声明・談話

2016年11月25日

JR北海道の鉄道事業見直しについて

社会民主党党首 吉田忠智

1.JR北海道が在来線の半減を提案
 今年4月に地域交通改革部を設置したJR北海道は、7月29日、「『持続的な交通体系のあり方』について」という文書を発表し、会社の経営状況と北海道内の人口減少の現状を踏まえ、それぞれの地域に適した「持続可能な交通体系のあり方」について、今年の秋口以降に沿線自治体などと協議を開始したいとする考えを発表していた。そして11月18日には、単独で維持が難しい路線として「10路線13線区」を公表し、3線区はバス転換、8線区は上下分離などを前提として沿線自治体と協議を始めるとともに、存続路線についてもコスト削減や負担増を求める方針を明らかにした。しかし、今回の見直しは、JR北海道全体の在来線の総延長約2420キロのうち約5割に当たる約1237キロという大規模なものであり、根室線・帯広~釧路~根室間、釧網線・東釧路~網走間などの基幹路線も含まれている。仮にすべてが廃止や地元負担となった場合、地域住民への影響や地元の社会経済に与える打撃は極めて大きなものになることが想定される。

2.「地方創生」とは真っ向から逆行
 北海道では日本国有鉄道経営再建促進特別措置法に基づいて特定地方交通線の整理が行われ、国鉄が解体されたときに多くの炭鉱路線が廃止された。その後も北海道では1995年の深名線、2006年の北海道ちほく高原鉄道ふるさと銀河線、2014年の江差線の木古内?江差間といった鉄道路線の廃止が相次ぎ、駅の廃止も相次いだ。2016年12月4日、JR北海道の留萌本線・留萌?増毛間が最終運行を迎え、石勝線・新夕張~夕張間(夕張支線)の廃線も決まっている。このまま今回の見直し方針通りに実施されれば、明治期の頃に逆戻りとなる。しかし、道内においても、過疎化と高齢化は急速に進んでおり、このままでは一層の衰退を招くことは明らかである。地方住民の足が奪われれば、地域経済は打撃を受け、雇用不安も増大する。国がやろうとしている「地方創生」とは真っ向から逆行する。食糧供給拠点としての北海道の重要性も勘案すべきである。

3.国の鉄道政策について根本的な見直しを
 鉄道事業の自由競争を促進し、撤退と新規参入の自由化を目的とする改正鉄道事業法が1999年5月21日に成立した。その結果、旅客鉄道事業の退出(廃止)について、現行の許可制を原則1年前の事前届出制とするとともに、国土交通大臣が退出後の沿線地域の公衆の交通利便の確保に関し、関係地方自治体等から意見を聴取するものとなり、1年経てば、地元の同意が得られなくても廃止に踏み切れることになった。これは、廃止表明のあった路線を存続させるのであれば、自治体は自らの責任でそれを可能にする財源措置をすべきであるという考え方に立っているといえる。しかし、鉄道は、路線ごとにその具体的な役割は異なるが、国民生活や経済活動を支える輸送機関としての役割を果たしており、各地域における文化の形成や観光資源としての活用など、地域活性化という観点からも重要な役割を果たし得るものである。鉄道の維持は、地方単独の問題ではなく、国土全体の問題として捉えるべきであり、地方にだけ鉄道事業の維持の責任を求める国の鉄道政策について、根本的な見直しが必要である。沿線住民、関係自治体との十分な協議・合意を得るよう、鉄道事業法を改正するとともに、国は交通政策基本法の基本理念の実現のための責任を明確にし、赤字路線の維持・存続の方針と対策を示すよう強く求める。あわせて、安全性・利便性向上に必要な設備改良が経営上困難な設備投資を支援するため、不採算路線における鉄道路線維持・確保対策を強化するべきである。

4.国鉄「分割・民営化」の構造的矛盾の検証を
 国鉄の「分割・民営化」から来年で30年を迎えようとしている。今年3月のダイヤ改正では、札沼線の浦臼?新十津川がたったの一往復になり、日高本線の鵡川?様似間も運休したままである。JR北海道は、「極端に利用が少ない」駅の廃止方針も改めて打ち出した。中曽根政権・自民党は当時、「民営分割 ご期待ください」「ローカル線もなくなりません」などと意見広告を出したが、分割・民営化のしわ寄せが安全と路線確保、鉄道サービスに現れてきている。JR各社による地方ローカル線廃線の動きの遠因は、国鉄「分割・民営化」にある。黒字路線の収益で赤字路線を支えていた国鉄時代の内部補助制度が「分割・民営化」で崩壊し、条件的に厳しい北海道、四国、九州の損失が地元自治体や住民に押しつけられる構造となった。国がJR北海道を支援するために用意した経営安定基金も、低金利によって運用益が大幅に減少し、そこに安全投資負担が重くなった。JR北海道の経営危機は、「分割・民営化」の構造的な矛盾の発露でもある。不採算を理由に安易に路線を廃止することが既成事実とされれば、地域の過疎化にいっそうの拍車がかかりかねない。利用者・住民や地元自治体に大きな負担と犠牲を求める安易な路線廃止、代替交通への転換ではなく、「分割・民営化」30年を検証し、「分割・民営化」スキーム自体の見直しが必要である。

5.安全で持続可能な交通政策の確立のために
 環境にやさしく高齢者も利用しやすい鉄道が全国的に再評価されつつある。しかし、今回の見直し方針によって、「いのち」と「くらし」を守る生活路線であると同時に、定住化や観光交流人口の拡大等まちづくり施策を進めるために必要不可欠な社会インフラが大きな危機に立たされている。交通弱者の足を守るとともに、地方切り捨てを許さない立場から、今回の一方的な方針を認めることはできない。社民党は、JR北海道に対して、地元の切実な声を真摯に受け止め、鉄道事業者として誠実に対応するよう求める。また、北海道としても、地元自治体に任せるのではなく、北海道全体の問題として主体的にかかわるべきである。そして、地方の足の切り捨てを容認しながらリニア新幹線には巨額の財政投入という国の姿勢に抗議するとともに、安全で持続可能な交通政策の確立に向け必要な役割を果たすよう強く求めていく。社民党は、利用者・道民が求めている地方交通体系の維持に向け、三江線を守る運動や並行在来線支援の運動、鉄道労働者、廃線や経営分離で影響を受ける多くの皆さんと連携して取り組んでいく。

以上