今こそ平和のために、内需主導経済に転換を

4.現在進行形の危機と日本経済

 これから先、どうなるか。じつのところ金融危機はホンの入り口で、パニックによる信用収縮は広がるばかり、底はみえない。アメリカ議会は、下院がいったんは拒否した金融安定化法を修正の上なんとか可決したが、その直後に米・ダウ平均株価は4年ぶりに1万ドルを割り、東証・日経平均も4年10か月ぶりの1万円台割れを記録した(注2)。

 世界主要市場の株式時価総額は、ピークの63兆ドルから9月末には42兆ドルにまで減少、日本のGDPの4倍にあたる21兆ドルの株式価値が吹き飛んで、なお下がりつづけている(注3)。ダウ平均株価は一年間で35%下落した。そもそも危機の発火点となった米住宅バブルの崩壊自体が終息をみていない。全米主要10都市ベースの住宅価格は、すでに今年5月にピーク時から20%下落した(S&Pケース・シラー住宅指数)が、価格が底を打つには最終的に40%程度の下落が必要と見込まれている。これでは、危機波及の導火線となっているRMBSをはじめとした証券化商品の「時価」は、まさに紙屑にむかって暴落するほかない。IMFは、アメリカ発金融危機によって世界の金融機関が被る損失について、9月初めに1兆1000億ドルという推定を出した。それが9月下旬には1兆3000億ドルになり、さらに10月7日発表の四半期ごとの世界金融安定報告では1兆4050億ドルにまで拡大されている。IMFとしても、まったく見通しを立てられない状況にあるということだ。

 就任早々、危機に遭遇した麻生首相は、対岸の火事よろしく、「日本の金融システムへの影響は軽微だが、遠からず実体経済への影響が出てくる」などとノンビリしたコメントを発しているが、そういっている間にも、日本の実体経済面に影響が波及しはじめてきた。端的に、アメリカの内需縮小・景気後退によって対米輸出が激減し、貿易収支の悪化が顕著となっている。8月の貿易統計(財務省発表、通関ベース)によると、対米輸出が前年同月に比べ21.8%も減少(12か月連続の減少)、そのため貿易収支は、じつに82年11月以来26年ぶりの赤字をとなった。中国でも、対米輸出の後退が輸出全体の伸びを鈍らせ、外需によって牽引されてきた経済成長の減速が表れている。中国による対米輸出の相当部分が、日本発・中国経由・アメリカ行きの「三角貿易」によって占められていることからすれば、その低迷も日本経済を直撃する。

 日本の大企業の利益拡大を主導しているのは、輸出であり海外事業である。だが、この構造が成り立つのは、金融バブルのおかげで拡大をつづけるアメリカ市場が、巨大なはけ口として存在すればこそだ。だから、アメリカ発の金融危機とは、日本にとって、これまで大企業の利益拡大を支えてきた基礎的条件の深刻な動揺にほかならず、もっといえば大企業の利益優先一辺倒で進んできた日本経済そのものの危機を包含する事態なのだ。日本の金融機関にたいするサブプライムローンの影響が「軽微」であるとか、ないとかという議論で済む問題とは、問題の質が違うのである。

(注2)
10月10日の東証・日経平均は8276円43銭と、03年5月28日以来、約5年4か月ぶりの安値に。10月3日からの1週間で、二度の大暴落を経て下げ幅は2600円を超え、今年に入ってから失われた時価総額は約207兆円に。

(注3)
10月10日の暴落の影響を考慮すると、世界の株式市場の時価総額は、9月からの1か月余りで1400兆円も吹き飛んだとみられる。

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