声明・談話

2015年1月14日

2015年度政府予算案の閣議決定にあたって(談話)

社会民主党
幹事長 又市征治

1.「名ばかりの好循環予算」、過去最大の「軍拡予算」

 政府は本日の閣議で、一般会計総額が過去最大の96.34兆円となる2015年度政府予算案を決定した。昨年提出された概算要求総額が100兆円を越えるとともに、総理の「自己都合解散」により窮屈な日程となり、先に決定された2014度補正予算と併せ事実上3年連続の「15か月予算」として編成された。日銀の第60回生活意識アンケートでは9か月連続で「1年前に比べ暮らしにゆとりがなくなってきた」人の割合が増加し、実質賃金が17か月連続で減少、消費者物価が18か月連続で上昇する中、国民の生活不安を払拭し、暮らしの底上げにつなげることが求められていた。しかし、今回の予算案の内実は、統一自治体選挙を意識した約100兆円規模の「名ばかりの好循環予算」であるとともに、防衛費は3年連続の増額を認める過去最大の「軍拡予算」となった。そういう意味で、世界一企業が活動しやすい国、戦争できる国づくりを目指す安倍政権のカラーが鮮明になった予算であり、国民や中小企業の期待に応えるものとはなっていない。

2.「消費税依存税制」

 昨年4月1日からの消費税率8%への増税により、税収(当初予算)に占める消費税の割合が2年連続で最大となった。税収全体では54.45兆円となり、1992年度の実績を上回る「23年ぶりの高水準」とされる。また、税収等の「回復」により、新規国債発行額は36.86兆円に減少した。しかし、23年前の1992年度と2015年度の税収を比較するのであれば、法人税収は13.7兆円から2.7兆円減少し、所得税収は23.2兆円から6.8兆円減少する一方、消費税収は5.2兆円から11.9兆円も大幅増加して17兆円を超え、税体系が、「消費税依存税制」となっている。すなわち、この間の復興特別法人税の前倒し廃止なども含めた法人税減税、所得税率のフラット化などによる減収分を、消費税で穴埋めしてきたにすぎない。

 新規国債発行額を36.9兆円前後と14年度から4兆円以上圧縮するが、借金依存体質は変わらない。財政健全化にあたっては、国民生活関連予算の削減や、消費税増税ではなく、法人税・所得税を基幹税と位置付け直すとともに、公平・公正を重視した税制抜本改革、トリクルダウン理論にもとづくアベノミクスを断念し、雇用の安定・地方や中小企業の底上げによるボトムアップ型の経済政策への転換を通じて、税収を増やす道筋をつけるべきである。

3.大企業・資産家優遇税制

 昨年12月末に決定された与党税制改正大綱において、法人税の「先行減税」が決定された。今でも法人税は大企業ほど、様々な特別措置や政策減税によって負担は軽減されている。一方、消費税率10%への増税は、2017年4月から「確実に実施」するとしており、まさに大企業の法人税減収分を消費税増税、さらには円安で苦しむ中小企業への課税強化で穴埋めするものである。「法人税減税と消費税増税」、さらには「相続税増税と贈与税減税」など、利益や資産を貯め込む大企業や資産家の「減税対策」ばかりが先行し、公平・納得の税制とは言えない。大企業と中小企業の格差拡大、高所得世帯と低所得者世帯の格差固定化につながる。

4.切り捨て進む社会保障

 社会保障費が初の31兆円台に膨らんだとはいえ、大きくは「自然増」であり、臨時福祉給付金や子育て世帯臨時特例給付金の減額、介護報酬の減額、生活保護費も減額されるなど社会保障の切り捨てが実施された。臨時福祉給付金や子育て世帯臨時特例給付金は消費税率の8%引き上げへの対策だったはずで、減額は筋が通らない。

 介護報酬は、9年ぶりのマイナス改定で2.27%の引き下げとなったが、2006年度のマイナス2.4%(過去最大)に次ぐ大幅な引き下げ(障害者福祉の報酬は据え置き)である。報酬の引き下げにより、特別養護老人ホームなどを中心に、サービスの低下、職員の減少が一層深刻化することが予想される。政府は、介護や障害者福祉の現場で働く人の賃上げのための加算措置を拡充するというが効果はわからない。事業者が月1万2千円の賃上げに相当する待遇改善計画を提出すれば、賃上げ分の報酬を税金や保険料から出す仕組みだが、賃上げ分の報酬を除くと、事業者自体に入る報酬は実質4%ほど減る(障害者福祉の報酬では実質1.78%減額)。事業所が実際に取り組むかどうかは疑問である。

 また、生活保護は、家賃として支給する「住宅扶助」、冬の暖房費などに応じた「冬季加算」の実質引き下げが行われる(約30億円ずつの減額)。2013年度から段階的に行われている「生活扶助」(生活費)の引き下げ分を合わせ、前年度より総額約320億円の減額となっており、最低保障制度のラインを下げ、格差を拡大しかねない。

 本年4月から実施される「子ども・子育て支援新制度」には、7175億円の予算が確保された。これまで政府は、新制度の本格実施には、新たに年間約1兆円(量的拡充0.4兆円と質の改善0.6兆円)が必要であると説明し、消費税 10%によって0.7兆円を確保するとしてきた。0.7兆円は確保したものの、まだ0.3兆円は目途がつかない。量の拡大(待機児童の解消)、質の改善(職員配置増など)、職員の待遇改善の面で不安が残る。また、新制度の本格実施により潜在的待機児童が顕在化する。それへの対応が必要だ。

 年金受給資格を25年から10年に短縮する無年金者の救済、所得が低い年金生活者に月最大5000円支給する「年金生活者支援給付金」の実施が消費税増税(10%)が2017年4月に先送りされたあおりで延期された。格差の拡大が著しい中で行われた消費増税で低所得者の生活が脅かされており、当初の予定通り取り組むべきである。

5.国際競争力強化の観点からの大規模公共事業推進

 公共事業費は、前年度同水準とされたが、社民党が求めてきた防災・減災対策や計画的・効率的な老朽化対策が推進されている。その一方で、三大都市圏環状道路、国際コンテナ戦略港湾の機能強化、首都圏空港の強化など、国際競争力強化の観点から大規模公共事業が推進されている。また、整備新幹線について35億円が増額され、新規着工三区間の建設前倒しが図られている。財源は貨物調整金の見直しやJRからの貸付料の前倒し活用等によって工面して国費を抑えたというが、きわめて苦しい対応となっている。人口減少等で厳しい経営が見込まれる並行在来線対策や鉄道運輸機構の巨額の借入などの課題もある。

 交通政策基本法を地域から活かす取り組みが求められている中、「地方創生」といいながら、地域公共交通ネットワークの再構築関係が290億円余にとどまったのは残念である。「住宅確保要配慮者あんしん居住推進事業」が四分の一に大幅に縮減されているが、住宅確保対策が不十分にならないよう配慮すべきである。建設業、運輸業、造船業・海洋産業における人材確保・育成には総額で12億円を計上したことは一定評価される。

6.聖域化され3年連続増の防衛予算

 財政事情が苦しい中で防衛予算は聖域化され、前年度比964億円増(前年度比2%増)の4兆9801億円に拡大した。14年度補正予算案に含まれる2110億円と合計すると5兆1911億円となり、概算要求額(5兆545億円)を上回る過去最大の規模となっている。国産哨戒機P1を20 機・3504億円、垂直離着陸輸送機オスプレイ5機・516億円、水陸両用車30両・203億円、イージス艦建造費・1680億円、F35戦闘機 6機・1032億円など、集団的自衛権行使を容認した閣議決定を踏まえた新たな武器購入や、離島部の拠点整備費等が盛り込まれた。第2次安倍政権発足後3年続けての増加で、いまのペースでいけば2014年~18年の中期防衛力整備計画の枠(5年間で23兆9700億円)を上回るのは必至であり、「安全保障環境が厳しさを増している」として、防衛費が際限なく膨張していくおそれが強い。

7.沖縄県民の民意を無視

 アメリカ軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を進める費用として、今年度よりも1078億円多い1736億円が計上された。辺野古沖合の埋め立て工事に必要な費用として1522億円や、新たな飛行場の設計費やサンゴ移植の費用等が計上されている。昨年末の沖縄県知事選挙や総選挙の結果によって、辺野古の新基地建設反対の民意が明確になる中で、強引に建設工事を進めようとする予算計上は到底認められない。在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)も1912億円に増額された。

 一方で、沖縄振興予算は今年度の当初予算より162億円少ない3340億円となり、5年ぶりに前年度を下回った。特に、使いみちを地元の自治体が自主的に決められる一括交付金に未消化分が多いとして、今年度より141億円少ない1618億円とされた。菅官房長官は知事交代と沖縄振興予算の減額はリンクしないとしているが、辺野古新基地建設に反対を掲げて当選した翁長新知事への圧力であることは明確で、あまりにも姑息な手法と言わざるを得ない。

8.大規模農家偏重の農林水産関係予算

 農林水産関係予算は、総額2兆3090億円で前年度0.8%減とほぼ横ばいとなった。安倍政権の成長戦略に基づき「農林水産業の成長産業化」、「強い農林水産業」とスローガンは踊っているが、大規模農家偏重で小規模農家や中山間地域切り捨ての懸念は今回も払拭されていない。コメの直接支払い交付金は760億円で、半減された前年度と比べてもさらに46億円減少した。米価変動補填交付金も廃止される一方、「収入減少影響緩和対策移行円滑化交付金」385億円が新規計上されたが、26年産限りの限定措置で付け焼き刃の感は否めず、昨秋からの米価大幅下落に直面する農業者の懸念を払拭するにはまったく不十分だ。規模の大小を問わず安定した経営下支えのためには戸別所得補償制度の縮減・廃止方針を見直し、法制化と拡充が欠かせない。

 また、危機的な状況にある畜産・酪農関連の予算が増額されたことは当然だが、飼料や子牛など深刻な生産コストの高騰を踏まえれば、直接所得補償制度の導入や「肉用牛肥育経営安定特別対策事業(新マルキン事業)」補てん割合の10割への引き上げ、輸入粗飼料価格への補填など、安心して再生産できる抜本的な対策が急務だ。いずれにしても今回の予算増がTPP交渉妥結への露払いになってはならない。

9.本予算において中小企業振興をこそ中心に据えるべき

 アベノミクスの失敗により、中小企業に経済の好循環が「波及」していないため、先の補正予算で「中小企業」支援を実施したが、本予算では1856億円にとどまった。政府は大企業に恩恵が集中する法人税率の引き下げを行うとともに、中小企業への課税強化まで目論んでいる。緊急時の経済対策(補正予算)だとして中小企業対策をするのではなく、アベノミクスを転換し、本予算において中小企業振興をこそ中心に据え、手厚く支援すべきである。

10.分権・自治の視点から問題が残る地方財政

 住民生活と地域経済を支える地方財政の規模は、3年連続で増加し、1.9兆円増の85.3兆円となった。国からの譲与税を含めた地方税は、消費税率が8%になった効果の平年度化で1.4兆円、景気回復による増収などで1兆円増えて40.3兆円と見積もられた。40兆円を超えたのは2008年度以来である。3年連続の減額となった地方交付税は、入口ベースで6000億円減となったものの、出口ベースでは前年度比1000億円減の16.8兆円にとどまった。その結果、歳入で自治体が自由に使える一般財源総額(地方税、交付税、臨時財政対策債)は、1.2兆円増の61.5兆円と過去最大となった。「危機対応モードから平時モードへの切替え」として、別枠加算と歳出特別枠の廃止が焦点となったが、別枠加算は0.38兆円減の0.23兆円となったものの、「必要な額を確保」し、また、歳出特別枠は0.35兆円減の0.85兆円となったものの、「実質的に維持」された。あわせて、自治体側が求めていた、自治体による雇用対策や人口減少対策の費用として1兆円の「まち・ひと・しごと創生事業費」が新設された。

 今回の地方財政対策は、「地方創生」のための経費も新設され、いわゆる「総額確保」という点では、マクロの自治体財政を量的には保障したといえる。しかし、財政力が弱い自治体では税収は伸びていないというミクロの問題への対応や、地方自治・地方分権の視点から改めて論議すべき課題も残っている。たとえば、この間、歳出特別枠に依存し何とか雇用対策や地域活性化に努力してきたが、臨時・不安定さは否めない。今回、実質的には前年度同水準を確保したとはいえ、今後は、実需に基づく必要な経費を具体的に積み上げていく見直しも検討すべきである。また、今回、交付税の法定率が変更されたことは歓迎するが、国・地方協議の場で十分な議論があったのかという手続き問題や、見直しで増えた効果が900億円にとどまっており、十分な中身なのかどうかなどの課題は残っている。巨額の財源不足は続いており抜本的な交付税率の見直しが必要である。地方側が廃止を求めていた赤字地方債は、14年度から1兆円以上減らされ4.5兆円に抑制されたものの、依然として高水準であり、赤字地方債の元利償還財源を赤字地方債に頼る構造は残っている。「まち・ひと・しごと創生事業費」も、行革努力や地域経済活性化の成果指標を反映した「地域の元気創造事業」、地方法人税の交付税原資化、地方公共団体金融機構の金利変動準備金の活用など、分権・自治の視点から問題が残るものが財源となっている。

11.復興は予算を増額すれば事足れりではない

 東日本大震災の復興特別会計は14年度当初比7.2%増の3兆9087億円となり、住宅再建や市街地再生の予算が200億近く増額されているが、被災3県で計画されている2万9000戸余りの災害公営住宅のうち昨年11月末までに完成したのは全体の14%、防災集団移転で整備が完了したのはおよそ3割と、計画が大幅に遅れている。2020年東京五輪や国土強靱化法、安倍政権の経済対策「アベノミクス」による円安や公共事業増に伴って人件費や建設資材費が高騰し、建設業者が手薄となっているのが遅滞の大きな要因であり、単に予算を増額すれば事足れりとの姿勢ではなく、政権を挙げてあらゆる政策を動員して災害公営住宅の整備などを急ぎ、被災者が安心して暮らせる環境を一刻も早く取り戻すよう強く求める。

 安倍政権は東日本大震災の「集中復興期間」を2015年度までとしており、総額25兆円の復興予算枠も今回突破し、不足分を決算剰余金などから繰り入れている。しかし昨年末現在で避難者が23万人超を数え、減少のペースが年々鈍っている現状一つを見ても、復興は未だ道半ばであり、復旧・復興が成し遂げられるまで集中復興期間を延長し、その間、国の特例的な財政支援を継続・拡充することは絶対に必要で、国として単に15年度予算案を示すだけでは被災者に対する責任を果たしたとは言い難い。集中復興期間の延長と特例的財政支援の継続・拡充はもちろん、未だ明確にされていない16年度以降の中長期的な復興事業メニューを早急に明示することなしに、「被災地の復興なくして日本の再生はない」との安倍首相の発言に説得力は生じない。まして予算案を決定した本日の閣議に竹下亘復興相が遅刻という醜態は、復興に対する安倍政権の本気度を大いに疑わせる。

 今回の復興予算では「中小企業組合等災害復旧事業(グループ補助金)」の増額と使途拡大を打ち出しているが、それ以外にも復興交付金の採択対象の拡大や「津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金」の対象拡大など、国による復旧・復興事業への各種財政支援を検証して弾力的運用と拡充を徹底すべきだ。特に復興交付金は、大幅減となった14年度当初予算と比較しても500億近く減額されており厳しく批判されるべきだ。震災から間もなく4年、被災地ごとに異なる復興の進捗状況や、生活再建のニーズに即応して国の支援制度を的確・柔軟に継続・修正・拡充し、各地域の主体性・独自性も十分に発揮できる形に改めるよう求める。

 14年度に新設された「福島再生加速化交付金」に加えて「福島生活環境整備・帰還再生加速事業」に68億円を新規計上しているが、政府が早期帰還を強調するあまり、避難している人・住み続ける人・戻る人を区別することなく支援すると定めた「子ども・被災者支援法」の理念が蔑ろにされることのないよう重ねて求めたい。

12.「生活重視でピースでエコ」な予算への転換を

 社民党は、消費税率5%への減税や「いのちとみどりの公共投資」で内需を喚起し、雇用の安定化、社会保障や教育・子育て支援の拡充など、家計の可処分所得を増やす施策に万全を期すため、「生活重視でピースでエコ」な予算への転換を求め、次期通常国会において国民生活擁護の立場から積極的に論戦を展開していく。

以上