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2004年12月24日
社会民主党

「今後の障害者保健福祉施策について(改革のグランドデザイン案)」
(厚生労働省障害保健福祉部04年10月12日)に関する社民党の意見

 「今後の障害者保健福祉施策について(改革のグランドデザイン案)」(以下、グランドデザイン案と略す)は、今後の障害保健福祉施策の基本的な視点として、これまで身体・知的・精神等と障害種別ごとに対応してきた障害者施策を、『市町村を中心に、年齢、障害種別、疾病を超えた一元的な体制を整備』し『地域福祉を実現』することを冒頭に掲げている。また、障害者施策に関する財政を国・都道府県に義務化とすることも明記している。

 社民党は、福祉制度の谷間をなくすこと、障害がある人も障害がない人も同じように地域で生きること、国・自治体の公的責任を明確化することを目指している。その立場からグランドデザイン案の趣旨・理念については賛成する。

 しかし、今回のグランドデザイン案の提出はあまりにも唐突であり、その背景には、ひっ迫した財源問題が大きく横たわっている。一つは03年に導入された「障害者支援費制度」の大幅な財源不足であり、二つ目は給付の膨張への対応が迫られている「介護保険制度」の見直し(「被保険者範囲の拡大」と障害者福祉との統合)である。この問題は両制度の維持にかかわる重要な課題であるが、財源問題から障害者の生活に大きく関わる法制度を組み立てるべきではない。

 今回出された案を「改革のグランドデザイン」と大きく銘打つからには、拙速な議論は避け、当事者との充分な議論、将来展望、国際的なノーマライゼーションの潮流を充分考えて推進するべきである。財源論を先行させ、求めるべき方向、理念を見失ってはならない。

 また、グランドデザイン案が提起する「障害福祉サービス法」(仮称)は、障害者運動の成果が実って実現した「障害者支援費制度」(当事者の選択と契約)との間に、考え方が矛盾する点が多い。ノーマライゼーションの実現に逆行する点も危惧される。

 社民党は、将来的に、介護保険制度、障害者支援費制度を含め、年齢や原因、障害の種類を問わず、個々の介護の要請、生活状況に対応する総合的な介護サービス法が必要であると考える。同時に、障害者差別禁止法の策定も急ぐべきであると考える。

 以下、改革のグランドデザイン案の問題点について列挙する。

○応能負担から応益負担への転換

  • グランドデザイン案は、障害者の負担について、個人の経済力に見合った「応能負担」から、受けたサービス量に応じた負担を課す「応益負担」へ転換することを提起している。つまり障害が重いほど負担が大きくなる。しかし、障害の重さは本人の責任ではない。ましてや本人の意思、希望ではない。だれもが抱える障害というリスクを、ありのまま受け入れ、それを社会全体で支えていこうというのがノーマライゼーションを実現する基本であり、福祉施策の原則である。応益負担の導入は安易に考えるべきではない。

  • 応益負担は、障害者の所得保障、就労の問題と並行して考えるべきである。

  • グランドデザイン案は、施設入所者について、在宅とのバランスから食費や医療費の自己負担導入を示している。現在、入所している障害者の収入は大半が障害者年金のみであり、その中から食費、医療費を差し引くことは入所者の生活は窮地に陥れることになる。

  • 家族などの虐待により施設入所による保護を必要とする障害者が自己負担の導入によっ て入所できないケースも出てくる。

○同一世帯収入に基づいて低所得者の負担上限額を設定することについて

  • グランドデザイン案は、「扶養義務者負担を廃止する」としつつ、一方で、低所得者の負担上限額の設定を同一世帯収入に基づくことにしている。世帯収入により、親、きょうだい等、家族へ経済的な負担を課すことは、「介護の社会化」への逆行となる。

  • 同一世帯への負担増が、より弱い立場に置かれている障害者へ虐待等のかたちで、しわ寄せされることが懸念される。

○審査会の設置による支給決定について

  • 公平な支給を決定するためには、何らかの審査が必要である。障害者個々の介護の要請、生活状況を総合的に捉え、適切な判断を行うとともに、審査の透明性が求められる。

  • 審査会のなかには当事者代表を入れることを検討する。

  • 審査会が導入された場合、医師など医療従事者が入ることが予想される。医療と介護の連携を深めつつも、障害者施策は生活モデル、福祉モデルを中心に組み立てていくべきである。

○障害者の社会参加について

  • グランドデザイン案は、移動介護を個別給付から外し、地域生活支援事業に組み込んでいる。しかし、障害者が社会参加を果たすうえで移動介護は不可欠であり、支援を制限する方向に変換してはならない。通学、通勤も保障すべきである。

○地域間格差について

  • 義務的経費から、はみだしたサービスを市町村へ押し付けることは、自治体間の格差をさらに拡大することになる。自治体で始まっている「脱施設」の動きにブレーキがかけられることを懸念する。

  • 国は責任を明確にするためにナショナルミニマムを明らかにすべきである。

(以上)


〔支援費制度〕
 03年度に導入。措置制度を改め、障害者が自ら必要なサービスの支給を申請して事業者を選択し契約する仕組み。サービスの内容が選べるようになり知的障害者・障害児のサービスが急増した。費用は全額税金、国1/2、都道府県と市町村が1/4ずつ。