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地球温暖化防止戦略 〜 いまこそエネルギー政策の大転換を!!

地球温暖化防止戦略
〜いまこそエネルギー政策の大転換を〜

08.6.19 社民党地球温暖化防止・環境税創設PT

社民党の地球温暖化戦略

一 地球温暖化の現状と社民党の姿勢

地球温暖化は疑う余地のない現実であり、それが人為的な要因によることもほぼ間違いない。論争に科学は決着をつけた。今こそ政治の出番である。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第4次報告が科学の名のもとに発した警告を、生態系と人類の危機として、真摯に受け止める。

社民党は、地球温暖化防止を最重要課題と位置づけ、全力で取り組む。

しかし、政府にはまるで危機感がなく、切迫感や責任感も希薄である。

この国は優れた省エネ技術や温暖化防止技術を持ちながら、政治の貧困のために、これを引き出す政策・制度設計が極めて不十分である。

政府は最大のCO2排出者である大企業からなる日本経団連に配慮する余り、その「自主行動計画」にすべてを任せ、抜本的な対策をとらない。さらに世界最大の排出国、ブッシュ大統領のアメリカにも遠慮している。

社民党はこうした政府の姿勢を厳しく批判しながら、地球環境と生態系を守るために、科学的知見に基づく具体的な削減目標を直ちに設定し、それを実現するため、エネルギー政策の大転換を提起する。

二 削減に向けての具体的な目標

1 京都議定書の目標達成と課題

京都議定書の第一約束期間(2008 年〜2012 年)が始まった。90 年比マイナス6%を約束したにもかかわらず、「自主行動計画」任せの政府の無策から、価格が安い石炭火力発電所の増設などにより、我が国の温室効果ガス排出量は、かえって90 年比で6.2%以上(13.4 億トン)増加している。目標達成のためには、合計12.2%の削減が求められている。国際的に認められた森林吸収源(上限毎年1300 万炭素トン、3.8%)の実現も、間伐など森林整備の立ち後れが指摘されている。京都議定書の目標達成は危ぶまれている。

政府としては、いわゆる「京都メカニズム」を利用し、不足する「削減量」を海外から「クレジット」として購入すれば、形式的な「目標達成」は可能であろう。しかし、すでに政府(5 年間で1.6%、1 億トン)、産業界(同2.2 億トン)は京都メカニズムに大きく依存しており、京都メカニズムの「補完性の原則」に反するとの指摘がある。また、日本が「温暖化対策に消極的な国」と見られる外交的な損失も計り知れない。クレジット購入のため膨大な資金を海外に支出するなら、省エネ技術や自然エネルギー開発に活用すべきで、国民経済上も損失である。

社民党は日本政府に対し、経団連「自主行動計画」と京都メカニズムに依存しつつ、将来の「未知の革新的技術」に期待するような先送り策をとるのではなく、既存のあらゆる政策を動員して、自前の国内対策による京都議定書の目標を達成するよう強く求める。

2 バリ合意と中・長期の削減目標

昨年12 月のバリ会議(COP13/MOP3)では、平均気温の上昇を2℃未満に抑えるため、今後10〜15 年で排出減に転じ(ピークアウト)、先進国は20 年に90 年比25〜40%削減すべきことが確認された。また、IPCC 報告は、50 年に90 年比で80〜95%削減が必要としている。

社民党は、温室効果ガス削減の目標値として、2020 年に90 年比30%以上削減、50年目標に80%以上削減を目指す。

なお、日本政府が「福田ビジョンに」において示唆したような、「基準年は1990 年ではなく2005 年とする」「来年のしかるべき時期に中期目標を打ち出す」「セクター別アプローチ」などは認められない。基準年を変更することは、失政による90 年以降の排出増加を帳消しにしようとするもので、数字のごまかしにほかならない。また、「セクター別アプローチ」についても、あくまで科学的知見に基づく総量目標(キャップ)が前提であり、これの実現に向けた政策を検討するためのツールの一つであることを明確にすべきで、「セクター別アプローチによりボトム・アップで削減目標を作成する」という消極的な姿勢は許されない。政府は、90 年比の2020 年の削減数量を中期目標として直ちに明らかにし、それに向けた具体的な政策をパッケージとして打ち出すべきである。

三 削減にむけての政策手段

社民党は、既存の省エネ技術の一層の開発促進、CO2 排出抑制だけでなく、「第三次石油危機」「ピークオイル」が叫ばれる今こそ、脱化石燃料・脱原子力によるエネルギー政策の大転換を、大胆かつスピーディーに実現すべきことを強く訴える。そのための政策手段として、自然エネルギーの導入促進を最重点課題と位置づけ取り組んでいく。

1 自然エネルギーの導入促進

社民党は、自然エネルギー(太陽光、風力、バイオマス)をエネルギー政策の本流と位置づけ、導入促進に全力をあげる。一次エネルギー、電力供給に対する自然エネルギーの導入割合を、2020 年に20%、2050 年に50%以上をめざす。地域の資源を活かした自然エネルギーの導入を促進することにより、エネルギーの多様化、地域経済と雇用の拡大、農林水産業の活性化など、地域社会の再生をめざす。

(1)日本の優れた太陽光発電技術を活かし、国内での導入を促進する。当面、05年に廃止された住宅用太陽光発電導入促進補助金制度の復活、学校・官公庁など公共施設や大規模マンションでの太陽光発電設備の設置拡大を進める。新建築物に電力・熱供給の一部を自然エネルギーで賄うことを義務づける。

「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(RPS法)は、義務的目標値が2010 年約1.35%、14 年1.63%と低すぎ、かえって自然エネルギー導入の妨げになっている。同法は廃止も含めて見直す。

諸外国並みに、10 年前後で投下資本を回収可能にする「固定価格買取制度」の創設を盛り込んだ、「自然エネルギー促進法」の制定をめざす。

(2)風力について、大幅に導入量の増加をめざす。高性能蓄電池の開発や海上風力発電などへの技術開発支援を進める。

(3)バイオマスについて、生態系の保全、農林バイオマスなど地域の資源環境に見合った地域自給型・循環型を基本とし、食糧生産に影響を与えない木質・セルロース系を中心とした国産バイオマス・エネルギー利活用の増進をはかる。

(4)電気事業法を改正し、本来、公共財である送電部門を開放し、発・送・配電の事業会社を分離する。自然エネルギー由来の電力を優先する新たなルールづくりを進める。

(5)自然エネルギー技術の普及と革新を促進するため、産業として育成するための長期戦略を策定していく。

2 国内排出量取引制度を導入

現在、発電、鉄鋼、セメントなど、約150 の工場・発電所が、日本全体の51%のCO2 を排出している。その他の工場も合わせ、全体の3 分の2 以上のCO2 が産業・エネルギー転換部門から排出されている。家庭部門は5%程度に過ぎない。大口排出源への規制を除外して排出削減は実現できない。

社民党は、2010 年をめどに、「キャップ&トレード型の排出量取引制度」を導入することを提起する。

排出量の配分ルールは「トップダウン・アプローチ」(政府が事業者ごとの排出総量を設定)を基本とする。将来的には創設される環境税との調整を図りつつ、排出枠の有償割当をめざす。

対象事業者は、省エネ法での1500kl(原油換算)以上の大規模排出源とし、制度設計について定期的な見直しを行う。

制度導入に伴い、現行の省エネ法で報告されているエネルギー使用量等の全面公開を進めるとともに、省エネ法の「エネルギー消費原単位を年1%以上改善」を義務化する。

3 環境税(炭素税)の導入

社民党は、環境税の速やかな創設を提起する。

排出量取引制度は大規模排出源への対策であり、カバー率の観点からは、小規模排出源をも対象とする環境税(炭素税)がベースとなるべきである。環境税は、CO2 を排出する化石燃料などの環境負荷に課税し、「負の価格インセンティブ効果」によって、消費者に排出抑制行動をうながすものである。

本来は「現状からどれだけ価格を引き上げるか」が問題である。しかし、原油価格の高騰、揮発油税暫定税率の再可決による「増税」の結果、ガソリンは1 リットル180円に迫り、家計を直撃している。このような状況で、さらに原油価格に税を積み増すのは現実的ではない。ガソリンへの税率を参考にしつつ、他の既存エネルギー諸税の税率を、従量ではなくCO2 排出量比例に組み替えることにより、「炭素税化」することも検討すべきである。課税段階、税率、減免措置等については別途検討する。

環境税については、大衆課税の側面があり、逆進性も問題となる。そこで、導入にあたっては「税収中立」を大原則とし、税収は一般財源としつつ社会保障費、年金財源、所得税減税などに充て、高齢者や低所得者層、燃料高騰に苦しむ一次産業・中小企業にも配慮する。

4 その他の削減手法

(1)現状7割程度と遅れている森林吸収源(上限毎年1300 万炭素トン、3.8%)を確保するため、間伐など森林整備を強化するとともに、国産材の利用促進、森林のバイオマス資源の利活用、山村の活性化にむけて人材や予算の拡充を図る。

(2)水田は水を求め、森を育む。食料自給率を高め、水田の多面的機能を守る。そのためにも、農林業者への直接所得補償制度を実現し、優良な農地・森林の維持、炭素貯留効果のある土壌有機物の拡大に努める。

(3)すべての商品についてC02 の「見える化」を進め、「省エネラベリング」、上場企業のカーボンディスクロージャーなどを促進する。金融機関やファンドの投資先を公開させ、温暖化ガス排出削減効果を有する投資については優遇税制など何らかのインセンティブを設ける。

(4)地域自給型・燃料多様化型の地域エネルギーシステムを構築するため、自治体、企業、市民の協同による「地域環境エネルギー事務所」を設置し、各市町村に市民からの相談を受け付ける「自然エネルギーアドバイザー」を配置する。地域主導型の自然エネルギー産業を支援し、住民投資、雇用の促進を図る。

(5)住宅・業務用ビルの省エネ、断熱機能の強化を図る。

(6)自動車などの総量規制、公共交通機関の充実、LRT の導入拡大、モーダルシフトなどを進める。

四 原子力は温暖化対策の切り札ではない

「エネルギー安全保障と環境対策を両立させるため、原子力が切り札となる」(経済産業大臣)、「原子力エネルギーの平和利用が地球規模で一層拡大するよう取り組む」(『原子力白書』)など、政府は原発の増設や核燃料サイクルの確立によって温暖化の危機を乗り切ろうとしている。

しかし、中越沖地震の柏崎刈羽原発にみられるように、原発の安全性は確立していない。地震・事故による放射能汚染、放射性廃棄物の処理と保管のための膨大なコストなどを考えれば、原発が「クリーン」でないことは明らかである。IPCC は「原子力は…安全性、核兵器拡散、核廃棄物の問題が制約として残っている」と釘を刺しており、現在、国連も、原子力をCDM(クリーン開発メカニズム)の対象とはしていない。北欧、EU では、原子力に頼らない温暖化対策の確固とした流れがある。「原子力切り札論」はまやかしであり、国際的には通用しない。同時に、原発は初期投資に莫大な費用がかかり、投資効率も検証できない、国家プロジェクトによる中央集権型エネルギー政策の典型的な産物である。これからのエネルギー政策は、地域に密着し、民意を反映した地域分散型のものに転換していかなければならない。

社民党は、温暖化対策と並行して、脱原子力への転換を求める。原子力をCDM の対象とさせてはならない。原子力偏重で軽視され続けてきた自然エネルギーを大幅に拡充させるため、エネルギー対策特別会計、原子力関係予算を全面的に見直し、自然エネルギー関係予算を大幅に増やす。枯渇する地下資源・化石燃料の使用を抑え、地域分散型の再生可能な自然エネルギーに切り替える。

温暖化対策の切り札は原子力ではなく、自然エネルギーである。

五 2013年以降の次期枠組交渉にむけて

世界最大の排出国であるアメリカの次期枠組への参加について、日本政府は先進国の一つとして毅然たるメッセージを伝えるべきである。

途上国の次期枠組への参加については、「共通だが差異ある責任」の原則を踏まえ、ピークアウトする10〜15 年後を目途に削減目標を持つように誘導していくべきである。中国、インドについては、バリロードマップを尊重した削減計画の実施を求めていく。

社民党は、途上国に対する資金援助については、二国間ではなく、気候変動枠組み条約と京都議定書に基づく多国間基金を推進すべきと考える。また、先進国主導ではなく、国連の民主的なルールに基づき、途上国の意思を反映した運用を提唱する。

温暖化防止は地球規模の取り組みである以上、途上国に対する支援、技術移転は不可避である。エイズ治療薬の知的財産権問題にならい、「知的財産権は保護すべき」「技術移転は商業ベースで」という従来型の発想を超えて、途上国の排出削減努力とセットでの技術移転を検討すべきである。

また、途上国の森林吸収について、「排出枠」として正当な経済的評価を与え、国際的な排出量取引市場などから経済的な利益を得られるような仕組みを創設することにより、違法伐採・森林破壊を防ぐ国際的メカニズムを提唱する。

もっとも、現状では一人当たりのCO2 排出量は、アメリカ20 トン(CO2)に対し、中国4トン、インド1 トン(日本は10 トン、先進国平均は10 トン、途上国平均は2トン)と大きく異なる。この先進国、途上国間の厳然たる格差を直視し、平等の観点から、2050 年を目標に一人当たり排出量を均等にすることも検討すべきである。

六 環境と経済

市場経済がカーボンリスクを意識する中で、排出量取引や環境税など、炭素に価格をつけて市場に温暖化防止機能を組み入れることは、ドイツ・北欧などの経済発展の例を引くまでもなく、経済活動を弱めるものではない。世界の経済は、CO2 を削減しながら、いかに経済発展をすすめ、経済システムの中にどう環境を取り入れていくか、新たな競争のただ中にある。

私たちは過去、公害対策に取り組み、「目先の利益」を乗りこえ、厳しい環境基準を設ける中で、世界に誇る省エネ技術を創造してきた。今こそ、排出削減・自然エネルギーのトップランナーをめざし、エネルギー、原材料の大量消費・大量廃棄の悪弊に終止符を打つべきである。

すべての産業形態、ライフスタイルを、環境面から再評価し、人間の活動を自然の再生や他の生物との共存が可能な範囲にとどめ、持続可能な自然エネルギー社会をめざす。日本の先端的省エネ技術、自然エネルギー創設技術を積極的に活用し、世界をリードしていく。

社民党は、税や財政措置による政策・制度設計によって、エネルギー政策の大転換を実現し、自然エネルギーを中心とした社会をめざす。未来の子どもたちに、これ以上の気候変動を押し付けず、緑の美しい地球を引き継ぐ。  以上

温暖化対策

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