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グッドウィルユニオン委員長に聞く 若者の雇用劣化

【特集】グッドウィルユニオン委員長に聞く
若者の雇用劣化

日雇い派遣大手のグッドウィルが7月末で廃業した。
違法派遣などを繰り返してきた同社に対する派遣事業許可取り消しが確実になったことを受けたものだ。労働者派遣法見直し論議のきっかけにもなった日雇い派遣問題や典型的な若い世代の労働環境について、グッドウィルユニオンの梶屋委員長に聞いた。


・グッドウィルへの本社前での抗議行動(2007年7月)
斎藤貴男さん、湯浅誠さん、雨宮処凛さん、関根秀一郎さんらが発言しています。

つながる仲間をつくり、雇用の劣化をくい止めたい。

――グッドウィルユニオンは、この間、データ装備費返還訴訟に立ち上がり、日雇い派遣の違法や劣悪な労働条件を次々と明るみにしてきました。

梶屋大輔・グッドウィルユニオン委員長 廃業に追い込んだきっかけの1つは、2007年2月に起きたグッドウィルにおける違法派遣での労災事件です。グッドウィルユニオンの組合員になったKさん(27歳)は、グッドウィルから派遣され、東和リースを介して、港湾労働を仕切っている笹田組に二重派遣され、三井倉庫で、派遣が禁じられている港湾労働をしているときに荷崩れに巻き込まれて左足のひざを脱臼骨折しました。

二重派遣が明るみに

1袋25キログラムの脱脂粉乳を1日中パレットに積み上げていく作業で、5個×8段=40個積むと1セット、ちょうど1dになります。1セットごとに大きなラップを巻き、別の人が、フォークリフトでほかのセットの上に重ねます。それを2段から3段積み上げるという不安定な状態にありました。

Kさんは、06年9月からその倉庫で港湾労働をしていました。07年2月9日、昼休みを終えて現場に戻ると、昨日積んだ荷物が荷崩れを起こしていたため、午後1時から片付け始めて、2時半ごろに仕上げの掃き掃除をしていると、後ろから1dのパレットが左ひざを直撃し、荷物に埋もれたのです。助け出されたとき左足の足首が逆側を向いていました。ひどい事故なのに救急車を呼んでもらえず、会社の車で病院に連れていかれました。日雇い派遣の労災事故の相談を聞いていますが、多くが救急車を呼んでもらえません。

この事件がきっかけになってグッドウィルに港湾労働、二重派遣が発覚しました。グッドウィルは、今年1月に2〜4ヵ月間の事業停止命令を受け、6月には労働者派遣法で禁止されている港湾業務への二重派遣を行なっていた問題で、支店長たちが職業安定法44条(労働者供給事業の禁止)ほう助の容疑で逮捕されました。

――日雇い派遣問題を切り口に、規制緩和を繰り返してきた労働者派遣そのものの見直し議論も進んでいますが。

梶屋 秋の臨時国会で与野党共に労働者派遣法の改正案を提出するようですね。舛添厚生労働大臣も「日雇い派遣の禁止」に言及するようになりました。選挙を意識してのことかもしれませんが、そういう世論を気にするようになったことも成果だと思います。

労働者派遣見直しを

今後は、派遣法をどう改正するかが問われることになります。日雇い派遣のような働き方が広がったのは、99年の派遣法改正による派遣対象業務の原則自由化の結果です。派遣法を制定した当初の趣旨に戻って、派遣対象業務は専門性の高い業務だけに限るべきです。日雇い派遣だけが問題なのではありません。仕事があるときだけ雇用契約を結ぶ「登録型派遣」は原則禁止すべきです。ピンハネに歯止めをかけるためには、ピンハネ率(マージン率)の上限をきちんと規制することが重要です。若い世代や女性を中心に派遣のような間接雇用、都合よく使い捨てようとする有期雇用が広がっています。派遣法改正と併せて、合理的な理由のない有期雇用も禁止してほしいですね。

――ご自身は、どんな働き方をしてきたのですか。

梶屋 就職活動に失敗して、大学在学中からアルバイトを頑張って正社員になる道を探りました。4年生の時は、ケーブルテレビの営業とバイク便の仕事で週6日働いて、週1日ゼミに行くという生活でしたが、この2つの仕事で長く働くのは無理だと思いました。

卒業後は、紹介予定派遣で精密機器の営業の仕事をしましたが、派遣期間終了の半年で適性がないとのことで、クビになりました。06年4月からは、引きこもっている人の再出発を支援するNPO法人、ニュースタート事務局で働くようになりました。いい経験をさせてもらい、住み込みで部屋代はかからないのですが、月給10万円なので、このままの状態で長く働くのはキビシイです(笑)。

労働組合があれば…

――6月に秋葉原で起きた無差別殺傷事件で逮捕された容疑者は派遣労働者でした。

梶屋 容疑者と私は同じ年齢です。彼は仕事をいろいろ変わっていました。私も今の仕事が見つかっていなかったら、同じような職歴になったと思います。工場での製造派遣を繰り返していたら、彼のような感情になっていてもおかしくありません。

もう1つ共通していると思うのは、彼女ができれば人生観が変わるだろうという発想です。私も学生のころ、彼女ができないことに執拗(しつよう)なコンプレックスを持っていました。そのことによる自信のなさが自分の根底にあって、就職活動をはじめ何に対しても悲観的になっていた時期もありました。

 昔から貧乏な人はいたといっても、原体験が貧乏だったり、貧乏が身近だったのではないでしょうか。でも、今は私も含めて原体験がある程度豊かなので、貧乏の耐性がないのと同時に昔と比べてこの先世の中が良くなって、頑張っていたら生活水準が向上するという見込みもない。

自分が育った環境をベースに将来を漠然とイメージするから、それより厳しい生活を生きていかなければならない現実に直面したとき、現実を避ければ引きこもる。現実を受け入れて、悪質な労働条件や環境でまじめに働いていても希望や展望が持てない。

秋葉原の事件は、個々人が自己責任という言葉でバラバラにされ、自分のことしか見えないようにされていること、不満をため込んで自暴自棄にならざるを得ない社会の構造が背景にあると思います。単純な処方せんはありませんが、大きな原因は雇用の劣化ですから、対処の1つとしては、格差を縮めて、単純作業や代替可能といわれる仕事をしても遜色(そんしょく)なく生きていける給料が得られるようにすることがあります。

事件のことを聞いたときに思ったのは、あの工場にフリーター労組なり個人加盟のユニオンがあれば何かが違ったかもしれない、ということです。つながり合う仲間をつくって、間接雇用や有期雇用を拡大し放置している国の運営を変えるような運動を続けていきたいです。

かじや・だいすけグッドウィルユニオン委員長■日雇い派遣問題に攻め込むグッドウィルユニオン委員長
梶谷大輔( かじや・だいすけさん)
1982年、兵庫県生まれ。就職活動で大きくつまずき、アルバイトを経て正社員になる道を探ろうと、大学在学中からケーブルテレビの営業やバイク便の仕事にいそしむ。卒業後、紹介予定派遣で営業の仕事に就くも、半年で解雇。2006年4月より、引きこもっている若者の再出発を支援するNPO、ニュースタート事務局で働く。同年より、フリーター全般労働組合の活動に参加。07年3月に結成したグッドウィルユニオン委員長を務める。反貧困ネットワーク副代表。

 

 

 (社会新報掲載記事08年8月6日号 聞き手=ライター・清水直子)


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