声明・談話

2015年9月17日

「戦争法案」の参議院委員会採決強行の暴挙に断固抗議する(談話)

社会民主党幹事長 又市征治

1.本日、委員長不信任動議の処理の後、参議院平和安全特別委員会の鴻池委員長は、社民党はじめ、民主党、生活の党、日本共産党、維新の党、無所属クラブが反対する中、締めくくり総括質疑を省略し、「戦争法案(「平和安全法制整備法案」、「国際平和支援法案」)」の採決を強行した。良識の府にあるまじき採決強行は、民主主義を破壊する暴挙であり、雨の中国会前に駆けつけた多くの市民の皆さんとともに、激しい怒りを込めて抗議する。

2.5月15日に国会に提出された「戦争法案」は、7月15日に衆議院本会議での採決が強行され、「荷崩れ」して参議院に送られてきた。参議院では約100時間の審議が行われてきたが、大臣や法制局長官の答弁修正や撤回、答弁不能が相次ぎ、100回以上も審議が中断した。憲法問題をはじめ、「国民の生命と安全を守るための法案」、「リスクは増えない」などという政府の説明自体の虚構性からくる無理が露呈した。そのうえ、安倍首相自身のすり替えやはぐらかし、開き直りばかりの不誠実な答弁に加え、前代未聞の首相のヤジも相次いだ。審議の前提である資料要求や政府統一見解も理事会預かりのままたくさん積み残され、二回目の参考人質疑、衆議院並みの野党質疑時間の実施、河野統合幕僚長の招致なども行われておらず、民主・維新の共同修正案の審議もなく、5党合意の説明も議論もないなど、審議が尽くされたとは到底いえない。国民への説明も不十分であり、理解も深まっていない。法案の合憲性や必要性などに疑問が突きつけられる中、採決に突き進んだことは、言語道断であり、断じて認められない。

3.15日の中央公聴会には、参院では過去10年で最多の95人の応募があり、全員が法案に反対の立場を示していた。法案の違憲性や民意を無視して暴走する安倍政権への危機感ゆえにほかならない。中央公聴会や地方公聴会で公述人の意見を今後の審議に活かすこともなく通過儀礼として採決を強行することは、公述人に失礼であるばかりか公聴会制度と国民の声を踏みにじる行為である。

4.「戦争法案」の違憲性への疑念は、ますます深まっている。安倍政権は、安全保障環境の変化を理由に、必要最小限度の武力行使の範囲に「限定的な集団的自衛権」は入るとして、1972年の政府見解や1959年の砂川事件最高裁判決を根拠に、集団的自衛権行使のための法整備が合憲であると強弁してきた。しかし、「憲法の番人」とされる内閣法制局長官経験者に加え、最高裁判所の元長官や判事経験者からも違憲であるとの指摘がなされ、審議でも72年見解や砂川事件最高裁判決が集団的自衛権合憲の根拠になりえないことが明らかとなった。72年見解の作成に当たった吉國法制局長官は、砂川判決にふれたうえで、「集団的自衛の権利は行使できない」と答弁で明言している。公述人となった濱田元最高裁判事も、72年見解をもって「限定的な集団的自衛権は認められる」とする政府の主張は、「法律専門家の検証にたえられない。裁判所では通らない」と指摘するとともに、日本の自衛権が争われたわけではない砂川事件判決を根拠にすることも「間違っている」と断言した。

5.安倍首相が、集団的自衛権行使の代表的事例として強調した、ホルムズ海峡での戦時における機雷掃海や邦人輸送中の米艦防護について、政府の説明が二転三転し、いずれも立法事実がないことが明らかになり、「戦争法案」の必要性自体が崩れている。イランによる海上封鎖を前提にしてきた機雷掃海について、「特定の国が機雷を敷設することを想定していない」などとして、必要性を事実上撤回した。邦人輸送中の米艦防護についても、邦人が乗っているかどうかは「絶対的なものではない」ということが明らかになった。

6.「現に戦闘が行われている現場以外」へ活動が拡大することに伴う自衛隊員のリスクの問題も議論が尽くされていない。後方支援活動は安全どころか、最も危険な「兵站」活動であり、その拡大は武力行使の一体化につながる。さらに、米軍等の部隊への武器等防護の拡大(改正自衛隊法95条の2)によって、武器使用の範囲が際限なく広がっていくことになり、新3要件や国会承認といった手続きを経ず、事実上の集団的自衛権行使をなし崩し的に認めてしまうことになる。

7.集団的自衛権の前提条件である新3要件の「存立危機事態」をどう判断するかについて、「総合的に」と繰り返すばかりで、認定する客観的基準も示されず、あいまいさがあらためて浮き彫りになっている。「必要最小限」の範囲も、旧3要件と新3要件で大きく変わっている。「わが国と密接な関係にある他国」も明らかにされないままである。ISILへの空爆等に対する後方支援、空中給油や洋上給油に核兵器を搭載した原潜防護、核を投下しようとする戦闘機への給油、戦車やミサイル、毒ガス、クラスター弾、劣化ウラン弾、核兵器の運搬、ロケット弾や戦車砲弾、手りゅう弾の提供などへの法的な歯止めがないことも明らかとなった。時の政権の判断に白紙委任されてしまうことは大きな問題である。

8.テロの危険性や日本の原発、在日米軍基地が標的となる懸念など、国民が負うリスクについての議論も深まっていない。また、徴兵制について、安倍首相は、「明確に違憲で、導入はあり得ない」と断言するが、憲法の解釈が変更されれば合憲になりかねない。奨学金延滞者を対象とした自衛隊へのインターンシップの推奨や、民間企業の新入社員を自衛隊に派遣する長期自衛隊インターンシップ・プログラムといった、「経済的徴兵制」、「隠れ徴兵制」問題も取り上げられた。

9.自衛隊内部の文書も次々と明らかにされた。何一つ国会で議論されていない内容について、法案の成立を前提とした踏み込んだ議論を自衛隊が進めていた、「軍部の独走」は許されない。法案成立をアメリカに確約するなど、文民統制無視の確信犯である河野統幕長の招致も実現しないままである。

10.相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使するという専守防衛の定義について、政府は「いささかも変更していない」と繰り返している。しかし、法案では「直接侵略及び間接侵略に対し」(自衛隊法3条)が削除され、新3要件を満たせば自国が攻撃されていないのに反撃できることになっている。さらに、我が国への攻撃の意思のない国への攻撃も排除しないことが明らかとなった。専守防衛の定義が根底から覆されたにもかかわらず、詭弁を続けるのは問題である。海外任務の拡大に伴う軍事費増加の懸念や新しい装備の導入・増強についてもまともに答えていない。

11.さらに、審議すればするほど、様々な問題点や矛盾が明らかになっている。日本が第3国に集団的自衛権を行使した場合に当該国との集団的自衛権を理由に他の国が日本に武力攻撃する可能性があること、後方支援で派遣された自衛官にはジュネーブ条約が適用されず拘束されても捕虜として保護されないこと、海外での自衛官の武器の不正使用に関する条文がないこと、海外での邦人救出に当たって万単位の自衛隊を送ることに制限はなく国会承認もいらないこと、我が国を攻撃する国に後方支援する国に対し我が国が攻撃できないこと、自国防衛のための限定的集団的自衛権といいながら被援助国からの要請同意が必要であるという矛盾、しかも新3要件に他国からの要請同意が必要とは書かれていない問題など、まさに欠陥法案であり、廃案しかない。

12.各種調査では、世論の6割以上が「戦争法案」の今国会中の成立に反対している。そして、世代や職業、立場を超えた多くの皆さんが「戦争法案」廃案、安倍政権退陣を求める運動に立ち上がっている。「戦争法案」の本会議での可決・成立を阻止すべく、社民党はじめ野党6党は、安倍総理大臣に対する問責決議案、安倍内閣に対する不信任決議案など、あらゆる手段で対抗するとともに、院外の大衆運動と堅く連帯し、最後の最後まで戦い抜く決意である。

以上