森林・林業の再生にむけた提言

森林・林業の再生にむけた提言

2011年5月25日
社会民主党

はじめに

 政府は、「森林・林業再生プラン」(09.12.25閣議決定)を具体化していくための「森林・林業の再生に向けた改革の姿」(10.11)を決定した。今国会では改正森林法が成立し、新たな「森林・林業基本計画」の見直しも開始されている。

 日本の森林・林業は、「荒れた森林・里山、利益の出ない林業、停滞した木材産業、過疎化が進む山村社会と山村地域の雇用の減少」という厳しい現状にあるが国土保全や防災、水源涵養、生物多様性などの多面的機能の発揮とともに、持続可能な森林経営の確立と林業生産活動、林業を担う人材育成と雇用の創出、京都議定書で約束した森林吸収源3.8%の確保、山村社会の振興、農畜産業との連携、野生生物との共生など多くの役割が期待されており、今後は地域関係者の意向をふまえた新たな産業として展開していく必要がある。

 「森林・林業再生プラン」は、国土の7割を占める豊富な森林資源の存在と日本の技術力を活用し、人材を育成し、低炭素社会と循環型産業を構築する大きなチャンスであり、その確実な実施体制と安定した予算の確保が重要である。

 2011年は、国連が定めた「国際森林年」にあたり、世界中の森林の持続可能な森林経営・保全の重要性に対する認識を高めるとともに、日本も森林林業再生元年と位置づけた森林保全にむけた一層の取組みが求められている。

 社民党は、日本の貴重な森林を活用した持続可能な森林・林業、木材関連産業の構築を図るとともに、地域(山村)振興と地域林業を再生することにより、山村地域における福利を高め、森林・林業に希望と安定をもたらすよう以下のとおり提言を行なう。

一 山村振興、林業事業体の育成と林業労働力の確保

 地域・山村振興と地域林業を再生するためには、「林業事業体の育成」と「林業労働力の確保(技術者の育成・確保)」が重要であり、国として林業を中心とした新たな雇用拡大対策および定住対策に取り組むべきである。

1 山村振興法の具体化と地域への財政支援

 日本の山村は、人口で3%にすぎないが、国土の半分、森林面積で6割を占め、「国土の保全、水資源の涵養、自然環境の提供」など国民生活で重要な役割をもっており、市町村の4割(746市町村)が振興山村に指定されている。山村の現状は、約9割が森林で、地理的条件が厳しく、一次産業の比率が高い。また、道・上下水道・情報通信・医療・教育・スーパーなど生活関連は、いまだ全国水準にくらべ格差が大きい。

 山村振興法の目標は、国土保全等の公益的機能の発揮と森林等の保全、産業基盤及び生活環境の整備等を図ることだが、集落は減少し続け、高齢化や就業機会の減少、鳥獣害も多発し、危機的な状況であり、活性化には結びついていない。

 林業は山村社会の中に存立している。改めて山村振興の目的を達成するためには、政策の具体化と縦割りの弊害の解消を図る必要があり、具体化に向けて@地域林業を確立するため地域への財政支援、A「道路や農業基盤整備、災害防除、住民の福祉向上、住宅整備」などにおける縦割り行政の見直し、B集落支援員の増員、直接支払制度・条件不利地域支援、農林複合・山林放牧、林産物利用、里山の再生、薪炭の利用促進、森林セラピー基地の増設など地域の協同性、集落機能を高める総合的な対策を実施すること。

2 林業事業体の育成策として、「透明性を確保した地域維持型の契約方式の導入」などを実施すること。

(1)入札制度の見直し

 現在の一般競争入札制度は、地域(山村)振興に寄与せず、林業における特殊性(長期的な山づくり、地域ごとの森林の多様性、作業を繰り返すなどの一貫性や継続性)も重視されない中で、ダンピングによる労賃や安全対策の低下、他県からの受注参加による地域性の欠如等を招くなどの弊害が出ている。
 林業においては、すべてを一般競争とせず、少なくとも流域単位(全国158)で、雇用や技術など地域資源を優先し、地域の関係者の意向を踏まえつつ、登録・評価制度のもとで、透明性のある契約方式を実施すること。

(2)事業の共同化・協業化の推進

  日本の森林面積は2510万haで、うち国有林が769万ha(3割)、公有林253万ha(1割)、私有林1454万ha(6割)となっている。
  林家数は251万戸(うち1ha未満が6割)、92万戸(1〜5ha以下が8割)、林業事業体数は6270(個人が3900で6割、森林組合836、会社1360など)、うち30人未満が8割である。森林の6割を占める私有林では、小規模零細の林家や事業体が中心であることから、間伐や再造林などの森林整備が遅れており、事業の共同化・協業化を推進し、地域林業を担える組織を確立すること。

(3)事業の安定的な発注

  林業事業体を育成するためには、継続的に事業が営める事業量の確保と安定的な発注が不可欠であり、そのための流域を単位とした情報公開や発注方式を構築すること。また、この間削減されてきた公共事業費(森林整備や治山事業)を増額すること。

3 林業労働者・技術者の育成・確保

(1)フォレスター・施業プランナー・技術者等の確保、就職体制の整備

 林業就業者数は5万人(05年)と95年の半分近くに減り、高齢化率も26%と上昇、新規就業者数は約4000人(うち緑の雇用で1500人)と微増傾向にある。また、林業の平均所得は295万円で全産業(425万円)の約6割程度でしかなく、しかも日給制が約7割(月給は1割)と不安定な就労形態におかれている。森林・林業関係の学校数は全国に120校あり、毎年5000人以上の学生が卒業しているが、林業関係に就職できるのはわずか2割程度となっている。
 「森林・林業再生プラン」や「改革の姿」では、市町村森林整備計画の作成など市町村への支援や森林経営主体への指導・助言を行なうため、都道府県や国有林、市町村、民間の職員を「フォレスター」として育成・活用する計画だが、その育成過程、人員数、身分や権限、役割など社会的な枠組みがはっきり見えてこない。
 また、都道府県の林業普及指導員(現在1400人)や国有林の職員、市町村の担当者も大幅に減少している現状にあることから、以下の具体策を実施すること。

@森林経営の核となるフォレスターの身分・権限等を確立するとともに、施業プランナー、現場技術者等の専門家確保にむけた支援策(都道府県、森林組合、民間事業体)を早期に構築すること。

A専門家や技術者・労働者を確保するための高校や大学など教育機関制度を拡充し、林業を学んだ者が確実に就職できる体制整備(養成機関、ネットワーク化)など新たな雇用対策を実施すること。

Bフォレストワーカー、森林作業道作設オペレーターなど現場作業技術者等の育成
(5万人規模を目標)に対する支援を急ぐこと。

Cあわせて林業労働者の処遇改善や緑の雇用制度の再生プランにおける役割を明確化し、研修費増額など予算の拡充と定着対策を図ること。

(2)技術に係る研修等の対策

  林業就業者を確保するためには、林業事業体の育成整備を柱とした将来事業量の明確化と安定的な事業の発注が重要であるとともに、技術の習得・向上が必要であり、国有林のフィールド等を活用した研修対策を実施すること。

4 森林整備の推進

 間伐が必要な森林は人工林(1035万ha)の約6割の640万haあり、10年後には資源利用可能となる50年生以上が6割となる見込みである。健全な森林づくり、公益的機能の発揮、木材の循環利用、京都議定書の森林吸収源3.8%の達成(毎年55万ha)に向け、適切な間伐を実行すべきである。

(1)森林所有者の意識改革

 私有林面積1343万ha(05年)のうち不在村森林所有者は327万ha(24%)を占め、所有者の高齢化が進み、後継者不足も深刻化している。
 成立した森林法では、「森林所有者が責務を果たし、森林の公益的機能を発揮するため、路網等の設置のために必要な他人の土地について、土地所有者が不明の場合でも使用権の設定を可能とする措置や所有者が不明でも施業代行者による間伐ができるよう制度を拡充する」としている。
 この改正を含め、不在村森林所有者対策を進めるとともに、プランにおける所有者の役割・位置づけを明確にし、森林所有者の経営意欲を高める施策(提案型集約化施業の普及など)を講じること。

(2)地籍調査の早期実施や森林簿の整備

@山林部における地籍調査の実施状況は4割(7.5万ku)で、残りの6割(11万ku)は調査が行なわれていない。森林計画の台帳となる森林簿の未整備も多いことから、当面、山村境界保全事業(国交省)および境界明確化事業(林野庁)を進めるとともに、地籍調査や森林簿の整備を早期に実施すること。

A同時に、国内の森林資源の地域別・流域別の正確な賦存状況を、森林の利用区分別、普通林と制限林別、地利級(林道などからの距離)別に把握・データベース化すること。

B法務省、地方自治体における税制上の台帳などを活用した対策を進めること。

(3)森林法における林地開発規制(土地法)の見直しや国・都道府県における林地買い上げを行ない、水源林や保安林の公的管理を強めること。

(4)路網整備の加速化

 日本の地形は急峻であり、林内路網密度も17m/haと低い(ドイツ118m/ha、オーストリア89m/ha)現状にある。
 このことから、施業の集約化・団地化を推進するとともに、森林資源・間伐材の利用促進と搬出間伐コストの縮減、林業機械の活用を図るため、林道、林業専用道、森林作業道の路網整備を加速化すること。なお、路網や林道の整備にあたっては、生物多様性や自然環境を損なわないよう十分配慮すること。

(5)山地災害等の予防対策の強化

  山地災害を防止するため、地形や手入れ状況など山の状態を随時監視するとともに、広葉樹林の造林、ダム中心の治水対策から脱却した森林保全型の治水対策への支援策を強化すること。

(6)国民参加型の里山利用を進めること。

二 「森林・林業再生プラン」の目標である10年後の木材自給率50%以上を達成するためには、国産材の需要拡大と安定供給体制の確立が必要である。

1 国産材の需要拡大

 日本の木材供給量は6321万立法メートル(国産材は1759立法メートル、輸入材4562立法メートル)、自給率は27.8%(09年)となっている。今後の間伐促進等により供給量の増加が見込まれることから、需給対策や生産・加工・流通・販売体制を整備し、価格対策を講じること。

(1)公共建築物等への木材利用法の具体化として教育の場や保育所への新たな対策

  昨年成立した「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」をいかし、新たな木造建築物の増設(目標:100万立法メートル→250万立法メートル・木造率8%→24%)を進めるとともに、地域ごとの木材利用拡大の目標をつくること。特に学校や保育所など教育環境での木材利用を促進すること。
 また、地域住宅産業は環境にやさしく地域の雇用や経済など、裾野が広い効果を持っており、地域材を活用した住宅リフォームや循環型社会にふさわしい木造住宅建設の振興に努力する必要がある。地域材を利用した住宅建設に対し自治体が行っている補助(40府県、159市町村)については、地域材を活用した木造住宅建設助成や、木造住宅技術者の育成などを実施している「地域住宅交付金」を充実するとともに、地方財政計画に計上された「地域活性化・雇用等対策費」(2011年度1兆2000億円)の中の「地球温暖化対策暫定事業費」(2011年度100億円)の拡充を図ること。

(2)木質バイオマス利用の拡大(発電等)および開発

  木質バイオマスは、脱化石燃料と温暖化ガスの抑制、木材産業や地域経済への貢献など社会的な有用性は高く、利用促進のためには林業振興が不可欠となっている。
 現在、木質バイオマスの資源量は、林地残材で2000万立法メートルあり、ほとんどが未利用となっている。製材工場残材や建設発生木材では、ボイラーや発電等のエネルギー利用、ボード・パルプ等の原材料に利用されているが、未利用も400万立法メートルある。また、製材用材と比べ、パルプ・チップ用材は安い輸入材(外国での違法伐採や泥炭林開発による木材も含まれる)に頼り、自給率は18%以下になっている。

 @木質バイオマスによる「熱利用のペレットボイラーやストーブ、発電」の普及・利用促進にむけ、50年スパンの資源利用を想定し、持続可能な収集・利用、流通体制、熱・発電利用などの技術体系、地域工場の建設、安定供給体制を整備し、低炭素・循環型地域経済の形成、山村社会の再生につなげること。

 A薬用、マテリアル用、飼料や肥料の開発・有効利用を進めるとともに、広葉樹利用(薪炭材)を促進すること。

 B今国会に提出された「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案」による再生可能エネルギーの全量買取制度は、石炭混焼や輸入バイオマスを増やす方向ではなく、地域のバイオマス材利用の導入を普及させる買取価格制度とすること。

(3)住宅の新築とリフォームに対する国の支援対策等

 @住宅着工数の木造住宅は、年々減少し、09年は50万戸を割り43万戸台に落ちこんでいる。住宅リフォーム市場は4.4兆円規模で、うち増改築工事が9割を占めている。木材自給率50%の実現にむけて、木材から住宅までの一貫生産を広げ、地域材を利用した新築・リフォーム関連への支援を行なうこと。

 A森林認証制度(認証面積09年は、SGEC緑の循環認証会議は80万ha、FSC森林管理協議会は33万ha)の取組みを広げ、持続可能な森林・林業が見える木材の流通体制や商品化(トレーサビリティ、産直住宅など)を進め、川上と川下の連携を通じて、地域の持続的な資源管理体制を確立すること。

2 安定供給体制の確立

 国産材の加工・流通体制は、小規模・分散・多段階の流通構造の見直し、需要者のニーズ(規格)に対応できる商品・ロットの供給体制、生産者・需要者の顔が見える流通構造、膨大な林地残材の収集・利用、消費者の理解の醸成、人材の育成等が課題となっており、生産から最終消費者までの透明かつ効率的な安定供給体制を確立すること。

(1)国産材の収集・加工・流通・販売体制を構築(透明化、情報共有等)すること。

(2)大規模製材工場および地域中小工場の体制整備、地域販売窓口の設置。

(3)川上と川下を結ぶ素材流通コーディネーター等の育成を図ること。

三 地球温暖化防止対策・京都議定書の森林吸収源の達成および森林整備予算の確保

 地球温暖化防止条約・京都議定書では、日本は温室効果ガスの「90年比マイナス6%」を公約し、森林吸収源は3.8%(1300万炭素トン)達成を目標としている。
この1300万炭素トンの確保のためには、森林整備(間伐)により年56万haの実施を目標とし、毎年110万炭素トン(20万ha)の追加の森林整備が必要となっている。
 2011年度における森林吸収源目標達成に必要な予算は、2010年度補正予算や11年度本予算、基金、自力・県単をあわせて何とか確保しているという状況だが、補正に頼らない安定的な予算確保が不可欠である。
 国際公約である地球温暖化対策や「森林・林業再生プラン」を着実に実施するため、新たな予算措置・毎年2000億円程度の予算(森林・林業に係る年間予算は当初で5500億円程度)を確保し、地球温暖化対策税(環境税)の導入と森林・林業対策を一体的に進めること。

四 国有林野事業及び公的森林整備のあり方

 国有林野事業の改革の方向は、「森林・林業の再生に向けた改革の姿」の中で、森林・林業行政の観点から国が責任を持って一体的に管理するとともに、その組織・技術力・資源を活用し、我が国森林・林業の再生に貢献できるよう見直すこととしている。

(1)国有林野事業のあり方

 国有林野事業は、その使命・役割を果たすため、林野庁における一元的・一体的管理の下、早期に組織・事業の全てを一般会計へ移行させ、人材育成を図る中で現行体制の拡充を行い、民有林への指導・サポート、地域貢献を果たせる体制の確立を図ること。

(2)公的森林整備のあり方

 施業放棄地等森林整備が困難な民有林地域(水源林造成事業を含む)については、山村振興対策の推進も含め森林総合研究所森林農地整備センターにおいて実施すること。

五 東日本大震災による森林・林業被害について

 未曾有の東北地方太平洋沖地震等による林野関係被害は、被害県は10県に及び、被害額は民有林・国有林あわせて計2,625カ所(845ha)、1,157億円(5.16林野庁)とされている。今後も被害実態が拡大する可能性があり、どう復旧・復興していくのかまだ先が見えない状況だが、森林・林業・木材産業の復興にむけ、当面以下の対応を進めるべきである。

@11年度二次補正予算において、被災地における林業の雇用減少を回復するため、森林・林業分野での雇用拡充対策を図ること。

A被災地における木材産業・治山施設・海岸林などの復旧にむけ、特別な財政上の措置を講じること。

B今後の住宅建設などの木材需要を見通し、需給不安の解消や情報の提供をはじめ、木材の円滑な供給体制を整備すること。

C保安林等の機能保全にむけて、育成・整備を進めること。

D化石燃料が不足している避難所や仮設住宅等において、ペレットストーブ(燃料)・ボイラー、薪ボイラーの導入など木質バイオマスの利用を促進すること。



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