声明・談話

2017年7月6日

日欧EPA交渉の「大枠合意」に抗議する(談話)

社会民主党幹事長
又市 征治

1.岸田外相は、5日、日本政府とEU(欧州連合)がEPA(経済連携協定)交渉で「大枠合意」に至ったと発表した。6日(日本時間6日夜)の日EU首脳協議後に正式発表される見込みだが、合意内容は自動車と農畜産物とを天秤にかけ、日本農業に一方的な犠牲を強いる極めて不当な内容である。そのうえ、今回の合意が、既存の日豪EPAや今後想定されるアメリカ抜きの11か国によるTPP(環太平洋経済連携協定)交渉、日米協議に波及する懸念も大きく、断じて容認できない。日本農業や農業を主たる産業とする地方の関連産業に大打撃を与え、安倍政権の掲げる農業所得増や食料自給率向上などの政策とも全く整合性が取れていない今回の暴挙に、社民党は厳しく抗議する。しかも安倍政権は、今回の交渉経過を全く情報公開せず、TPP交渉の際に公表した関税撤廃した場合の品目別影響額の試算すら示さないままの合意など、論外である。安倍政権に対し、「合意」を直ちに破棄し交渉を打ち切るとともに、野党の要求を受け入れ、閉会中審査や臨時国会の早期召集で、交渉の全過程を公表して徹底審議を行うよう強く求める。

2.今回の交渉結果は、日本が妥協に次ぐ妥協を強いられた事実を物語る。最大の焦点となったチーズは、TPPでの合意を大幅に上回る譲歩を余儀なくされた。EUはチーズの競争力・ブランド力が強く、EUからの輸入増で競争が激化し、国産チーズの消費減が危惧される。そのうえ、 需要をEU産に奪われ、チーズに使う加工用の生乳が飲用に回り国内の生乳全体の需給が乱れれば、乳価にも甚大な影響が出かねない。また国産チーズの需要を確保するため、一定割合の国産ナチュラルチーズ購入を条件に、プロセスチーズ原料用に輸入するチーズの関税を無くす「抱き合わせ制度」の形骸化も憂慮される。さらに、欧州産ワインの関税撤廃による国内産地への打撃や、豚肉の関税大幅削減が3年前に猛威を振るったPED(豚流行性下痢)被害からの立ち直りを図る養豚農家に一層の生産基盤弱体化を招く恐れ、そして欧州産木材製品の市場開放で3割超まで回復した木材自給率に水を差す懸念など、拙速かつ安易な合意の悪影響は、農畜産業や林業にとどまらず地域経済にも広く及びかねない。

3.事務レベルでの協議が続いていた先月24日、安倍首相は、「来月、大枠合意できるよう最終的な調整を急がせる」と時期まで区切るなど、「大枠合意」に一貫して前のめりだった。各種世論調査で内閣支持率が急落し、東京都議選で歴史的大敗を喫する中、新たな通商交渉合意を政権浮揚につなげようとの姑息な政治的思惑が透けて見える。しかし、自らの得点稼ぎのために、合意ありきで、満足な説明もないまま国内農業に犠牲を強いるなど、言語道断である。

4.そもそも農業保護政策の手厚いEU各国に対し、日本は、安倍政権が農業者戸別所得補償制度の来年での廃止を決めるなど極めて脆弱で、そうした生産者の努力では埋まらない競争条件の差を放置したままの合意は、日本の農林水産業をさらに窮地に追い込む恐れが強い。日欧EPA交渉が今後、完全な合意に至ったとしても、社民党は国会での承認阻止に全力を挙げるとともに、戸別所得補償制度の廃止を許さず、制度の継続・拡充を求めるなど、真に有効な農林水産業の振興策を訴えていく。

以上