声明・談話

2016年12月1日

特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案について

社会民主党
党首 吉田ただとも

 カジノを含むIR(複合観光施設)の推進のため、「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(IR法案)が急遽衆議院内閣委員会で審議入りした。同法案は、特定複合観光施設区域の整備の推進が、観光及び地域経済の振興に寄与するとともに、財政の改善に資するものであることに鑑み、特定複合観光施設区域の整備の推進に関する基本理念及び基本方針その他の基本となる事項を定めるとともに、特定複合観光施設区域整備推進本部を設置することにより、これを総合的かつ集中的に行うことを目的としている。本質は、カジノを合法化しリゾート開発を推進するところにある。同法案は、以下のような数々の問題点、疑問点があり、国民レベルでの幅広い議論が必要である。したがって、社民党は、本法案には断固反対とする。

1.射幸心をあおり勤勉な国民性を損なう
 「貯蓄から投資」への流れがある中、一発逆転による射幸心を煽るカジノを推進することは、さらなるマネーゲームを呼び起こすことになる。ギャンブルは射幸心を煽って「勤労の美風を害する」という最高裁判決(1950年11月)もある。カジノの解禁によって、国民の射幸心を煽り、勤労の美風を損い、勤勉な日本人の国民性を損ねかねない。

2.ギャンブル依存症、多重債務者の発生を懸念
 ギャンブル依存症は500万人いるとも言われ、すでにギャンブル依存症による家庭崩壊・借金地獄・自殺といった社会問題が現実にあるにもかかわらず、それらを放置し、カジノを解禁すべきというのは拙速である。ギャンブル依存症はWHO(世界保健機関)も認めている病気であり、依存症から抜けられず借金を重ね、犯罪に手を染める人も後を絶たない。カジノ解禁によって、賭博依存症患者の増大、多重債務者の発生が懸念される。

3.カジノ解禁の「デメリット」への対応が不十分
 その他、カジノを解禁した場合に想定されている「デメリット」として、反社会的勢力の関与、犯罪発生、マネーロンダリング(資金洗浄)や横領、脱税など犯罪に利用されるおそれ、風俗環境の悪化、地域環境の悪化、治安悪化、過剰な広告宣伝、青少年の健全育成への悪影響、ゲームの不公正、チップその他の金銭の代替物の不適正な利用などがあげられるが、単に、「政府は、必要な措置を講ずるものとする」とか、「別に法律で定めるところにより、規制を行うものとする」というだけで、具体的手当てについて一切規定していないのは無責任である。

4.賭博合法化を白紙委任
 カジノは「賭博」であり、刑法185条・186条で禁止されている。カジノ解禁のためには合法化する必要があるが、本法案は「推進法」にすぎず、カジノ施設を含む特定複合観光施設を設置するには、別途法制上の措置を講じることが必要とされている。カジノ解禁を政府に白紙委任するものでいいのか。また、競馬・競輪などの公営競技や宝くじなどは、政府や地方公共団体が主催し、健全な運営とその収入による「公共の福祉」の増進、「地方財政調達」を図ることを担保することで認められているが、民間事業者のカジノをどのように違法性を阻却するのか。

5.公明正大、客観中立的な運営が担保されない
 法案には、カジノ設置区域の選定基準や評価要素は一切規定されておらず、公明正大なプロセスでカジノ設置区域を選定することは困難である。また、カジノ管理委員会の基本的な性格及び任務は別法に委ねられてしまい、また、特定複合観光施設区域整備推進会議についても、具体的な選定基準や規定がなく、カジノ法制を利権によって不当に歪めるおそれのある人物が入り込むおそれが残り、客観中立的な運営が担保されない。

6.IRの経済効果は不透明
 政府は「日本再興戦略」(成長戦略)の中でカジノを位置付けているが、経済効果は不透明である。IR施設の解禁による経済効果は、投資を目論む民間などの調査では膨大に膨らんでいるが、一方、政府は、私(吉田忠智)が提出した質問主意書において、「カジノ解禁のみ」の経済効果を試算していないとしている。

7.かつてのリゾート開発の二の舞
 カジノができる「統合型リゾート施設」が、「観光振興、地域振興、産業振興等に資する」のかどうか。かつてのリゾート開発は、大企業による地場産業への圧迫と地元企業の倒産が相次ぐとともに、全国に環境破壊と地域破壊の爪痕を残したのではなかったか。カジノを「含めた」IR施設の建設は、東京オリンピックや「国土強靭化」と並ぶ大型公共事業の一環であり、ハコモノ・ゼネコン利権につながるとともに、地域経済を破壊したかつてのリゾート開発の二の舞になりかねない。アベノミクスの当然の結果として都市と地方の格差が進み、そのためか政府も「地方創生」を謳い始めている。その一環として「統合型リゾート」を位置づけるのであれば、まさに「地方創生」の美名の下に、地域破壊がさらに進行すると言わざるを得ない。真の地方再生には、統合型リゾートの誘致ではなく、地域の自然、歴史、文化、農林漁業、地場産業など、地域資源を生かした取り組みこそを実現しなければならない。

8.その他
 民間事業者が、カジノを所管する官庁の新たな天下り先になるとともに、警察利権の拡大も懸念される。

以 上