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今こそ有機農業。有機農業で、石油漬け農業から脱却を。

今こそ有機農業。有機農業で、石油漬け農業から脱却を。

社会新報08年8月20日号掲載記事

世界の経済活動、人々の生活にさまざまな影響を与えた原油高。燃料や肥料、石油製品の価格高騰が、生産コストの上昇に直結することを如実に示した。とりわけ深刻なのが、食料生産を担う農業だ。その背景に、いわゆる「石油漬け農業」があると指摘する専門家も多い。そこで現代農業の問題点について、農業ジャーナリストの大野和興さんに解説してもらった。

生産性向上や自由貿易に異議 有機農業こそが“脱石油”の道

◆世界中が石油に依存

大野和興さんと福島みずほ党首
農業ジャーナリスト 大野和興さん

石油価格の高騰は農業のあり方に新たな問題をつきつけた。現代農業の特徴は、石油なしで成り立たなくなっているということである。小さい面積で効率よく生産することを長年要請されてきた日本の農業はその典型といえる。化学肥料、農薬、大型機械、プラスチックシートなど、どれが欠けても、その日から農業生産活動の継続が困難になる。

実はこのことは日本の農業だけの問題ではない。グローバル化の中で世界中の農業が石油漬け農業一辺倒になってきている。そして今、食料危機が問題になる中で、その対策として国連や世界銀行、さらには7月上旬に北海道・洞爺湖で開催されたG8サミットでも打ち出されたのが、途上国農業の生産性向上と市場拡大のための自由貿易推進であった。

生産性向上つまり農業の効率化と、そうやって作られた農産物を海外市場に売るための農業の商品化が、どういう技術的基礎の上に成り立つかは言うまでもないだろう。今、世界中の農業がよりいっそう石油漬けの深みに入り込んでいる。

生産性向上のためにどのくらい石油を消費しているか、ある試算を示しておこう。農水省の研究者だった宇田川武俊さんは1974年時点におけるコメのエネルギー収支を計算した。それによると、燃料や肥料、機械などを使うことによる投入エネルギーを100とした場合、産出されるコメはエネルギー換算で38しかないという結果に。その後、農業の生産性向上はいっそう進み、エネルギー消費も大きく増え、投入と算出の逆転はびっくりするほど大きくなっているはずだ。

さらに現在は、この上に新たなエネルギー消費が加わっている。食料を含む貿易の自由化が進む中で、食料が世界中を動き回るために要する輸送と貯蔵・保存のためのエネルギー消費だ。食料の輸送に要するエネルギーを表現する概念にフード・マイルズ(フード・マイレージといわれることもある)というのがある。輸送距離に重量を掛けたものだが、世界で日本はダントツなのだ。農林水産省の農林水産政策研究所の研究員だった中田哲也さんの計算によると、日本のそれは約9000億d・`で、米国の3倍だった。

食料の輸送は冷凍・冷蔵を伴う。これに要するエネルギーを加算すると、この値はいっそう高くなる。私たちは輸入食品を食べれば食べるほど、地球温暖化に“貢献”しているのである。

◆これからの農業は?

ではどういう方向があるのか。先ほど生産性向上や自由貿易推進の方向が国際機関で打ち出されていると述べたが、そうではない農業の方向もすでに打ち出されている。食料危機のただ中の2008年4月、FAO(国連食糧農業機関)やユネスコ、それに各国政府、NGO(非政府組織)、企業関係者を交えた国際機関「開発のための農業科学技術評価」(IAASTD)が出した報告書は、工業的農業を進める農業生産性向上に異議を唱え、生態系に沿った持続的農業を提唱、自由貿易についても食糧安全保障を損なっていると警告、有機農業こそが21世紀の社会、経済、環境を守る生産方法であることを世界に宣言した。

報告書の採択に当たっては、カナダ、オーストラリア、アメリカはサインを拒否した。アメリカは自由貿易やバイオテクノロジー、遺伝子操作に関する報告書の立場に賛成できなかったからだ。またモンサントやシンジェンダといった農業化学や生物工学企業は、自分たちが製造する製品が不当に評価されていると苦情を述べ、抗議の表れとして会合から退席をした。

このことは、世界で農業のこれからのあり方をめぐり、各国政府で構成する国際機関でさえ、対立する2つの考え方がせめぎ合っていることを示している。しかし、農業の持続性、地球環境、食の安全のどれをとっても、IAASTD報告書が指し示した道しかないことはすでに明らかだ。

データでみる 石油漬け?現代農業

日本の農業分野で特に原油高の影響を受けているのが施設園芸だ。ハウス栽培など施設園芸における光熱動力費の7〜9割はA重油が占めているとされる。農林水産省の試算によると、冬春もののピーマンの場合、02年の農業経営費195万6000円(10e当たり)のうち、光熱動力費は64万8000円で33%を占めていた。これが07年では経営費238万3000円のうち動力費38%、90万5000円にまで増えた。トマトやキュウリ、ナスでも動力費の割合が軒並み上昇している(図1参照)。原油高が生産コストを押し上げていることは明らかだ。

図1・主要冬春野菜等の農業経営費に占める光熱動力費割合の推移(10a当たり)

大量の食料輸入が、地球温暖化との関連で問題となっているのが「フード・マイレージ」という考え方。食料の輸送距離が長いほど輸送時に二酸化炭素(CO2)排出が増え、環境に負荷があるとされる。07年度の農業白書の資料によると、日本は韓国や米国の約3倍、英国、ドイツの約5倍(図2参照)も負荷をかけている計算だ。

図2・各国のフードマイレージ

ここでも輸送時に大量の石油が消費されている。食料自給率を向上させることこそが、地球環境の維持、農業活動の活性化につながる。

 

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