HOME政策>【特集】洋上風力発電

大規模洋上風力発電

九州大グループが研究開発へ
1ユニットで原発1基分の発電 低リスク・低コストで実現可能

今年の7月は、洞爺湖サミットが開かれ、日本は世界に率先して温暖化効果ガスCO2の排出削減策が求められている。しかし、福田政権からは抜本的な解決策は出てこない。脱化石燃料・脱原発で、研究から開発へと進んできた、1ユニットで原子力発電1基分の発電量に相当する100万キロワット級の大規模洋上風力発電の現状を伝えよう。

 欧米では、CO2削減のため、100万キロワット級の大規模な風力発電が陸上や洋上で稼働中、もしくは計画中だ。一方、日本は経済産業省やNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が現在、風力発電の年間総発電量100万キロワットを2020年で600万キロワットにする目標を策定中だが、実現性は不透明だ。陸上での風力発電は国土が狭く、比較的風力が小さい上に地震が多く、その耐震コストも高い。山上では設置点が拡散する上、施行が困難で建設コストが高い。平地では人口密度が高く騒音問題などの社会的制約があるなど、大規模風力発電の普及には限界がある。

 一方、海は利用面積が広く、比較的風力条件や地震に強く騒音問題も少ないため、「大規模洋上風力発電」の潜在的可能性が高いと言われている。経済産業省は、09年に洋上風力発電のパイロットプラント(三菱重工など10億円規模)に着手するという段階。三菱重工は、風力発電を07年5月段階で3858基、双発電力374万キロワットを世界から受注した国内トップ企業。しかし、洋上風力発電開発は進んでいない。欧州の洋上風力発電所は、(1)比較的遠浅の立地条件に恵まれ(2)海底地盤も堅牢(けんろう)であり(3)地震が少なく(4)偏西風などの風況条件も良好------のため、着底(固定)式の大規模洋上風力発電が普及している。

 日本では、(1)〜(4)の条件が悪くその上、(5)初期コストが採算分岐点といわれる1キロワット当たり25万円を上回る40万円以上もかかり(6)耐用年数が30年以下と短く、費用対効果が低い。しかも(7)沿岸漁業への悪影響があり、着底式は適合し難い。このため、鋼製の浮体方式が着目され開発されつつある。しかし、この方式でも(4)〜(7)が大きな障害となっているのが現状だ。

他の発電と比較し格段の優位性誇る

脱原発の切り札

 そこで、洋上風力発電に希望をもたらす技術を開発したのが九州大学SCF(第2世代カーボンファイバー)研究グループだ。軽くさびず、張力に強いカーボンファイバーは、これまで溶接できなかったのを格段に強度と接合能に優れたものとして開発し、製造用のロボットまで開発した太田俊昭・九州大学名誉教授を中心に九大教授など30人が共同研究している。

 同グループでは、風力発電の土台となる浮体を第2世代カーボンファイバーで組んだコンクリートで軽量化を図るとともに、さびて30年しかもたない鉄より長い100年もの耐用性を証明した。土台の形状も中抜き六角形を高減衰機能のジョイントで連結したハチの巣クラスター方式を採用。実用段階では中抜き土台の直径は500メートル以上となり、中からプランクトンを誘う青色LEDを出して養殖漁ができるようにしたことで、沿岸漁業との両立を図る。

(実験で発電機の土台の波浪衝撃吸収効果を証明した)
実験で発電機の土台の波浪衝撃吸収効果を証明した。

 風車も風を集中させる発電効率を高める実績を持つ九大風レンズ研究グループ(代表・大屋裕二教授)が開発・商品化に成功している構造を採用した。通常風車に比べ3〜5倍の出力向上できる第1世代の風レンズ風車は、NEDOの支援を得て1〜5キロワットの小型が実用化している。洋上風力発電には10〜20メガワット級の第2世代の風車を開発する。落雷や渡り鳥の衝突対策も怠りない。経塚雄策教授や柏木正九大教授らは、台風規模の高波を想定した波浪衝撃エネルギー吸収効果などHMSモデルを用いた実験研究を行なっている。

(通常風車の3〜5倍の発電ができる第1世代の風レンズ風車;福岡市の九大構内で)
通常風車の3〜5倍の発電ができる第1世代の風レンズ風車。(福岡市の九大構内で) 第1世代の風レンズ風車

 太田名誉教授によると、これら新技術に基づく洋上風力発電のパイロットプラント1号機は、開発費約13・5億円で3年間、大型の実用化パイロットプラント2号機は開発費約10億円、2〜3年で開発可能としている。同グループの経済シュミレーション解析によると、100万キロワット級洋上風力発電の初期建設コストは1キロワット当たり7〜12万円と格安で、耐用年数が100年と長く、メンテナンス費用も安く、他の発電事業と比較して格段の優位性を誇る。

400万KW級洋上風力発電の経済性比較

本格的な水素エネルギー社会の到来 

 英国で35万キロワット、米国で50万キロワットの水素タービン発電所が4,5年後に稼働予定で、本格的な水素エネルギー社会が到来する。九大グループでは、大規模洋上風力発電で電力を水素に変換して貯蔵、船で陸に運び電力として利用するシステムの技術を開発している。すでに、太田名誉教授のSCF技術は、JAMSTEC(海洋研究開発機構)の次期深海13000用に共同開発が決まっている。

 1ユニットで100万キロワット級の洋上風力発電は、原発1基分の総発電能力と並ぶ。現在、日本中に52基もあり、放射能漏れの危険性が大きい原発に代わる持続可能な新エネルギーとして、国は早急に開発を推進すべき時期に来ている。

HOME政策>【特集】洋上風力発電