声明・談話

2014年3月14日

安倍政権による教育・教科書、地方自治への不当介入を許さない(談話)

社会民主党幹事長
又市 征治

1.沖縄県石垣市、竹富町、与那国町で構成する教科用図書八重山採択地区協議会内における中学校公民教科書選定に関し、竹富町は石垣市、与那国町が使用している育鵬社版ではなく東京書籍版を使用している。昨年10月、下村博文文部科学大臣は、このことを「違法」状態であるとして、沖縄県教育委員会に対し竹富町に是正要求をするよう、地方自治法に基づく指示を行った。しかし、本日、県教委が審議を継続している最中にもかかわらず、直接竹富町に対する地方自治法に基づく是正要求を強行した。国が都道府県を飛び越えて市町村に直接是正要求を発出するのは初めてのことである。改憲を標榜し戦争準備のための教育の国家統制にひた走る安倍政権の、教育や地方自治への強権的な介入を断じて認めることはできない。社民党は、不当な政治介入を撤回するよう、強く要求する。

2.竹富町教育委員会による教科書採択は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律(地教行法)の「教育委員会の職務権限」である「教科書その他の教材の取扱いに関すること」(第23条6号)の規定に基づき、その採択権限を正当に行使したものである。一方、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律(無償措置法)は、「採択地区内の市町村の教育委員会は、協議して種目ごとに同一の教科用図書を採択しなければならない」(第13条第4項)としているが、その趣旨は、「地域内の教師の共同研究の上にも、また児童、生徒の同一地域内における転校の際にも便利である等、教育上の利点がある」(1963年3月8日文部大臣趣旨説明)ということにすぎない。文科省自身が教科書採択地区の小規模化に努めるよう都道府県教委に通知していたし、1997年には、当時の橋本内閣が将来の学校単位の教科書採択に向け、法整備を検討する旨の閣議決定をしていることを忘れてはならない。教科書無償措置法と地方教育行政法との矛盾を長年放置したのは、国の責任であり、国が竹富町の子どもたちの使う中学校公民教科書の無償給付をしないとの一方的な扱いこそ、義務教育は無償とするとの憲法に反する行為である。

3.竹富町のある八重山諸島には、太平洋戦争末期、住民が軍命で強制移住させられ、三千人以上がマラリアで死亡した歴史がある。平和の大切さを伝えるのが教育の大きな役目であり、戦時中の惨事を伝えようとするのは町として当然のことである。また、そもそも教科用図書八重山採択地区協議会における教科書選定の経緯や答申の内容に疑問の声が上がっている。「新しい歴史教科書をつくる会」元会長らが執筆した育鵬社版は当初の推薦リストにはなかったし、一度は、3市町教育委員全員で協議し、多数決で東京書籍版を選んだ経緯もありながら、文科省が政治的にこの決定を無効として育鵬社版の教科書を押しつけようとしたことこそ非難されるべきである。

4.地方自治法245条の5第4項の市町村に対する是正要求は、事務処理が「法令の規定に違反していると認める場合」または「著しく適正を欠き、かつ明らかに公益を害していると認める場合」において、「緊急を要するときその他特に必要があると認めるとき」になしうるものであり、重大な法令違反に限られる。1999年7月8日の参議院行財政改革・税制等に関する特別委員会における附帯決議においても、「自治事務に対する是正の要求については、地方公共団体の自主性及び自立性に極力配慮し、当該事務の処理が明らかに公益を侵害しており、かつ、地方公共団体が自らこれを是正せず、その結果、当該地方公共団体の運営が混乱・停滞し、著しい支障が生じている場合など、限定的・抑制的にこれを発動すること」とされている。しかし、今回、竹富町の運営が混乱・停滞し、子どもたちの教育に著しい支障が生じているのか、大いに疑問である。

5.実際、竹富町では、文科省検定済みの教科書が子どもたちに無償で配布されており、教育現場において何ら混乱はない。しかも、政府は、野田内閣当時、照屋寛徳議員の累次の質問主意書に対し、地教行法より無償措置法が優先する旨の見解を示す一方、無償措置によらず教育委員会が自ら教科書を購入し生徒に無償で給与することは、無償措置法でも禁止されるものではないとの答弁書を閣議決定しており、重大な違法性どころか合法であると認定している。今回の是正要求は、国が是正を求めるべきやむを得ない事態には当たらず、緊急性も必要性も正当性もない。自治事務について、自治体の法令解釈権を無視し国の法令解釈権を優先するかのように、違法性を一方的に認定し強権を発動することは断じて許されない。

6.教育は地域の自主性が尊重されなければならない。そして、教育は人間の尊厳に関わることであり、政治介入で押しつけるべきものではない。今回の政府の強権的で有無を言わさぬような対応こそ、現地に混乱をもたらす、反教育的対応と言わざるを得ない。あわせて、今回の是正要求の背景には、石垣など沖縄県先島地域を南西諸島防衛の拠点として強化しようとする安倍政権の意図があるといわざるを得ない。戦争できる国づくりの一環であり、安全保障や戦争に親和性を持たせる教育の実現に向けた教科書攻撃である。

7.自治体は是正要求に従わなくても罰則はなく、30日以内に国地方係争処理委員会に審査を申し出ることもできる。また、国が違法確認訴訟を起こし仮に勝訴しても、育鵬社版の使用を強制することはできない。社民党は、教育の政治的中立と地方自治を守るため、竹富町の教育の自主性を擁護するとともに、教科書を通じて国家統制を強めようとする安倍政権に対し、全力で立ち向かう決意である。

以上