2006年4月21日

教育基本法「改正」に向けた与党合意についての見解

社会民主党幹事長 又市征治

1.自民党・公明党の与党・教育基本法「改正」に関する協議会は、4月13日、与党・教育基本法「改正」に関する検討会の「最終報告」について合意し、これを政府に提出し、にわかに教育基本法「改正」法案が文部科学省から提出される可能性が高まっている。

2.4月13日にまとまった与党の検討会の「最終報告」は、「教育基本法に盛り込むべき項目と内容」について、前文と条文に対応する18項目についての考え方を示し、教育基本法を全面的に改悪しようとするものとなっている。「最終報告」に見られる与党案は、次のような多くの問題点をもっており、これに基づく新教育基本法案の作成・国会上程には断固として反対する。

[1]「愛国心」表記に関して、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う」という文言となった。基本的に、個人の内面、心を法律で縛ることは思想信条の自由の侵害に当たる。「統治機構の国を愛するのではない」としているが、それは「愛国心教育」の歯止めにはならない。国旗国歌法の国会審議で政府が何回も「強制しない」と答弁したにもかかわらず、日の丸・君が代も国旗・国歌法の際の答弁を超えて現場では強権的に拡大されている。「愛国」に対する思想や態度が教育の場において強制されることになれば、「(憲法の)理想の実現は、根本において教育の力にまつ」とした教育基本法の基本性格を根底から変質させられ、教育が国家中心のものへと変えられてしまう。
[2]現行法の前文にある憲法9条と深く結びついた「真理と平和を希求し」を「真理と正義を希求し」に変えているが、これは「正義の名」において行われた戦争への反省から生まれた平和憲法との関係性を払拭させるものであり、残された「日本国憲法の精神にのっとり」という文言を無意味なものにしてしまう。
[3]教育の目的から「個人の価値をたつとび」を削除し、前文に「公共の精神を尊び」「伝統を継承し」などを挿入した。これは、個人と国家との関係を180度転換して、まず、国家があって個人はそれに従う存在、教育は個人のためではなく国家のために行われるということに大転換するものである。
[4]「教育の目標」と前文に「国と郷土を愛する」「公共の精神」など20を超える徳目が盛り込まれている。修身教育の形を変えた復活であり、心の中にまで国家や行政が踏み込んでくることになる。
[5]教育行政の目標について、「教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立」という義務が削除され、、「国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない」という文言に変更された。これまで教育行政は国民の教育権の保障のための条件整備役だったものが、「公正」・「適正」という名目で、日の丸・君が代の強制や「愛国心教育」の押しつけなどを認める規定振りになる。
[6]現行第10条について、「教育は、不当な支配に服することなく」は残されたが、「国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである」という文言が削除され、「この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきもの」となった。さらに「国は、…教育に関する施策を策定し、実施しなければならない」と規定している。このことによって、政府・行政が教育内容や教育方法に公然と介入するおそれが強くなる。「国民のための教育」から「国家のための教育」への180度転換であり、<不当な支配=教育行政(文部科学省や都道府県教育委員会)が教育内容に介入すること>を禁じている規定が、<不当な支配=市民や教職員が教育行政のやることに介入すること>を禁じる規定に逆転されることになる。
[7]「男女共学」の規定が削除され、「家庭教育」が新設されている。男女平等の教育を否定し、家庭のあり方にまで国家が介入しかねない危険をもっている。子ども・国民の学習権・国民の教育権を保障する立場からではなく、国家の教育方針に国民全体を従わせ、動員するものとなりかねない。
[8]「改正」によって、過去に国民を不幸にした国家主義や、教師が子どもに上から価値観を押しつける教化主義が強調され、政府の危険な意図を感じる。教育現場で国が統制を強める根拠規定にもなるだろう。「大学教育」など目新しい規定も盛りこまれたが、「改正」を正当化するためのものであり、現行法にはないが、現実には何の不都合もないものにすぎない。

3.教育基本法は、戦後憲法の精神を生かす教育をするためにつくられた。教育基本法は、憲法理念を具体化し、個別の法律・政策のもとになるような理念や制度の基本を定めたものである。現在の教育が抱える問題は、教育基本法に起因するものではない。与党は70回以上も議論を尽くしたと言うが、異常な秘密主義で行われた密室の産物である。教育の主人公である子どもたちや、親・国民に秘密のままの拙速な密室論議や政治的妥協の産物を許してはならない。もっと幅広い国民的な議論が必要である。憲法・教育基本法改悪の問題は密接につながっている。闘争運動を一層強化し、各地で反対世論を高めるとともに、広範な諸勢力と連携し、新教育基本法案の上程阻止に向けて全力をあげる。

以上