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2005年4月12日 社民党政策審議会

障害者自立支援法案に関する社民党の見解

〔法案の要点〕

[1] 障害者の福祉サービスを市町村で「一元化」
 サービス提供主体を市町村に一元化。これまでばらばらだった身体・知的・精神の三障害の福祉サービスを共通の制度により提供する仕組みに変更する。

[2] 障害者の雇用促進施策と障害者福祉施策を連続的にできるようにする

[3] 市町村が地域の実情に応じて障害者福祉に取り組めるよう規制を緩和する

[4] 利用に関する手続きや基準を透明化、明確化する

[5] 費用負担の仕組みを変更
 (公的負担医療の見直し、食費等の実費負担、応能負担から応益負担に変更)
 (国の義務的負担)

 *法の規定は介護保険に準拠し、将来的に介護保険法と合流できるよう設計されている。2005年10月から段階的に実施。

〔背景〕

▽02年「新しい障害者基本計画」の策定(障害者施策の統一した法体系の必要性を指摘)

▽03年度から身体・知的障害者の障害福祉サービスの利用方法は、従来の措置制度から、 利用者が受けたいサービスを選び、指定事業者と契約を結んで利用し、その費用として 市町村が支援費を支給する支援費制度に変わった。

▽支援費制度実施により、在宅サービス利用が急増、03年度で130億円、04年度で 275億円が不足し、支援費制度の見通しの甘さが露呈された。
 (国からの不交付分が市町村の「歳入欠損」になるという前代未聞の事態になった)

▽04年10月「今後の障害保健福祉施策について−改革のグランドデザイン案」提出

▽05年2月、「障害者自立支援法案」提出(支援費制度は同法案よって切り替えられる)

〔問題点〕

[1] 当事者無視、あまりに拙速な法案
 法案の土台となる「今後の障害保健福祉施策について−改革のグランドデザイン案」が示されたのは昨年10月12日、法案が国会に提出されたのは2月10日である。
 法案は、障害保健福祉施策を根本から変える内容を含み、範囲は広範に及ぶ。当事者の意見を聞く機会を全くもたず、このような大きな法案を、短期間に提出するのはあまりに拙速である。

[2] 公費負担医療の見直しによって自己負担は増(05年10月から実施予定)
 法案は、障害の種類によって異なっている医療費負担軽減の仕組みを統一することを題目に、利用者の自己負担を重くしている。
 現行、医療費一律5%である精神通院公費については、一定所得以上が3割負担と非常に重い負担になる。(低所得者は10%、生活保護は0%)
 また、医療機関指定制度の導入、一年ごとに医療の必要性や所得状況の確認が行われる。
 更生医療、また18歳未満の児童が対象の育成医療(心臓疾患・腎臓機能等)についても利用者の医療費負担は増え、入院時の食費(材料費、人件費)は原則自己負担となる。

[3] 応益負担の導入は障害者の生存権を揺るがす(06年1月から実施予定)
 支援費制度は、利用者がそれぞれの収入に応じて利用料を負担する「応能負担」である。法案は、これまで障害者福祉には使われてこなかった「応益負担」を導入し、サービス量に応じて定率1割の負担を利用者に求める仕組みに変わる。併せて、所得に応じて利用者の月額負担の上限が設定されている。しかし、負担の上限は障害程度区分([6]参照)によって、個々に決められたサービス量の範囲内の上限である。さらに、必要なサービス(介助)については、全額自己負担か、ボランティアをさがして補うことになる。施設入所者の食費や光熱水費も原則自己負担となる。
 障害の程度は本人の意思ではないにもかかわらず、「応益負担」は、障害が重ければ重いほど、利用料負担を重くする。障害者が地域で当たり前に生きていくために必要なサービスを、「応能負担」から「応益負担」に変えることは、障害者の生存権を揺るがしかねない。
 多くの障害者の収入は障害年金(障害基礎年金1級で約83,000円/月、2級で約66,000円/月)のみである。「応益負担」の導入は、障害者の収入の実態と整合性を持った負担の仕組みとはいえない。

[4] 世帯収入に基づく減免措置で、家族による利用制限も
 法案は、低所得者への措置として、所得に応じた月額負担上限を設けているが、低所得者の減免措置は、個人単位ではなく、「生計を一にする者」の全体の経済力を勘案するとしている。(「生計を一にする者」の範囲は法の施行時までに検討)
 世帯収入に基づく低所得者の減免措置によって対象者は非常に絞り込まれる。保護者・家族の判断でサービスの利用を制限するケースも増え、特に、知的障害者の多くは親と同居しているため影響が大きい。

[5] 国および都道府県の負担を義務化は、国の総額管理につながる
 国が補助する仕組みであった福祉サービス(在宅サービス含)等の費用は、国が義務的に負担する仕組みに改まる。このことは一定評価をする。しかし、国の定める標準的なサービスの基準(質・量)は示されておらず、利用者が必要とするサービスと合致するかどうかには疑問である。福祉サービスに係る費用を国が総額管理することにもつながりかねない。

[6] 課題多い新障害程度区分
 支援費制度は、市町村の担当者が障害程度区分に基づき支給を決定していた。そのため利用者は生活状態、ニーズに即したサービスを受けることが可能であったが、反面、自治体による格差が問題になっていた。
 法案は、認定の客観性を担保するために市町村ごとに審査会を設置し1次・2次判定を設ける。新しい障害程度区分が開発できるまでは、当面は要介護認定を活用する方針だ。介護保険制度の要介護認定は、身体機能に偏っているため、精神・知的障害者が正当に評価できるかどうか課題が残る。また、利用者のニーズ、自己決定を尊重したサービスの決定が行われるのかどうかも課題である。

[7] 「移動」は社会参加の基本−移動支援は介護給付で
 支援費制度ではホームヘルプサービスに位置付けられていた「移動支援」が、法案では介護給付から外れ、市町村または都道府県が行う地域生活支援事業(他に相談支援、日常生活用具、手話通訳の派遣等)の一つに位置付けられている。(重度の障害者については介護給付の位置付けのまま)
 「移動支援」は社会参加の基本であり、生活を支える根幹のサービスある。自治体の事業にまかせるのではなく、移動にかかわる介護は全て介護給付にきちんと位置付けるべきである。

[8] 施設体系・事業体系の見直しに不安
 法案は、「地域生活支援」「就労支援」へ対応するために、各種施設の運営基準の緩和、施設基準の緩和、運営主体の緩和等を行い、五年程度をかけて新体系へ移行するとしている。しかし、施設の内容、質の向上が示されなければ、施設の入居者、家族、施設の運営者に不安を招くことになる。
 また、グループホームは地域生活の場としてさらにその役割を期待されている。しかし、法案は、障害程度別の設定がされている。障害程度ではなく、同じ障害を持つ仲間で生活を支え合うことも可能なグループホームの利点は尊重されるべきである。人数規模を大きくすることについては「ミニ施設」となる可能性が強い。

 日本は、国際的なノーマライゼーションの潮流のなかで、'93年に障害者基本法を制定(04年改正:基本理念に「障害を理由とする差別禁止」)し、障害のある人も、障害のない人も社会の一員として同様に、家庭や地域で普通に生活したり活動ができる社会を目指してきた。
 盲聾の重複障害をもつ福島智・東京大学助教授は、障害者福祉施策に「応益負担」を導入することについて疑問を投げかけている。障害者が生きるうえで、必要最低限な身体動作、移動、コミュニケーションなどを得ることが、「益」なのか?、これらは「基本的な自由」ではないか、と厚生労働省社会保障審議会障害者部会で同委員として発言した。
 障害者の日常生活に欠かせない支援について応益負担を求め、障害者のコミュニケーションや行動の自由に欠かせない移動介護を保障しない同法案は、ノーマライゼーションの実現に逆行する。拙速な審議は行うべきではなく、再考が必要である。

(以上)