声明・談話

地球温暖化防止京都会議(COP3)に対する基本的方針

一九九七年九月二六日

社会民主党拡大環境チーム

1、地球温暖化の問題点と基本的認識

(1)深刻な温暖化の影響

地球の危機が、迫っている。地球の平均気温は、現在、約一五度であるが、産業革命以来の人間活動の集積によって二酸化炭素などの排出量が急増したた め、気候メカニズムが変化して異常気象が頻発する恐れが出てきた。地球温暖化に関する世界の研究者を網羅した国際組織「気候変動に関する政府間パネル (IPCC=IntergovernmentalPanelonClimateChange)」によれば、一九世紀末以来の一〇〇年間で、地球の平均気温 は〇・三~〇・六度上昇し、海面は一〇㎝~二五㎝上昇、このまま進めば西暦二一〇〇年には現在より温度は二度、海面は五〇㎝上昇すると予測されている。そ の結果、国土の消失や高潮被害の増大、あるいは突然の冷害や局所的な異常降雨・異常乾燥など、深刻な影響が予想される。日本においても、水資源、農業、沿 岸地域の都市や人の健康に大きな被害が予測され、それに対する対策費は莫大なものとなる。

(2)早急に温室効果ガス排出削減を

このような気候変動の危険を回避するためには、二酸化炭素その他の温室効果ガスの排出量をいますぐに減らしていかなければならない。IPCCは、地 球の二酸化炭素濃度を現時点での濃度(三五〇ppmv)で安定化させるためには、直ちに排出量を五〇~七〇%削減しなければならないと報告している。一九 九四年三月に発効した「気候変動枠組み条約」は、当面の目標として先進国が二〇〇〇年までに温室効果ガスの排出量を一九九〇年レベルに戻すことを求めた。 しかし、多くの先進国はこれを達成することが難しく、とりわけ日本では、一九九五年の二酸化炭素排出量は、一九九〇年に比較してすでに八・三%の上昇を見 ている。

(3)議長国としての責任

今年一二月一日から一〇日間、京都で二〇〇〇年以降の先進国の温室効果ガス排出削減対策の強化を定めるべく「気候変動枠組み条約、第三回締約国会議 (COP3=ConferenceofParties3)」が開かれ、数値目標を含む議定書が採択されることになっている。日本はその議長国として、リー ダーシップを発揮することが国際的に求められている。社会民主党は、この会議に臨むにあたって、地球利益に関する世代内公平性と世代間公平性の原則に立 ち、以下の方針を持って、地球未来への責任と議長国としての責任を果たすべきだと考える。

2、地球温暖化防止に関する基本的方針

温暖化防止を真に実現するため、以下の四点についてのしっかりとした対策と実行が必要である。

(1)まず、「気候変動枠組み条約」において国際的に定め、また日本において閣議決定を行った「二〇〇〇年までに、温室効果ガスの排出量を一九九〇 年レベルに抑える」約束を遂行するため、今日のこの時点から一九九九年一二月までの約二年間、政府・自治体・企業、そして市民は、最大限の努力をするこ と。

(2)今後、未来社会における地球の二酸化炭素濃度を抑制するため、できるだけ早期に排出量の削減を開始し、その後休むことなく大幅に削減していく ことが必要である。そのため、二〇〇〇年以降の具体的な削減目標数値を、二〇〇五年と二〇一〇年の二回に定めて、議定書に盛り込むこと。

(3)日本政府が提示する温室効果ガスの削減目標は、次の点を総合的に配慮すること。

1)人間として未来世代に責任を持ち、永続的な地球環境構築に努めること

2)EUが削減目標一五%、アメリカ合衆国がほぼ〇%という国際的状況の中で、議長国として先導性を示しつつ多国間調整の基準となりうる数値を提示すること

3)提示する目標数値は、日本で実現可能だという裏付けがあること。

(4)とりわけ、この目標数値を提示するに当たっては、単に現在生活の延長としての値ではなく、必要な具体的施策を実行するという強い政治的意志を前提に決定すること。

3、議定書に盛り込むべき内容

(1)削減目標:

温室効果ガス排出量の削減目標は、一九九〇年実績より二〇〇五年において六%、二〇一〇年において一二%とし、これを拘束力を持って定めること。

(2)削減対象ガス:

削減対象は、二酸化炭素とする。ただし、メタン、フロンなども削減対象にする場合は、各種の温室効果ガスをGWP(地球温暖化指数)で換算して足し 合わせた数値(バスケット方式)によって削減目標を定めるのではなく、その温室効果ガス毎の数値(ガスバイガス方式)によって定めること。この場合、特に 二酸化炭素に比較して温室効果が大きい代替フロン(CFC)については、その必要性が大きい。また、二酸化炭素の森林などへの吸収を合算しての数値(ネッ ト方式)ではなく、あくまで排出のみの数値を基準とすることが大切であるが、森林再生努力の必要性も強調すること。

(3)政策・措置:

自動車燃費基準(燃料当たりの走行距離)のように各国が共通して実施しやすく、かつ実施して大きな成果が期待できる事項について盛り込むこと。また、いずれの先進国にあっても、郵便切手の一部代金を温暖化防止に役立てる国際ルールを確立すること。

(4)途上国対応:

途上国に自主計画の確立を要請し、それに対応して債務の削減または地球環境基金(GEF)からの援助を決定すること。

(5)その他の関連施策:

排出権取引は、認めない。

4、目標を達成する方法

上に示した削減目標を達成するには、それに必要な具体的施策を実行しなければならない。温室効果ガスの排出は、石炭、石油、原子力、自然エネルギー などを資源とするエネルギー供給と、産業、業務、家庭、運輸などの部門におけるエネルギー利用(需要)との相関によって決まる。

このエネルギー需要と供給の状況は、以下の四点によって決定される。

1)人々の価値観に基づくライフスタイル、

2)GDPなどに現れるそのときの経済状況、

3)政府と自治体の政策と措置、そして、

4)技術の進展具合。

二一世紀に続く日本の未来社会を想定するに当たっては、上記四つの側面をそれぞれ次のように方向づける。

1)人々の温室効果ガス削減についての自主的参加を奨励し、運動を高める。

2)経済については、大量生産、大量消費、大量廃棄の生産と生活の様式を改善して、安定経済を基本とする。

3)政策については、以下の五部門(電力・エネルギー転換部門、産業部門、業務部門、家庭部門、運輸部門)につき、大胆にして実行可能な政策と措置を定める。

4)技術については、エネルギー重要と供給の関係を大幅に変えることができる革新的技術を、ここしばらく期待することが難しいと判断し、今ある技 術を多角的に利用する。ただし、原子力利用については、度重なる事故などを考慮して、温暖化対策として今より増加させることのないように求める。

5、地球温暖化防止に関わる市民理解と市民による自主的運動の促進

市民は、自分が使うエネルギーは誰かが供給してくれるものだという意識を変え、たとえば太陽光発電器を自分の屋根に取り付けるなど、エネルギーを自 分で作り、自分で使うという自覚的な取り組み、言い換えるならば「分散型エネルギーシステム」の確立が必要である。政府と企業は、この市民・NGOの取り 組みを支援するため、助成事業の拡大を実行すべきである。

6、日本における温暖化防止のための具体的政策立案と措置の確立(別表参照)

政府と自治体による政策立案と措置の確立は、別表参照のこと。なお、炭素税等の経済的手法を導入する際には、利得に対して課税をするという考え方ではなく、温暖化に責任を負う。エネルギーの消費者も応分の負担をするという公平性の概念が必要である。

7、地球温暖化防止のための法律の確立

二〇一〇年における二酸化炭素排出量を、一九九〇年レベルの一二%減に抑えるということは、一九九五年の時点で八・三%の超過を含んでの削減である から、今後二〇一〇年までの一三年間、低位の経済成長を前提に考えるにしても、これを実行するには強固な実行意志が不可欠である。

これを実現するには、今日の重要課題である行政改革、経済構造改革、財政構造改革、金融システム改革などの改革内容と密接に関連しており、これらの改革は地球温暖化防止の視点をふまえて立案されなければならない。

また、別表に掲げた各種の施策は、各個別法の改正によっても実現できるが、これを包括する地球温暖化防止のための法律を制定する。さらに、一九九〇 年に定められた「地球温暖化防止行動計画」とそれに伴う「関連施策」を抜本的に見直すとともに、一九九九年に見直しが予定されている「環境基本計画」にお いて温暖化防止の視点を重視する。