声明・談話

第140回通常国会橋本総理の所信表明演説に対する

土井たか子社会民主党党首の代表質問

 


私は社会民主党・市民連合を代表して橋本内閣総理大臣の施政方針演説に対して質 問いたします。質問を始めるのに先立って、ペルー・リマの日本大使公邸で反体制 武装グループによって人質となられた同胞、ペルー、ボリビアの方々の一日も早い 解放に向けて、日本政府が一層の努力を傾けることを望みたいと思います。また、 被害が広域化し、深刻化している日本海の重油流出事故についても待ったなしで す。これを災害と捉え、災害救助法の発動も考え有効な対策が、迅速にとられるこ とを望みます。救援にかけつけたボランティアの方々の中に犠牲者が出たことに胸 が痛みます。つつしんで哀悼の思いを捧げます。

さて、私は質問の最初に、まず、どのような考え方を基礎にお聞きするのかを第一 に明確にしておきたいと存じます。

 

 

弱者に配慮した行財政の再建を

私たち社会民主党は昨年秋の特別国会で橋本さんを首相にと投票し、現内閣に対 して閣外協力の立場を取ることに致しました。それは端的に言うならば、どの政党 も過半数を取り得なかった状況のなかで、村山内閣以来の連立与党でありました自 民党を比較第一党に選んだ国民の意思を重くみるとともに、少数となった社民党が 新政権の政策に対して一定の影響力を保ちたいと願ったからであります。本日ここ で致します質問も、当然ながらその立場からのもので、建設的によりよい政策を国 民の為に作り上げていくプロセスの一環であると考えております。与党質問として お耳触りの点が、もし、あったとしても、その意味に受けとっていただくことをお 願いしておきます。

行政改革、経済構造、金融システム、財政、社会保障構造、教育の六つの改革は、 橋本内閣にとって命がけで取り組んでもらわなければならない大仕事であります。 これはとりもなおさず将来の日本の国の存亡に関わる問題であります。

日本の財政・経済が抱える現在と将来の危機については、橋本さんご自身も、昨年 末の予算委員会で、「この状況を続ければ破滅しかない」とおっしゃいました。今 通常国会のこの議場におきましても、すでに昨日から、各党の代表質問とそれに対 する答弁などを通じて危機回避の努力が真剣に論じられております。社会民主党は 行財政改革が焦眉の急であると考えていることはもちろんです。

当然のことながら、強い大きな政治の力が財政再建の大義をかざして国の中をおし 渡って行くとき、それにつぶされて泣く人々があってはなりませんし、施策という ものは、むしろそうした弱い立場の人々への目配りを大切にすることを出発点にし なければならないと思うのであります。

例えば、今回の予算編成にあたって、整備新幹線の問題がクローズアップされまし た。旧国鉄債務も片づかないうちに、一層の赤字を生むものという非難があり、ま た地元国会議員や族議員の猛烈な運動が顰蹙を買いました。それらの批判は根拠の あるものと言えましょう。しかし私はそうしたことと同時に、新幹線ができる陰で 地域住民の日常生活にとって大切な在来線が、本数が減るなどますます利用しにく くなるようではいけないということを指摘したいのであります。新幹線の建設は遠 距離を忙しく往来するビジネスマンたちにとっての便利と、比較的近い距離の通学 や用足しをする通常の生活者との便利とをバランスさせて考える必要があるので す。

また、公共投資の大どころである道路の建設に対しても、利用価値の低い道路が建 設されるという批判がありますが、新しい道路を建設するばかりでなく、車椅子で も通行できるように小さな段差も取り払う、また狭い歩道を一層歩きにくくしてい る電柱をなくし、電線を地下に埋める、ますます増えている高齢者の人身事故を防 ぐように工夫する、などの道路の質の向上が議論されなければなりません。

要は、赤字減らしのために予算を縮小してければなりませんが、やみくもに削るの でなく、予算の使い途について前例にとらわれず、国民の真の豊かさのために考え る姿勢が必要なのであります。族議員の温床となっている業界団体などと違って高 齢者や子どもたちなど援護の少ない分野で犠牲を強いられる人々を、いつも気にか けていなければなりません。この点、改めて教育改革が重視されたことに期待が集 まっています。しかし、いじめが広がっていくなかで充分なサポ-ト体制はまだあ りません。行政の努力は言うまでもなく、子どもたちを支える民間ボランティアの 人たちの力を相談現場に生かしていくことを真剣に取り組んでいただきたいので す。総理、よろしゅうございますね。

 

 

信頼回復の第1歩は情報の公開から

さて、最近、急激に金融破綻、財政の累積赤字を聞いて、人々の間にはわが国の悲 観論や衰退論がどんどん歩き始めております。何故これほど赤字が累積されたかと いう理由と原因が示されないまま、負担増に国民はますます政治離れをしているの ではないでしょうか。総理、国民につらいことをお願いする前にこのような事態に 陥ったことを、国民の前に、謙虚に、正直に、そして率直に語るべきではないで しょうか。そのことが将来への道を開くことになると思いますが、総理のご存念を 聞かせていただきたいのです。

国民の信頼を失うのも政治なら、信頼を取り戻すのも政治です。先送りやごまか し、言い逃れは禁物です。

そこで、まず第一に、「公開」の原則と国民監視の原則について申し上げます。

行財政の情報公開は度々論議されておりますが、例えば財政硬直化の原因と言われ ている公共事業について言えば、一般会計だけでも十兆円近くをかけております。 もし、予算の添付資料に数量・単価はもとより、積算の基礎、予定されている場所 等が明記されていれば国会の審議のあり方は全然違ってくるのではないでしょう か。これが明らかにされてくれば会計検査院に対して具体的な検査要請を行うこと も実効性を持つ事になります。言ってみればこれが国民監視の原則です。

さらに、九六年度一般会計から二〇兆円、特別会計から二八兆円、計四八兆円の補 助金が、どう使われているか、しかもその補助金をめぐって政・官の不祥事が絶え ないとあっては、これに対して国民が怒らないはずはありません。補助金を廃止し てはどうかという声すらありますが、この際補助金をガラス張りにするためにも、 補助金の交付決定に際して、申請団体すべてに集まってもらい、交付額、決定理由 などの説明会を公開の場で行うことなど、補助金取り扱いのシステムを大改革すべ きではないかと思いますが、総理に、これらを合わせて改める決意がおありになる かどうかお尋ねいたします。

霞ヶ関からの天下り先である九二の特殊法人や、八八の認可法人をさらに洗い直し てみることが必要です。そして、二年なら二年と期限を定めて、有用な法人につい ては民営化にすることが急務であることはすでに度々指摘しております。

なお、このように財政運営をめぐる政府の手法や態度を改めることを前提として、 国会としても予算委員会の運営を改め、例えば財政投融資、公共事業、医療保険と いった最重要課題別の建設的な徹底集中審議を行うことなどが必要と考えておりま す。医療保険については公聴会で国民の幅広い意見を充分に聞き審議に反映させる ことを与党三党で合意いたしておりますが、患者負担を引き上げるより制度改革が 先決という姿勢で徹底的な努力が必要です。総理のこの問題への対応をお伺いいた します。

 

 

消費税改革~軽減税率の導入を

さらに、どうしても大切なのは「公平・公正」の原則です。昨年の相次ぐ政官の 不祥事を見るにつけ、国民の多くは税金を納める気持ちから遠のいていっておりま す。まして、その税金が不公平であればなおさらであります。どうしても触れなけ ればならないのは、逆進性の強い消費税についてであります。先の臨時国会では低 所得者に初年度の激変緩和措置をとりましたが、これを制度とすることが必要で す。さらに生活必需品への軽減税率の導入など公平な原則を徹底させる政治姿勢こ そが今問われているのではないでしょうか。

巷には只今の財政難の中で五%の消費税の税率をさらに引き上げるのではないかと 懸念する声すら満ちています。よもやこの懸念は的中しないでしょうね。総理、明 確にしていただきたいのです。「改革なくして増税なし」です。

特に阪神・淡路大震災の被災地で自立するために苦しんでいる人たちにとっては深 刻です。財政難の折であっても大震災の被災者には自立のための公的支援が是非必 要です。総理、ご努力いただけますね。

 

議員立法の推進で脱官僚と国会の活性化を

平成維新とも言うべき大改革は政府のみでなく、国会は国権の最高機関として、事 にあたらなければ出来ることではありません。

まず、はっきりさせなければならないことは、政治家と官僚の姿勢の問題です。そ れは財政が私的利益のために悪用されることのないよう、政・官の腐敗を防止する ということです。かねてより企業・団体からの政治献金は禁止することを訴えて参 りました。政府、自民党にとっては痛い事であるとは思いますが、昨年の政治資金 収支報告を見ましても、企業献金の方は一つも減らないで、政党助成金を上積みし ているというのが実態です。改革に本気で取り組もうとする立場からここで再度、 私たちは、国家公務員倫理法の制定や企業団体献金の禁止について提唱致します。 そればかりではありません。この緊急事態にあたって、議員の歳費を据置きにする ことくらい考えて当然ではありませんか。

次に議会の活性化の課題でございます。今までは「唯一の立法機関である」立場を 忘れ、霞ヶ関発信の政治が議会でまかり通ってきました。第一回国会から五十年 間、政府提出の成立法案は六五八〇件、それに対して議員提出衆法の成立法案は九 六四件、参議院のそれは一五六件にしか過ぎません。行財政改革の諸法こそ、国民 の代表である議員が自ら立法してこそ初めて生きたものになると確信致します。官 からの情報を公開させ、従来と異なり、与党も積極的に議員立法すべき時期にさし かかっております。各党とも改革に異論のあろう筈はございません。議会で活発な 討論デモクラシーを確立しようではありませんか。今日のような事態に立ち至った ことは、われわれ議会人にも責任がありますが、行政優位の制度は行政側にも大き な責任があります。総理、この点についての御所見をうかがいます。

国会がその本領を発揮してこそ、初めて国民からの我が国の置かれている立場に理 解と協力が得られると信じます。いわば「合意」の問題です。以上、私は大改革に ついての原則とも言うべき「公開」「公平・公正」「合意」を申し述べました。

 

 

アジア諸国との友好と平和を

次に外交・防衛問題について若干のご質問をいたします。

総理は、今年発足三十周年を祝うASEANを歴訪されました。アジアに目を向け た外交姿勢に敬意を表します。

いまさら申すまでもなくASEANは急速な経済発展を成し遂げ、それを背景に政 治的にもその発言力は国際政治のなかで重きをなしつつあり、そのようなASEA Nの国々の発展と変化を肌で感じ、より緊密な関係を持つことは、アジアの平和と わが国の国益にとって不可欠であります。

歴訪後、総理は、シンガポ-ルにおいて政策演説を行なわれましたが、私は一応そ れなりの一定の評価をいたします。

しかし、その政策演説に表現されていない部分について、私なりの疑問が生じてお りますのでお尋ねいたします。

アジアの諸国と真の友好関係を構築するためには、過去の歴史認識、とくに加害者 としての歴史認識が欠如するとたちまち友好関係にひびが入ります。このことは今 まで心ない発言で、外交問題となった事実が如実に物語っております。今回総理の ご発言には、この点をうかがうことができませんでした。思想的にあえて触れられ なかったのか、とさえ思えてまいります。それは私の危惧であるかどうか、明確に ご答弁をお願いいたします。

あわせて、村山前政権が戦後五十年記念事業として打ち出した「アジア歴史資料 センタ-」の設立は、その実現性が見えて参りませんが、その後どのような経緯に なっているかお示し願いたいのです。

また、歴代首相が繰り返し強調してこられた「軍国主義への反省」が姿を消してい ることであります。総理は、日米安保体制の重要性を説き、「アジア地域の安定と 経済的繁栄の一種の公共財」と発言されております。「日米安保体制が公共財」と いう耳慣れない言葉が、それぞれ勝手に解釈され、一人歩きするようなことになれ ば国の外交姿勢が問われましょう。この際、ご発言の趣旨を国民にわかりやすい言 葉で、ご答弁願いたのです。

 

 

日米安保再定義~解釈改憲を許さない

昨年四月「日米防衛協力のための指針」を見直すことが合意され、総理とクリン トン大統領との共同声明の後、九月、見直しの「中間報告」が出されました。これ に対し中国は、「条約の性格が変化した」と強く反発し今日に至っております。ま た、韓国をはじめアジア諸国のなかには、わが国の戦前の行動から「軍事大国化の 第一歩」という警戒感は依然強く残っております。このようななかで、今回「わが 国は軍事大国にならない」と従来歴代首相が述べてきた言葉をわざわざ省かれた理 由はどこにあるのか、ご説明願います。

日米関係はわが国の外交にとって重要な柱であり、日米安保体制は世界の平和と安 全にとって必要であることは認識いたしております。しかし、米国とは異なったわ が国の平和憲法があり、集団的自衛権の行使は認めておりません。もし、邦人救 出、難民対策などに名を借りてなし崩し的に集団的自衛権の行使を禁じた憲法の解 釈を変える、いわゆる「解釈改憲」を行なうようなことがあるとしたら、わが党と して当然見過ごすことのできない事態となります。橋本内閣は集団的自衛権につい て「従来の政府見解を変えるべきでない」と思いますが、明快なご答弁をお願いい たします。

 

 

在沖縄海兵隊の撤退を

日米安保体制の維持が両国の利益につながるとお述べになっているが、基地に関 する不均等な負担は、沖縄の人々の上に相変わらず重くのしかかっております。昨 年十二月私は沖縄を訪問し、大田知事さんら関係者の声を聞いて参りました。政府 のそれなりのご努力は多といたしますが、地元では、「基地の県内たらい回し」と か「新たな琉球処分」といった声が満ち満ちておりました。日米両国政府は基地の 大幅変更を好まず、現状維持という思惑だけで、経済振興策というアメを用意し、 沖縄県民をなだめる手法を取り続けるようなことがあれば、決して沖縄県民は納得 しないでしょう。別の見方をするなら、国に対し、地方分権の在り方を問われてい ることでもあります。総理は、「沖縄問題を内閣の最重要問題」と位置付けておら れます。この際、沖縄県民の更なる理解を得るためにも、手始めに、約三千三百人 の海兵隊の一%でも五%でも削減する外交交渉をされるべきではないかと思います が、いかがでしょうか。苦悩に満ちた沖縄県民に対し、抽象論でなく、総理の口か ら沖縄の太陽と青空のような具体的な青写真を沖縄県民に語りかけてもらいたいと 思います。

 

 

非核社会をめざせ

最後に、「潜在的核保有国」とか「準核保有国」といったいわれなき言葉が国際 社会にはいまだに囁かれております。この際、橋本内閣は、わが国の国是である 「非核三原則」をいかなることがあろうとも順守され国際社会で核廃絶への努力を 発揮していく決意をお聞かせいただきたいのです。 政治の施策のなかには取りかえしのつくこともあれば取りかえしのつかないことも ございます。こと、外交、安全保障問題は一旦始めれば対外的に取り返しがつきま せん。それだけに国の針路を見誤らせないようなご答弁を切に願いまして私の質問 を終わります。