声明・談話

2014年6月25日

「骨太の方針」と「成長戦略」の閣議決定にあたって(談話)

社民党幹事長 又市征治

1.政府は昨日、いわゆる「骨太の方針」と「成長戦略」改訂版を閣議決定した。昨年の発表時に株価が急落した事態を恐れたためか、企業や外国人株主向けの施策の羅列となっている。法人税率の引き下げや年金資産のリスク運用など、国民生活よりも株価を重視する安倍政権の姿勢が露骨に現れており、言語道断である。国民には実感なき「景気回復」を年末まで演出し、消費税率10%への増税を決定するという政権の意図が見え透いている。

2.法人税について、数年で「実効税率を20パーセント台まで引き下げることを目指す」としている。しかしこの間、1998年、99年、2012年と法人税率は引き下げられ、さらに安倍政権においては、多くの法人向け政策減税を実施するとともに、復興特別法人税も前倒しで廃止している。この間、法人税減税の一方で、賃金が減少し続け、企業が利益剰余金をため込むだけとなったことは周知の事実であり、原材料費の高止まりや消費税増税による「物価上昇」の中で、国民の実質賃金はさらに低下している。税率引き下げによって、日本の立地競争力を高めるとしているが、企業への各種アンケート調査においても、投資判断の際に法人税負担を最大の要因としている企業は少なく、立地競争力なるものが高まる保証はどこにもない。

3.この間の法人税減税、所得税率のフラット化による税収不足こそが財政悪化の大きな要因であるにもかかわらず、企業や外国人株主に配慮し、法人税率は引き下げる一方、それを穴埋めするかのように消費税増税によって財政健全化を目指すというのは、到底、国民が納得できるものではない。また、消費税増税の目的であったはずの社会保障の充実は放棄され、「聖域なく見直し」「徹底的に効率化・適正化」される一方、オリンピック準備やリニア新幹線などを口実に不要不急の公共事業を膨張させ、「積極的平和主義」の名のもとに防衛予算を拡大し、経済の軍事化をはかることは断じて容認することはできない。

4.雇用・農業・医療の岩盤規制に穴を空けると称する「成長戦略」改訂版についても、いのちと暮らしをリスクに晒し、社会に「ドリル」で穴を空ける危険なものと言わざるを得ない。

5.特に「時間ではなく成果で評価される新たな労働時間制度」の導入により、労働者は成果のみを求められ、「柔軟な働き方」どころか、逆に長時間労働を強いられ、健康面に悪影響を及ぼすことになりかねない。労働者を守る労働基準法が定める法定労働時間規制の適用を、なし崩しにするものであり、断じて許されない。

6.「女性の活躍」推進についても、実効性のある最低賃金の引き上げ、非正規雇用労働者の処遇改善等が打ち出されておらず、単に女性を労働市場に放り出すことになりかねない。また、保育所の待機児童の解消、小学生を放課後に預ける学童保育の定員を5年で30万人分増やすなどとしているが、専門性が担保されず安上がりの「子育て支援員」制度でとりつくろうとしている。

7.外国人が日本で働きながら技術を学ぶ「技能実習制度」は、労働法違反、雇用先の不正行為や人権侵害が横行するなど、労働問題が山積している。拙速な拡大は、使い捨てにされる安価な外国人労働者の増加につながりかねない。

8.農業委員会・農業生産法人・農業協同組合の一体的改革についても、現場の声を十分に聞いておらず、「TPP 交渉の早期妥結に向けて引き続き取り組む」とするなど、企業の農地所有に道を開く意図が明らかであり、小規模農家や中山間地域の切り捨てにつながりかねない。

9.現在、健康保険で認められている診療方法や薬は、慎重な審査を経て、治療効果が認められ、安全性も確認されたものが承認されている。混合診療が拡大されれば、治療効果と安全性に疑問のある医療が野放しになる怖れがある。混合診療は、お金の有無によって、国民の健康や生命に格差や不平等をもたらす。

10.さらに、「インフラシステム輸出戦略を積極的に実施」するなどとして、原発輸出を進めるとともに、武器輸出の拡大にも道を開こうとしていることは明らかである。また、カジノを中心とする統合型リゾート(IR)についても、かつてのリゾート開発を想起させるとともに、WHO(世界保健機関)も警告するギャンブル依存症を拡大する恐れがあるなど数多くの問題がある。

11.今回のいわゆる「骨太の方針」や「成長戦略」によって、安倍政権の大企業優遇ぶりは、ますます顕著となった。政府の唱える企業収益の向上が賃上げにつながるという「好循環」(トリクルダウン)論は、すでに破綻している。「世界で一番ビジネスがしやすい環境」を作り、一部の企業や「優秀な人材」の「成長」を図るのではなく、世界で一番「働きやすい」環境を作り、社会全体の「底上げ」を図るための施策の実現に向け社民党は、全力をあげていく決意である。

以上