声明・談話

新ガイドライン関連法案本会議代表質問

1999/3/12

社会民主党・市民連合
辻元 清美

 私は、社会民主党・市民連合を代表して、政府提出の新ガイドライン関連2法案と1協定に反対する立場から、小渕総理大臣に質問いたしますが、最初 に一言申し上げたいことがあります。本日は内閣提出の法案を取り下げていただく本会議だと思って出て参りました。なぜなら、この本会議場での提案趣旨説明 がまだ行われる前に、自民党を中心として、政党間で法案修正の協議がすでに進められているからです。修正の必要ありと政府・与党がお認めになっている法案 などは欠陥法案に他なりません。取り下げて、提出し直すべきではないですか。まず、総理には、この事について、お答えいただきたいと思います。

さて、私たち社民党は、冷戦後における日本周辺及びアジア・太平洋の安全保障を揺るぎないものにするためには、相手に軍事カを振りかざして威圧し たり屈服させるのではなく、どんな相手にも忍耐強く対話を求め、軍事力の行使に至らない安全保障環境醸成への努力、および多角的で相互依存的な対外関係を 作り上げていくことこそが、まず、重要であると主張してきました。ところが、今、提出されている法案などは日本の周辺で行動するアメリカの軍事行動に日本 が官民あげて、ほとんど無条件に協力体制を作ろうというもので、まったく逆の方向を目指し、かえってアジアの緊張感を高める事につながると言わざるをえま せん。

さらに、安保体制のグローバル化ともいえましょう。

そこで、総理にお聞きします。韓国の金大中大統領が推進する太陽政策や、ヨーロッパの社民党政権に採用された協調的安全保障や、国連の経済社会理 事会やNGOが主張する人間安全保障など、冷戦後世界に広がるこのような新たな安全保障の潮流をどう受け止めていらっしゃるのでしょうか。

総理、あなたは外務大臣として1997年9月、新ガイドラインに合意されました。

新ガイドラインは安保条約の運用方針を定めたものに過ぎないと認識しておりますが、その新ガイドラインの合意を根拠として、実質的な安保条約の改訂に繋がるような法律を作成することはできないはずです。

安保条約の調印者である当時の岸信介総理、そして、後の内閣も維持してきた有権解釈、つまり「不当な侵略が現実に行われ、わが国の平和と安全が害 せられた場合のみこの条約が発動される。その場合を含め自衛隊はいかなる場合においても領域外に出て実力行使することはありえない」という範囲内でなけれ ば、内閣の行政行為としての国際約束はできないはずです。内閣がその行政権限を越えて、安保条約で決めてもいないことをやろうとするのなら、まず、安保条 約の改訂を国会に諮り、その批准、承認を求め直すのが筋です。いったい、新ガイドラインは、安保条約の第何条に根拠を持っているのですか。「安保条約の目 的達成のため」とか「その精神に基づき」では答弁になりません。はっきりと、第何条か、お答え下さい。

また、自衛隊は、自衛隊法第3条・任務において「直接侵略及び間接侵略に対し、わが国を防衛する」と定められています。それなのに、なぜ、専守防 衛に任務を限定された自衛隊が「日本周辺地域」に出て行き、アメリカ軍の後方地域支援に従事できるのですか。総理の答弁を求めます。

総理、また、あなたは「後方地域支援は武力行使と一体のものではないので、憲法違反ではない」とおっしゃっているようですが、はたして、そうでしょうか。

まず、いったい、「後方地域」なんて存在するのでしょうか。

私は1991年1月17日、湾岸戦争勃発の日、この戦争を目の前で目撃しました。私は約500人の若者と民間国際交流団体ピースポートがチャー ターしたギリシアの客船オセアノス号でオマーン沖200キロの安全航路を航海中でした。突然、そこにアメリカの原子力空母セオドア・ルーズベルト号が現 れ、艦載機を発進させ始めたのです。この時、私はピースポートの責任者の一人として船長と共に米軍から「ただちに航路を変更せよ」と、いう連絡を受けまし た。その時の理由は、戦闘地区ではないが、アメリカの空母がいるから攻撃対象になる可能性があるというものでした。

総理が「安全な後方地域」があるとお考えでしたら、それはあまりにも現実離れしたご認識であると、私は自分の経験からも考えますが、いかがですか。

心の底で「そうだよな。後方も前方もないよな」と実は思っていらっしゃるのなら、この際、はっきり、勇気を持って、そうおっしやって下さい。

また、イラン・イラク戦争の際、安全水域を航行していて攻撃を受けた世界の船舶は、419隻に達し、船員333人が死亡、317人が負傷、日本関 係船舶は19隻が攻撃され、日本人船員2人の命が奪われました。このような経験から、全日本海員組合のみなさんは「中立国ですら安全は守られなかった。戦 争国に荷担すればなおさら安全ではない」と危惧を抱き、今回の新ガイドライン関連法案などに反対の態度表明をされています。

総理はこのような現場からの声と動きをどのように受けとっていらっしゃいますか。

また自衛隊法一部改正案は、緊急事態における在外の邦人輸送に船舶を使用できるようにするものですが、武器の使用について、自衛官は「その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる」と規定しています。

明治以来、日本はいくたびか戦争をしていますが、自国が侵略されて始めた戦争は一度もありません。邦人保護や物資輪送の名目で、軍隊が、まず、国 外へ出て行き、その後、全面戦争に至ったという歴史の教訓を、皆さん、私たちは再び、思い起こすべきではないでしょうか。海外において武力の行使を行わな いと言い切れるのですか。

総理、後の歴史に叱責されない答弁をお願いします。

最後に、地方自治体との関連でお尋ねします。地方自治体や民間の協カについて、野呂田防衛庁長官は「一般的な協力義務として、協力するのは当然で常識だ」と答弁されています。

これでは、自衛隊が行わない武器・弾薬の輸送を民間に肩代わりさせ、地方自治体が管理・運営する空港・港湾を米軍に義務ではないとしながらも、半強制的に使用させようとすることになり、いわば国家総動員体制を敷こうとするもののように感じられます。

日本国憲法は第8章に地方自治の章を定めています。国と地方自治体は対等な関係であって、いかなる場合でも、命令、服従の関係に変えることはできません。

今、小渕内閣が「地方分権推進一括法案」を準備され、さらにこのような分権を推し進めていこうとしていらっしゃる、この時期に、なぜ、地理的に定義さえできない国外における対米軍事協力だけ、例外にしようとなさっているのですか。

地方自治体の長が、住民の安全を守るために、管理下にある港湾に危険物を積んだ軍艦が入港するのを拒否したり、公立病院を野戦病院にしないと意義 申立したりするのは、当然の権利だと考えますが、総理は「それは地方自治の範囲ではない」と言われるのですか。はっきりとお答え下さい。

この権限を奪うようであるならば、憲法で規定する地方自治という基本原則を崩す重大な憲法違反であると考えられますがいかがですか。

この様に、新ガイドラインはこれまで政府が国民に説明してきた安保条約の解釈からも、取り繕えない不整合と飛躍があるうえ、その実行性を確保する 関連法案は、憲法上重大な疑義がある事実を改めて指摘し、これらの新ガイドライン関連法案と協定の撤回を求めて、私の質問を終わります。