2013年9月2日/社民党政審

東京電力福島第一原発の汚染水問題について

 

1、8月19日、東京電力福島第一原発の放射能汚染水を入れたタンクから、高濃度の汚染水が漏れ出していたことが分かった。当初、東京電力は漏れた汚染水は0・12トンと発表したが、後に漏出量は約300トンに及び構内を通り海洋に流れ出していたことが判明している。原子力規制委員会は、この事故を国際的な原子力事故評価尺度(INES)でレベル3(重大な異常事象)相当と評価し、8月28日に国際原子力機関(IAEA)に通報した。

2、その後の調査で、汚染水が流出した貯蔵タンク近くで作業をしていた東京電力職員の被曝線量が7月9日前後から上昇していたことが分かっている。汚染水の漏出が1月近く前から続いており、東京電力がその兆候を見逃すか、隠していた可能性が高い。別のタンクからの漏出も見つかり、東京電力のずさんな汚染水処理の実態が白日の下になった。

3、汚染水が漏出したタンクはボルトで締め付けるだけの単純な構造で、そもそも5年ほどの耐用年数しかない。福島第一原発には同型のタンク350基を含む約1000基のタンクが設置され約35万トンの汚染水が保管されている。東京電力は社長直轄の「汚染水・タンク対策本部」を立ち上げ、パトロール体制の強化や水位計の設置、より頑丈な溶接型タンクの増設等の対策を打ち出したものの、今後もタンクからの汚染水漏出が続く可能性が高い。

4、タンクからの漏水とは別に、流入する地下水による汚染も深刻化している。東京電力の説明によると、福島第一原発の周辺に毎日1000トンの地下水が流れ込んでおり、そのうち300トンが高濃度の汚染水が検出された坑の近くを通って海に流れ出ている。残り700トンのうち400トンが原子炉建屋の地下に入り、うち300トンは汚染されずに出ているとのことである。(※8月23日、東京電力は地下水流入量を800トン/日に下方修正し、海洋への流出量を600トン/日から400トン/日に下方修正する試算を公表した。)

5、東京電力は参議院選挙開票日の翌日(7月22日)になって、汚染された地下水が海に流出していたことを認めたが、その説明は二転三転して市民の不安を助長している。東京電力は1日140トンの地下水を汚染前に汲み上げて海に流す「地下水バイパス」によって海への汚染地下水流出を止められるとしているが、300トンの流出が140トンの汲み上げで防げるのかも疑問である。

6、さらに、2011年4月に福島第一原発2号機の東側から基準値の2000万倍という超高濃度汚染水約520トンが海に流れ出た際に、ガラス固化材などで流出を止めた原子炉建屋と海をつなぐトレンチ(排水溝)にも約5000トンの超高濃度の汚染水が残されていると推測されている。汚染水問題の暫定的な切り札とされた最大75万トンまで貯められる汚染水プールでも、4月に防水シートからの汚染水漏れなどの事故が続いている。

7、安倍首相は汚染水の処理について「東京電力に任せるのではなく、国としてしっかりと対策を講じていく」としており、茂木経産大臣も「東電任せでは解決は困難。今後は国が前面に出る」として、国として汚染水対策に取り組む方針を明確にしている。経産省は局長級ポストの「汚染水対策監」を新設し、福島第一原発に常駐する職員を増やす。また抜本対策として、原子炉建屋に流れ込む地下水を減らすため、原発施設を取り囲むように土を凍らせて流入を防ぐ「遮水壁」の工事費用を来年度予算に盛り込む方針だ。予備費を投入して前倒しすることも検討されている。

8、東京電力にこれ以上、汚染水対策を任せることはできない。国が前面に出て、責任を持って対策にあたるべきだ。しかし、東京電力は事故の対策経費を抑えるため、常に事態を過小評価し続けて責任がある。事故直後に汚染水の海洋流出が露見した段階で、馬淵首相補佐官(当時)が新たな地下水の流入を防ぐための遮水壁の建設を求めた際も、東京電力は費用がかかりすぎるとして無視した経緯がある。国が責任を持つとしても、これまで東京電力がサボタージュしてきた遮水壁の建設費を税金でまかなうことには疑問がある。

9、福島第一原発事故の責任は東京電力にあり、事故処理に係わる費用は除染や賠償の費用と同様に、資産の売却、経営陣の報酬削減やリストラの徹底など東京電力自身の努力によってまかなうべきだ。東京電力が負担できないのであれば、法的な破綻処理を行ない株主や債権者等のステークホルダーの負担を求めるのが次の手段だ。それで足りない場合にはじめて電力需要者(電気代の値上げ)税金の投入を検討する可能性がある。東京電力は7月に、課長級以上の管理職5000人に一律10万円の一時金を支給するなどしており、株主の権利や銀行の貸金も完全に守られている。いきなり国民に負担を回すのは、まったく理不尽であり、到底認めることはできない。

10、野党が求めてきた衆院経済産業委員会の閉会中審査について、政府・与党は原子力災害対策本部がまとめる汚染水対策の基本方針を見極めてから調整するとして、9月中旬以降に先送りすることを決めた。9月7日の国際オリンピック委員会(IOC)総会前に、国会審議を通じて事故の深刻さが世界に伝わり、オリンピックの東京招致に影響を及ぼしかねないとの判断もあったとされる。しかし、一刻を争う汚染水問題にフタをして国会の機能不全を露呈することは、かえって悪影響を与える可能性が高いのではないか。国会で、正々堂々と議論し政府の対策の有効性を示すことが、世界の不安を払拭する最善の方法である。

11、海外メディアは、汚染水問題を大きく報道している。英・インディペンデント紙は「日本政府は原発閉鎖の費用や複雑さを過小評価し、東電も問題を組織的に隠してきた」との専門家の発言を紹介し、米・ウォールストリート・ジャーナルは「東電は原発内の冷却水の流れを制御できなくなり、状況が悪化している」と指摘している。原子力改革監視委員会(東電取締役会の諮問機関)のクライン委員長(元米原子力規制委員会委員長)は、「東電は場当たり的な対処を繰り返すのを止め、効果的な管理体制を築かなければならない」と批判している。汚染水の影響を受ける可能性のある近隣諸国の声はさらに厳しい。「安倍晋三首相は依然、原発再稼働を公言している。これは固執し、反省せず、過ちを認めぬ日本当局の姿勢を反映している」(香港・文匯報)といった厳しい批判にも誠実に耳を傾け、情報公開を徹底しながら、国内外の英知を結集して対策にあたっていくことが必要である。

以上

 



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