声明・談話

2013年8月8日

集団的自衛権行使容認のための強権的な内閣法制局長官人事は許されない(談話)

社民党党首代行・幹事長
又市 征治

1.政府は本日午前の閣議で、内閣法制局の山本庸幸長官を退任させ、後任に小松一郎駐フランス大使を充てる人事を決定した。内閣法制局は、政府提出の法案や政令案について、憲法や他の法令と矛盾がないかを事前に審査するほか、憲法や法令の解釈で政府の統一見解を示す役割を担うことから、政府の「憲法解釈の番人」と呼ばれている。そして、法制局長官は憲法の解釈について国会で答弁し、その精緻な積み重ねが政府の見解となってきた。過去60年、内閣法制局長官は、法解釈の継続性や職務の専門性に基づき、同局の法制第一部長を経験した内閣法制次長が昇任するのが慣例であった。法制局の経験がなく、しかも外務省から長官が起用されるのはきわめて異例である。集団的自衛権行使の容認に向け、従来の慣例を破ってまで強権的に人事権を行使したことは明らかである。

2.集団的自衛権について、内閣法制局は、「国際法上保有しているが、行使は憲法の限界を超え、許されない」との見解を保持してきた。一方、小松一郎氏は、2006年の第一次安倍内閣当時の外務省国際法局長であり、集団的自衛権行使容認を打ち出した当時の安保法制懇の実務に携わり、懇談会の報告書の取りまとめにも深く関わっていた。今回の人事は、集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈の見直しに意欲を見せる安倍晋三首相が主導したとも言われ、容認論者をトップに据えて国会答弁に備えるつもりなのは間違いない。政権の意に染まないからと言って答弁者の首をすげかえ、自分たちに都合のいい見解を出させようというのは、余りに恣意的であり、姑息である。

3.同時に、内閣法制局は、常に時の政権から距離を置き、チェック機能を果たす客観性が求められてもきた。歴代政府はその解釈を尊重し、長年にわたる国会議論の末に、国の形を規定する重要指針として醸成された歴史がある。今回の強権的な人事権の行使は、時の政権から距離を置き、客観的な見解を示さなければならない法制局のチェック機能をそぐとともに、法制局に対する信頼を損ないかねない。

4.先に麻生副総理(兼財務相)が「ある日気づいたらワイマール憲法がナチス憲法に変わっていた。誰も気づかないで変わった。あの手口、学んだらどうかね」と発言したが、首相の意思に逆らう法制局をけん制し、圧力を加える狙いもあるとすれば、ナチス同然の恐怖政治そのものである。そして、集団的自衛権の行使は、専守防衛を旨としてきた日本の安全保障体制の大転換であり、9条改憲は難しいから96条の改憲手続きを先行しよう、96条の前に解釈を変えてしまおう、そのために抵抗する法制局長官を交代させてしまおう、というのは、「ナチスの手口」に学んで国民をないがしろにしようという、危険極まりない考えであると受け止めざるを得ない。

5.憲法を守らなければならないのは、政府であり、国会であり、裁判所である。内閣法制局長官が時の政権の意思によって解釈を変更できるなら、企業の「お抱え弁護士」と変わらない。今まで検討を重ねて確定させてきた解釈を時の政権の意思で自由に解釈することは許されない。社民党は、法制局に対し、毅然として矜持を持ってこれまで積み重ねてきた見解を堅持し、国民から求められている責務を果たすよう求めていく。

以上