福島:つまり製造業派遣や登録型派遣を認めないと、短期的には大変になってしまうということですね。

湯浅 そこは一方的に業務停止だけをするということではなくて、手当てを考えつつやっていくしかないと思います。

  ―福島:国会でも問題の所在がまだぼんやりとしていて、ようやく始まったばかりです。政策展開を徐々にやっていけるように頑張りたいと思います。

湯浅 貧困の問題は、社民党も引き出していただきたいと思います。

  ―福島:今日はありがとうございました。

 

【対談を終えて】= 湯浅誠さんとは「自由と生存メーデー」や「反貧困」集会など、さまざまな集会でお会いしてきました。現場から着実に活動をしている頼もしい人です。
現在、2001年に発足したNPO法人自立生活サポートセンター・もやいの事務局長として、広義のホームレス状態にある人びとにアパート入居時の連帯保証人提供と生活相談・交流事業を行なってらっしゃいます。
メールでの相談も受けつけているようで、湯浅さんは集会で、若い人たちの命を断ち切られるような生活、切実な状況や声をよく語ってくれます。
「貧困問題」は、きちんと取り上げなければ社会の問題としてなかなか認識されません。たまたま生まれた「陰」などではなく、構造改革の結果であると声を大にして言いたい。
飄々と動く湯浅さんからは、激しい怒りが伝わってきます。お互い体を壊さないようにやっていきましょう。(福島みずほ)


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