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秋葉原の無差別殺傷事件を考える

【特集】秋葉原の無差別殺傷事件を考える

NPO法人ニュースタートがシンポ
勝ち負けを超える希望宣言

「希望は、戦争。」の赤木智弘さんら発言

6月8日、東京・秋葉原の歩行者天国で起きた無差別殺傷事件から、もうすぐ2ヵ月が経とうとしている。容疑者は自動車メーカーの下請け工場で働く元派遣社員の20代の男性。容疑者の男性は何が原因で、また何に絶望して、あのような凶悪な犯行におよんだのだろうか? 共同生活寮や仕事体験塾など独自のシステムで、ひきこもりやニートの若者の自立を支援するNPО法人ニュースタートが、若きパネリストを招いて「勝ち負けを超える希望宣言」のシンポジウムを都内で開催し、事件の真相に迫った。

社会に対する復讐だったのか 自分切捨てず生きる場あれば

◆訴える相手いない

 通行人ら17人が死傷した同事件の背景を探る時に、忘れてはならないのが日雇い派遣の問題だ。昨年、論壇誌『論座』に「『丸山眞男』をひっぱたきたい 31歳フリーター。希望は、戦争。」の論文を発表した赤木智弘さんは、今回の無差別殺傷事件の容疑者は、怨むべき対象が具体的にいなかったため、結果として社会への復讐(ふくしゅう)心が増大していったのではと述べる。

赤木智弘さん
・ 赤木智弘さん

 「工場で派遣労働社員として働いていると、リーダー的な人も実は派遣社員だったりして、工場の責任者がどこにいるのか分らない。容疑者が働いていたのはトヨタの下請け工場でしたが、もちろんトヨタの正社員がどこにいるのか実感として捉えることもできなかったはず。つまり派遣労働者という立場にいた容疑者は、何か職場でトラブルがあったとき、あるいは自分の人生につまずいたときに、それを明確にすることができなかったし、訴える相手がいなかった。だから社会に対して復讐するしかすべがなかった。では社会というのは何かというと、私たち人が作ったもの。だから社会への復讐は、結果的に誰でもよかった。そんな気持ちから無差別殺傷に走ったように思います。とにかくこの事件で残念に感じたのは、容疑者より所得の低い若者が殺されてしまったということです」

 しかし、仮に容疑者に自分の生活を保つ金銭的な余裕があれば、犯行を起こさずにすんだ可能性もあったと赤木さんは指摘する。

 「派遣労働社員というのは、職場を転々とさせられることが多く、移動するためにお金がかかります。しかも転々とするので職場で友達をつくることもできません。つまり生活のベースができず、お金を貯めることもできなかった。容疑者が常にこだわっていた“彼女がいなかった”ことも、結局仕事以外にベースになるものが欲しかったからではないでしょうか」

◆貧困が原因なのか

 ニュースタート事務局の中本英彦さんは、容疑者が自分の価値観を変えてくれるコミュニケーションの場がなかったのではと指摘する。

中本英彦さん
・中本英彦さん

 「容疑者の携帯への書き込みを見ると、1300円の時給で働いていて、趣味の車にもお金を使っていた。だから本当に貧困だったのか僕には分からない。しかし彼の仕事の辞め方については気にかかる。職場を辞めるときに何も言わず無断で辞めてしまい、他の職場に移ってしまう。そんなふうにしか辞められないのは、コミュニケーションの問題かもしれないし、そのやり方が分からずにずっときたんだな、とも感じる。いずれにしても真面目に働いてもそれを受け入れてもらえる場、何かあったときに支えてもらえるシステムが、彼にはなかったようにも思います」

◆勝ち負けではない

 女性の視点からも発言が上がった。組合形式の編集プロジェクト「フリーターズフリー」を展開する非常勤公務員の栗田隆子さんは、今回の事件は女性よりも同年齢の男性のほうが関心を強く示し、容疑者に対して厳しい目を向けていた、そんな周囲の反応が気にかかったと語る。

栗田隆子さん
・栗田隆子さん

 「考えてみれば通り魔殺人事件を起こすのはなぜか男性で、女性が犯人であるというケースがほとんどありません。“女性問題”というものがあるのなら、この事件の本質は“男性問題”と言えるものなのかもしれない。

 また容疑者は自分の顔がハンサムじゃないと思っていましたが、私は容疑者の写真を見て“この顔普通じゃん”と最初に思った。

 つまり“この顔普通じゃん”という声が彼には届かなかった。言い方を変えれば、そう言ってもらえる環境が彼にはなかったのではないでしょうか。“関係の貧困”という言葉がありますが、こんなささやかな声ですら聞こえない場所に彼はいつもいた……彼は一体どこにいたんだろうと考えます」

 今回のシンポジウムのタイトルは「勝ち負けを超える希望宣言」。タイトルをつけたのは中本さんだ。

 「タイトルをつけるにあたって自分なりにこだわりはありました。人間は知らない間に勝ち負けを求めているし、日々の中で経験している。容疑者も自分のことを負けっぱなしの人生だと思っていた。だけど一番大切なのは、仲間や人の役に立っている実感があることだと僕は思っている。人間は一人では生きていけるものではなく、どこか自分の片足を乗せられる場所を必要としているものです。

 この春先に女子アナウンサーが自殺をしました。外から見て明らかに勝ち組と思われる人でも自ら死を選んでしまった。だから勝ちとか負けとかではなくて、自分を切り捨てることなく生きていく場があること。それが何よりも大切だと思うのです」

(社会新報掲載記事08年8月6日号・西山由美)



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