声明・談話

1998年10月27日

社会民主党

社民党「緊急雇用対策」(案)

はじめに

現在の深刻な景気の停滞をもたらしている消費不況の根源的な要因は、単純な可処分所得の低迷といった要素よりは、老後の不安や雇用不安などに象徴(代表)される生活全般にわたる不安にあると、とらえることこそが正しい認識と考える。

したがって、国民の生活実感に根差し、かつまた暮らし優先の施策を重視する姿勢を鮮明にするためにも、(1)雇用不安を早急に解消するための十全 な財源措置をともなう総合的な施策の実行(国政の最重要課題として政策をの総動員を行う)(2)安心できる生活設計と表裏一体の関係にある年金や介護制度 などに対する信頼回復一一などに積極的に取り組まねぱならないのである。

同時に、金融再生のために60兆円もの公的資金の枠組みが用意されたことに対する国民感情(不満)にも配慮する必要がある。

これとの比較で、例えば雇用対策に視点を移すならば、(金融機関の自己保身的な融資姿勢がもたらした)貸し渋りに苦しみながらも、従業員の雇用を 維持するために奮闘する中小零細企業に向けた助成措置は万全なのか。あるいはまた、倒産など雇用の激変に伴う生活不安から失業者を守る措置は十分か一一な どの声にも、真摯に応えていかなくてはならないのである。

この基本的考えに基づき、「失業を生まない、つくらない」ための「緊急雇用対策」を提起する。

また、労働時間の短縮による「ワークシエアリング(労働の分かち合い)」の効果を通じた雇用創出を図っていく観点から、法的拘束力を有する時間外労働等の規制のあり方についての検討も進めていくこととする。、

1 一般会計からの積極的な財政出動

雇用維持・創出に係る万全の対策をあくまで優先する観点から、労働保険特別会計の枠に止まることなく、雇用情勢に顕著な改善が見られるまでの当分の間、一般会計による財政出動も積極的に実施する。

この枠組みを前提に、

(1)雇用不安の発生を事前に予防する施策としての「雇用調整助成金制度」の助成期間の抜本拡充(現行は再指定を含めて最大200日→時限的に2指定期間のフル適用とし、教育訓練と休業を合わせて最大400日の支給へ)

(2)雇用の需給関係のミスマッチを最小のものにしていく立場から、失業給付と「結合した形」での能力開発プログラム・体制等の抜本的拡充策及び訓練延長給付(最長2年)の積極適用を最重視すること。

(3)その上で、会社都合の失業者に対する一般的な失業給付についても支給期間のかさ上げ(個別延長給付現行最高90日に係わる対象者枠の弾力的運用)一一などに取り組む。

2 失業者の積極的な採用企業に対する優遇税制の創設等

失業者(特に中高年失業者)を、常用労働者として2名以上かつ5%以上(注)の水準で雇い入れた事業主については、法人税等の軽減・免除の措置を時限的に講じる。

また、「新規雇い入れ助成制度」の助成期間の大幅上乗せも行う

(時限的に、現行1年間→2年間、重度障害者は現行1年半→3年間)

(注)適用対象は、中小企業にあっては「2名以上」とし、他は「2名以上、かつ採用時点での正規雇用者に対する被採用者の割合が5%以上」というダブルスタンダードとする。また、その採用割合等の高まりに応じて税の軽減度合いを強める方式とする。

3 職業能力開発システムの再構築、

福祉、介護、情報・通信、環境関連などの成長が見込まれる分野において雇用機会を創出し、円滑に労働移動を進めていく観点等も踏まえ、時代・経済社会のニーズに対応できる職業能力の開発システムを再構築する。

具体的には、企業内の能力開発等に対する支援強化を図りつつ、公共職業訓練校のプログラム等を充実・拡充し、再就織にあたってステップアップできるような技能を身に付けることができる「再教育機関」としての機能を明確にする。

同時に、能力開発関係給付金の適用対象となりうる事業場等に対する掘り起こしを積極的に進めつつ、雇調金制度の使い勝手をよくするために、中小企 業等が地域産業グループ・工業団地グループなどを単位として労働者の教育訓練を行った場合の事務コストの軽減等(申請手続きの簡略化や手続き費用に対する 助成など)の改善を図る。

4 「未払賃金の立替払制度」の迅速処理等

倒産など届用の激変に伴う生活不安に対処するための「未払賃金の立替払制度」のいっそうの迅速化を図りうる体制整備を進めるとともに、国の立替払いの上限(親)の引き上げを図る。

(時限的に、未払い賃金の上限を170万円→250万円にアップし、現行立替払いの上限額136万円→200万円(=250万円×0.8)

なお、立替払いの上限額が未払い賃金の上限の「8割給付の水準」となっているのは、給与所得者等の収入に占める税金・社会保険料等の割合を勘案したものといえる)

同時に、この制度の対象外となっている内職等の従事者に対しても、見舞金などの支給を行う。

また、労働者の失業後の生活支援の一環として、賃金債権を優先確保するための法制度の整備を早急に進める。

5 再女労働者の両立支援対策等

少子・高齢社会の急速な進展に柔軟に対応できる雇用システムを構築するためには、男女労働者の仕事と家族的責任(育児・介護)の両立を支援していくことが極めて重要となる。

この観点から、育児・介護休業を取りやすくする環境整備の一環として、育児・介護休業給付に係る所得保障水準の60%への引き上げ(なお、中間的 には支給期間の延長も視野に入れた検討を進める)及び、育児・介護雇用安定助成金の拡充(労働者の育児・介護サービス利用料を援助する制度を新たに設けた 事業主向け助成金の引き上げ 中小企業40万円→100万円。なお、大企業の現行30万円は据え置きとする)等を図る。

また、65歳までの継続雇用を定着させていくため、65歳定年制及び継続雇用制度の普及に向けた取り組みを強化する。

6 公的関与による雇用創出策

1)福祉ヒユーマンパワーヘの積極的支援

福祉は経済成長の単純な恩恵でもなければ、ましてや経済成長の足を引っ張るものでもない。福祉への投資こそが、雇用創出をはじめとした裾野の広い経済波及効果をもたらし、老後や子育てなどの不安を一掃しうるのである。

福祉型の新たな経済産業構造への大転換と併せ、福祉ヒューマンパワーを積極的に養成し、市民のNPOなどとも連携して、健全で活力ある高齢社会を創造していくことが「時代の要請」ともなっている。

この理念に基づき、社民党は、福祉ヒューマンパワーの身分保障を確立し、雇用機会を確保する。俸給表策定など必要十分な所得保障を含む待過改善を 早急に進め、安定したサービスの提供と福祉水準を維持しうる身分保障を確立する。また福祉人材センター等の拡充、人件費助成や負担軽減措置、絶対的に不足 している福祉関係施設の新増設などにより、就労の場を倉出・確保する。

身分保障と雇用機会という車の南輪を確固たるものにし、ホームヘルパーの100万人雇用創出など、以下の課題に取り組む。

(1)介護・ヒューマンパワーの確保

高齢者・障害者介護の基本であるホームヘルパー(96年度実績延べ11.9万人)をさらに養成し、「寝たきり=寝かせきりゼロ」を実現するため、2010年までに100万人の雇用を創出する。また、各種研修など専門的技術・知識修得のための積極的な支援を実施する。

(2)子育て・ヒューマンパワーの確保

乳幼児、病児、障害児など保育を必要とするすべての子どもが受け入れられるよう、保育所の新設・拡充を行い、必要な保育士や給食調理員などの雇用を確保する。また、学童保育を拡充し、指導員の身分保障・労働条件の確立と雇用の創出を図る。

(3)リハビリ・ヒューマンパワーの確保

OT(作業療法士)・PT(理学療法士)・ST(言語療法士)などリハビリ・ヒューマンパワーについて、99年度で終了する新ゴールドプランの目標値1.5万人の雇用を完全に確保する。

(4)その他ヒューマンパワーなどの確保

コメデイカル・スタッフ(医療における医師以外の医療関係職員)や福祉施設で働く寮母、介護・看護職員、介護保険制度の成否の鍵をにぎっている介護福祉士、ケアマネージャーなど、医療や介護分野における多様な人材と充分な雇用機会を確保する。

また、「地方版エンゼルプラン」の策定を地方自治体に義務づけ、地域によって偏りのある、子育て支援に必要な人材等の基盤整備を強力に進める。

すべての自治体に、数値目標を盛り込んだ障害者計画の策定を義務づけるとともに、PSW(精神科ソーシャルワーカー)などの拡充を進める。

2)30人学級の早期実現による教員雇用の創出

教育は「未来への先行投資」である。日本の将来を担う子どもたちには人間性あふれる環境の下で学習できる機会が保障されるべきである。

また、そのような教育の場でこそ雇用が創出されなくてはならない。子どもたちの学習二一ズにきめ細かく応えるとともに、いじめ等の子どもをめぐる 問題の解消を図るために、30人学級の実現を喫緊の課題と位置付け、小・中学校教員の積極採用を進める(当面は25万人の雇用創出を図りつつ、中期的には 45万人の雇用創出を目指す)。

3)公共事業への失業者の積極雇用

政府または地方公共団体の行う公共事業の発注においては、雇用情勢に顕著な改善が見られるまでの当分の間、別途定める基準に基づき、受注事業主に対して失業者の雇用を促進する措置を義務付けることにする。